世界卓球団体戦・女子決勝 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)は8日、中国・成都で女子決勝が行われ、51年ぶりの優勝を狙った世界ランク2位の日本は4大会連続の銀メダルとなった。同1位・中国に0-3で敗戦。シングルス世界ランク…

世界卓球団体戦・女子決勝

 世界卓球団体戦(テレビ東京系&BSテレ東で連日放送)は8日、中国・成都で女子決勝が行われ、51年ぶりの優勝を狙った世界ランク2位の日本は4大会連続の銀メダルとなった。同1位・中国に0-3で敗戦。シングルス世界ランク6位のエース・伊藤美誠(スターツ)も第2試合で敗れた。世界トップ3を揃えた女王の超高精度の技術に「ボール半個分」の差を痛感。悲願の世界一へ収穫を得る大会となった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

 重い腰を上げるのに時間を要した。2敗で迎えた第3試合。20歳の世界ランク43位・長崎美柚が同1位・孫頴莎に0-3で敗れた。完全アウェーのスタンドは母国の5連覇に大歓声。直近3大会は全て決勝で中国に敗戦。しばらくベンチに座っていた伊藤はゆっくりと立ち上がり、戻ってきた長崎を迎え入れた。

「決勝は悔しいけど、いろんなことができた。負けたけど得たものが多くて、次が楽しみだなって思える試合ができた。あと一歩。やっていると、少しずつずらされているのがわかる。中国選手の上手さを感じました。少しずらされた時の対応、一本を獲る時の大事さ、思い切りの良さを高めていけるとチャンスがあると思った」

 世界ランク3位の王曼昱からレシーブエースで先制攻撃。出だしから3連続得点を奪った。しかし、9-11で第1Gは先取された。第2Gは11-9と取り返す。第3Gは10-9のゲームポイントを握りながら10-12。「あそこを取れていれば……」。ゲーム内でリードを奪いながら、勝負所で持っていかれる展開が続き、第4Gは4-11と大差をつけられて終戦した。

「1ゲーム目もそうだし、3ゲーム目も王曼昱選手の最後の工夫の仕方が上手い。咄嗟の1本にしっかり対応できていればなって凄く感じた」

 肉眼ではほんのわずかだが、確かな技術の差を目の当たりにした。「少しずつずらされる」とは何なのか。試合後に明かした。

「ちょっと威力を上げてくるとか、ちょっとボールの高さを変えてくるとか。緩急もです。相手は試合の中で全てにおいて少しずつ変えてきていました。それが凄く上手いなって。その微妙な違いを9対9の時、デュースの時、1点を取りたい時にやってくる」

スコアほどの差はない「私は凄く相手を見ることができていた」

 強打や派手なプレーの中に隠れた変幻自在の技。あくまで伊藤の感覚的なものだが、「ボール半個かボール1個分の差」で軌道を変えてこられたという。1個は直径40ミリ。半個分ならたった2センチ分の高さを絶妙に上下させながら、返球困難な攻撃を高速ラリーの中で仕掛けられた。しかも、重圧のかかる場面で。女王との差だった。

 しかし、伊藤にとっては収穫だった。これまではこの微細な差まで感じられることが少なかった。「今日、私は凄く相手を見ることができていたので、自分の目で違いがわかった。距離、高さが見えていた。自分の動きも最高に良かった」。あとはその技術にどう対応するか、逆にその達人技を自分が繰り出せるようになる必要がある。

 マッチカウント0-3、ゲームカウント1-3の敗戦でも、スコアほどの歴然とした差はない。乗り越えられないとは思わなかった。さらなる成長の糸口を見つけ、嬉しそうに声を弾ませた。

「(大会を通じて)最後の試合が一番楽しかったです。予選まで難しい試合が続いたけど、少しずつ良くなることを目標にして良くなってきた。最後の決勝が超良かったし、楽しかったです。自分が良くなったと凄く感じられた。次がもっともっと楽しみになりました。これを生かしてさらに成長して次も戦いたいです」

 まだ21歳。少しずつ、でも着実に。世界の頂きへよじ登っていく。(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)