進化を徹底的に分析「なぜ、張本智和は狂ったかのような試合ができるのか」 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)は8日、中国・成都で男子準決勝が行われ、世界ランク3位の日本は同1位の中国に2-3で敗れて銅メダルとなった。19歳エ…

進化を徹底的に分析「なぜ、張本智和は狂ったかのような試合ができるのか」

 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)は8日、中国・成都で男子準決勝が行われ、世界ランク3位の日本は同1位の中国に2-3で敗れて銅メダルとなった。19歳エースの張本智和が世界ランク1位の樊振東、同11位の王楚欽を連続で撃破し、2勝を挙げる大活躍。勝ったものの、王者・中国にも衝撃が走った様子だ。ある中国メディアは15歳当時と比較し、進化を徹底的に分析している。

 中国紙「紅星新聞」は評論と題して「なぜ、張本智和は『狂ったかのような試合』ができるのか」との記事を掲載した。

「日本チームが1試合に勝利してもそれは通常の範囲内のことだと思っていたが、中国チームが3対2で日本チームに勝利したとは言え、試合を通して風を呼び起こしていたのが中国選手ではなく、狂ったように打ちまくる日本の若手、張本であったことは実に思いがけないことだった」

 このように試合を総評した記事では、世界ランク1位の樊が張本に敗れたことを特筆。「世界ランキングで他を大きく引き離し、安定して1位に立つ樊振東はすでに何年も外国選手に敗れたことはなかった。今日、彼はその輝かしい地位、輝かしいイメージを張本に打ち破られたのだ」と衝撃を伝えた。

 卓球を長く取材しているという筆者は張本が15歳だった当時、技術の特徴とともに中国選手との対戦における長所と欠点を分析していたという。

「中国選手は近年、回転力に力を入れ、何人かの選手は回転の点で世界のトップを行く。スピードと落下点は軽視されたことがあったのが当時の基本的視点だったが、当時わずか15歳で、反応が速く、体も軽やかだった張本は、そのスピードと落下点で中国チームに脅威を与えていた。ただ、当時は中国チームの選手と対戦する際、くさびを中国チームに打ち込む感じで、全体的な実力の厚み、力や回転といった多くの点でまだ中国チームの選手と比べることはできなかった」

 このように触れながら「瞬く間に数年が過ぎ、張本は19歳になり、きゃしゃな少年から立派な体を持つ青年に成長していた」と変化を指摘した。

「これまで張本は起伏が激しく、前回の世界卓球や前回の五輪、またWTTの大きな試合でも、負けるべきでないところで何度も負け、名もない選手にも負けてきた。何かボトルネックとなるような問題に遭遇しているようだった」と不安定さを指摘したが、大きな変化は今年にあった分析する。

「ところが2022年、張本は突然大きな飛躍を見せた」――。

「まず、先のWTTブタペストの決勝戦では、5対10で林高遠に負けていたゲームを6点取って挽回し、勝って優勝するという奇跡を起こした。そして10月8日成都。彼は世界卓球団体戦で再び、2人の中国のトップレベルの選手を立て続けに破った」

4年間で進化していた5つのポイント「我々はこれから10年、張本と…」

 その上で「まとめてみると、4年後の張本智和は次のいくつかの点で長足の進歩を遂げていた」とし、5つのポイントを挙げた。

<1>全体的に技術にはるかに厚みが出て確実になった

<2>フォアハンドに顕著な進歩があった

<3>サーブとサーブレシーブの技術が上がった

<4>台から中距離、遠距離に立った場合の技術的な欠点が補われた

<5>試合型選手の精神的資質

 特に<5>について「張本は比較的典型的な試合型選手である。容易に精神を奮い立たせることができ、追い風の中では想像を超えるような神がかった球が打てる」「現在では、逆境にあるときのプレッシャーにあらがう力にも定評がある。以前、林高遠との対戦で、絶体絶命に陥りながら復活したことなど、実に感服に値する」などと評した。そして、今回の樊との試合に重ね、賛辞を送った。

「男子準決勝で、大きな山のように、越えがたかっただろう世界1位の樊振東を前にしても、張本は懸命にこらえ、第5ゲームまでこぎつけて、踏ん張って最後に勝利をつかんだ。それには、極めて強い精神的要素と精神的力が必要だ。この山を越えた彼には、どんな山も小さく見えるだろう。なんといっても、これまで相当に長い間、この地球上で樊振東を破ることができるのは馬龍だけだったのだから」

 さらに、今回も日本と戦った馬龍が4年前に「張本は中国選手にとって、今後10年間相手にすることになる強力な相手だ」と話していたことを紹介。「成都世界卓球団体戦の男子団体準決勝のこの試合を見ると、馬龍の言葉にはまったく誤りはなかったようだ」と改めて評した。

「4、5年前の中国チームとの対戦で、張本が中国チームに打ち込まれる鋭いくさびのようだったとすれば、今日の張本と中国チームとの対戦は、全方位からの実力の激しい競り合いだったということができるだろう。そして、忘れてはならないのは、張本は今の世界卓球において、最も情熱的な選手だということだ。情熱的な選手の一人ではない。最も情熱的な選手だ」

 そして、記事は、このように締めくくられている。

「我々はこれから10年、その張本と力比べをして行くことになる」(THE ANSWER編集部)