コロナ禍が続く中国で10日間にわたった「世界卓球2022成都(団体戦)」<9月30日~10月9日>が幕を閉じた。

母国開催で国の威信を懸けた中国が男女共に金メダル。男子は脅威の大会10連覇を成し遂げ、女子も5連覇で国民の期待に応えた。

一方、日本は10月8日、男子が中国との準決勝に敗れ銅メダル。前回大会の世界卓球2018スウェーデンで6大会ぶりに途絶えたメダルを取り戻し、今大会に掲げた最大の目標をクリアした。

女子も同日、中国との決勝を迎えたが、ツインエースの一角である早田ひな(日本生命)が利き腕を痛め戦線離脱。

もう一人のエース伊藤美誠(スターツ)と"Wみゆう"こと木原美悠(JOCエリートアカデミー/星槎)、長﨑美柚(木下グループ)という布陣で挑み中国超えならずも4大会連続の銀メダルを手にした。

 そのほか、男子銀メダルはドイツ。世界卓球は3位決定戦がないため、銅メダルはもう1チーム、韓国。女子は台湾とドイツがそれぞれ銅メダルを獲得している。

エース張本を中心に団結した男子日本

 決勝に進んだのがドイツではなく日本だったらーーー。

そう思いながら、大会最終日の中国対ドイツを見守った方は多かっただろう。それほど今大会の男子日本は鮮烈なインパクトを残した。

 大会直前、インフルエンザに罹ったベテランの丹羽孝希(スヴェンソンホールディングス)を欠き、張本智和(IMG)、戸上隼輔(明治大学)、及川瑞基(木下グループ)、横谷晟(愛知工業大学)の4人で本番に臨んだ男子日本代表チーム。

平均年齢19歳。張本以外の3人が世界卓球団体戦初出場という若いメンバーだったが、それがかえって団結力を生みグループリーグ1位通過にも繋がった。

決勝トーナメントでは世界王者・中国と、できれば決勝で当たりたかった。しかし、組み合わせ抽選で中国と同じ山に入り準決勝で激突。

エース張本が2番で同世代の王楚欽を3-1で破り、4番では世界ランク1位の樊振東とのエース対決にフルゲームで勝つ快進撃を飛ばし中国を追い詰めた。

だが1番の戸上が樊振東に、3番の及川もリオ2016、東京2020オリンピック金メダルの馬龍に、そして運命の5番を託された戸上が王楚欽に敗れ、勝負の軍配はマッチカウント3-2で中国に上がった。

 中国を相手に2点を挙げた張本は過去最高の出来だった。張本自身も樊振東との一戦を自身のベストゲームに挙げており、数字もそれを証明している。

選手の個人成績で11勝1敗の張本はダントツの1位。唯一の1敗はグループリーグ第2戦でO.イオネスク(ルーマニア)に1-3で敗れた1試合だけだった。

2位は8勝3敗の黃鎮廷(香港)、3位は8勝4敗のチウ・ダン(ドイツ)、そして4位の馬龍は負けなしだが7勝0敗にとどまり、張本がいかに強かったかが一目瞭然である。

 もし世界卓球にMVP表彰があったなら、おそらく張本が選出されていただろう。

 これまで調子に波のあった張本が安定した成績を残せた秘密。その最たるはフォアハンドにある。

得意のバックハンドに比べるとフォアハンドの威力が落ちる張本は、ラリーでフォア側を突かれたときの対応に課題があり、長年改善に取り組んできた。

今回の世界卓球ではその成果が表れた。

例えば、樊振東との大一番。相手も得意なバック対バックの打ち合いから、樊が先に張本のフォア側に回してきたボールを張本は相手の打ちにくいミドルへしっかりカウンター気味に返球した。

以前ならブロックするのが精一杯というボールである。これには樊も一瞬、動揺を隠せなかった。

 フォアの動きが良くなったことについて張本は「ウェイトトレーニングで下半身を集中的に鍛えたことも大きい」と話す。

 世界卓球2022成都を終えた日本代表団はシンガポールを経て11日に帰国。

張本は19日開幕のWTTチャンピオンズ・マカオ(~23日)と27日開幕のWTTカップファイナル新郷(~30日)に出場するため中国に残った。


(文=高樹ミナ)