FIA世界ラリー選手権(WRC)第11戦「ラリー・ニュージーランド」は2日、最終日デイ4がオークランドのサービスパークを起点に行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハル…

FIA世界ラリー選手権(WRC)第11戦「ラリー・ニュージーランド」は2日、最終日デイ4がオークランドのサービスパークを起点に行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのカッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組 (GR YARIS Rally1 HYBRID 69号車)が優勝。1日に22歳になったばかりのロバンペラが、WRC史上最年少記録でドライバーズタイトルを獲得した。また、総合2位にはセバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス組(1号車)が入り、GR YARIS Rally1 HYBRIDは1-2フィニッシュを達成した。

◆ラリー・ジャパン日本初開催、日常に轟き降りた非日常の衝撃的走り

■2戦を残してドライバーズタイトル決定

◆トヨタでドライバーズタイトルを獲得したドライバーたち

ラリー・ニュージーランドの最終日デイ4は、サービスパークの南東エリアで2本のステージを各2回走行。その合計距離は31.18km。最終日も断続的に弱い雨が降り、路面は全体的に湿った状態だった。

デイ3で首位に立ち、総合2位のオジエに29秒、総合3位のオィット・タナックに46.4秒のタイム差を築いたロバンペラは、オープニングのSS14でベストタイムを記録。続く2本のステージではセカンドベストタイムを刻み、2位オジエに対するリードを32秒に、ドライバーズタイトルを争う3位オィット・タナックに対するリードを46.1秒とした。

そして迎えた、ボーナスポイントがかかる最終のパワーステージでは、4番手タイムで2ポイントのボーナスを獲得できれば良い状況だったが、ロバンペラはベストタイムを記録。今シーズン6度目の勝利をもぎ取るとともに、ボーナスの5ポイントも獲得した結果、ドライバー選手権ポイントは237となり、選手権2位のタナックが今回総合3位でフィニッシュしたため、2戦を残してドライバーズタイトルが決まった。

■トヨタはマニュファクチャラー・タイトルに挑む

約3カ月ぶりにWRCに復帰したオジエは、ブランクを感じさせないスピードで上位争いを続け、総合2位フィニッシュによりロバンペラのライバルが獲得可能なポイントを奪取。チームメートの初タイトル獲得をサポートした。また、チームはロバンペラとオジエが獲得したポイントにより、マニュファクチャラー選手権におけるリードを81ポイントとし、早ければ、次戦「ラリー・スペイン」でタイトルが決まる。

なお、これまでWRCの最年少チャンピオン獲得記録は、故コリン・マクレーが1995年に樹立した27歳と109日。WRC最高峰カテゴリー参戦3年目のロバンペラは、その記録を5歳以上も縮めた。ハイブリッドシステムを搭載するRally1導入初年度の今年、ロバンペラは第2戦スウェーデンで優勝してドライバーズ選手権トップに立ち、第3戦クロアチア、第4戦ポルトガルと3連勝。さらに、第6戦サファリ(ケニア)と第7戦エストニアでも優勝し、選手権をリードし続けた。そして今回のニュージーランドでの勝利により、シーズンの勝利回数は6回。2戦を残してタイトルを決めた。

ドライバーズ・タイトル獲得を喜ぶトヨタ・ガズー・レーシングの面々 (C) Toyota Gazoo Racing WRT

トヨタのドライバーのタイトル獲得はこれで4年連続、通算8回目となり、ロバンペラはカルロス・サインツ Sr.(現F1ドライバー、サインツJr.の父)、ユハ・カンクネン、ディディエ・オリオール、タナック、オジエといったグレートドライバーの仲間入りを果たした。フィンランド人ドライバーが最後にタイトルを獲得したのは2002年のマーカス・グロンホルム。フィンランド人ドライバーが20年ぶりにWRCの頂点に立ったことになる。

■「チャンピオンは唯一の目標」とロバンペラ

ロバンペラは「今、大きな安堵感に浸っています。今年はとても良いシーズンを送っていたのですが、何戦か困難なラリーが続き、ようやくタイトルを獲得することができました。速くて信頼性の高いクルマを作ってくれたチームのみんなに感謝します。お陰で、純粋に運転を楽しむことができています。また、彼らは苦しい状況でも、いつも僕らを信じて支えてくれました。年齢のことはあまり考えていなかったですが、それでもこのような結果を残せたのは特別なことです。チャンピオンになることは、自分にとって唯一の目標だったので本当に嬉しいです。実は、金曜日は今日よりも少しナーバスになっていて、戦うためにはハードに攻めなくてはなりませんでしたが、今日は、純粋に楽しんで走ることができました」と喜びと語った。

また、オジエは「今日、我々は歴史の目撃者になりました。カッレ、ヨンネ、そしてチームのみんなにとって素晴らしいことです。カッレの今シーズンの戦いは本当に素晴らしく、タイトル獲得は時間の問題でした。彼はこの週末堂々と戦いましたが、それこそが偉大なチャンピオンの証だと思います。私自身も、この週末は満足感を得られるものでした。今季出場した他のイベントよりもハイスピードで、トリッキーなコンディションの難しいラリーだったので、3カ月ぶりにWRCに復帰したことを考えれば上出来です。今シーズン何度か見られたことですが、このような難しいコンディションで、カッレは手のつけられない存在でした。私はチームを助けるために出場していますし、マニュファクチャラー選手権の獲得まであと一歩なので、クレイジーなリスクを冒すべき時ではないと認識して今回のラリーを戦いました」とレジェンドとして、新チャンピオンを祝福した。

次回は20日から23日にかけて、スペインのバルセロナの南側に位置するサロウを中心に開催される「ラリー・スペイン」。そして最終戦は11月10日に開幕する「ラリー・ジャパン」。新型コロナウイルスによる延期もあり、WRCが12年ぶりに日本に帰って来る。トヨタとロバンペラの凱旋レースに期待が寄せられる。

■ラリー・ニュージーランドの結果

1 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) 2h48m01.4s 2 セバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +34.6s 3 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +48.5s 4 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +1m58.8s 5 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +3m55.3s 6 ヘイデン・パッドン/ジョン・ケナード (ヒョンデ i20N Rally2) +10m03.7s 7 ロレンツォ・ベルテリ/ロレンツォ・グラナリ (フォード Puma Rally1 HYBRID) +10m39.0s 8 カイエタン・カイエタノビッチ/マチェイ・シュチェパニャク (シュコダ Fabia Rally2 evo) +12m36.8s 9 シェーン・ヴァン・ギスバーゲン/グレン・ウエストン (シュコダ Fabia Rally2) +13m28.8s 10 ハリー・ベーツ/ジョン・マッカーシー (シュコダ Fabia Rally2 evo) +16m51.6s R エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID)

◆第10戦 ヒョンデが1-2-3フィニッシュ トヨタ勢は勝田貴元6位が最上位 母国ラリー・ジャパンに向け黄信号

◆第9戦 トヨタ、ロバンペラ王者決定にヒョンデのタナックが「待った」の連勝

文●SPREAD編集部

■トヨタでドライバーズタイトルを獲得したドライバーたち

2015年10月、アメリカ・オースティンで写真に収まる「親子鷹」 左から現在フェラーリを駆るカルロス・サインツ Jr.、トヨタでWRC王者となったサインツ Sr.、アロウズなどで活躍したヨス・フェルスタッペン、マックス (C) Getty Images

1990年: カルロス・サインツ Sr. (セリカ GT-Four ST165) 1992年: カルロス・サインツ Sr. (セリカ Turbo 4WD ST185) 1993年: ユハ・カンクネン (セリカ Turbo 4WD ST185) 1994年: ディディエ・オリオール (セリカ Turbo 4WD ST185) 2019年: オィット・タナック (ヤリスWRC) 2020年: セバスチャン・オジエ (ヤリスWRC) 2021年: セバスチャン・オジエ (ヤリスWRC) 2022年: カッレ・ロバンペラ* (GR YARIS Rally1 HYBRID) *FIAによる正式な結果発表による。