ストレート勝ちして、3回戦へコマを進めた錦織圭 錦織圭の完璧な試合運びと言えるはずだった。あの場面を迎えるまでは……。 ローランギャロス(全仏オープン)2回戦で、第8シードの錦織圭(ATPランキング9位、5月29…



ストレート勝ちして、3回戦へコマを進めた錦織圭 錦織圭の完璧な試合運びと言えるはずだった。あの場面を迎えるまでは……。

 ローランギャロス(全仏オープン)2回戦で、第8シードの錦織圭(ATPランキング9位、5月29日付、以下同)は、ジェレミー・シャルディ(73位、フランス)を、6-3、6-0、7-6(5)で破り、3年連続で3回戦に進出した。

 27歳の錦織と30歳のシャルディは、ジュニア時代から対戦がある旧知の仲。プロになってからの対戦成績は錦織の5勝2敗だが、クレーコートに限れば、シャルディの2勝1敗だ。

 試合はお互いのサービスブレークで始まったものの、錦織が第1セット第7ゲームから第3セット第3ゲームまで、シャルディのサービスゲームを6回連続でブレークすることに成功し、12ゲーム連取をしてシャルディを圧倒した。

 錦織は右手首の不安を払拭するようなグラウンドストロークの冴えを見せ、しかもミスを第1セットと第2セットとも、わずか4本ずつに抑えた。シャルディは錦織にストロークで先手を取られ、大半のポイントで主導権を握られた。

「圭が今日の自分よりよかっただけ。彼は本当にいいプレーをしたし、自分にとっては難しい状況だった。圭はミスをしなかったし、僕は次々とゲームを失った。どうプレーしたらいいかわらなかったし、しばらく解決策を見い出せなかった」

 シャルディはほとんどお手上げ状態で、2セットを連取した錦織が第3セットも2度のサービスブレークに成功して3-0とした。

 ところが、その直後に、錦織がメディカルタイムをとって、右肩のマッサージを受ける。これをきっかけに錦織のプレーのクオリティーが少し落ち始めた。

「自分がちょっと打たなくなったのもありましたし、ファーストサーブが入らなくてセカンドを攻められて、(シャルディに)先にプレーされる場面が増えた。それが原因だったと思います。彼もプレッシャーなく、少し戦術を変えてどんどん打ってきたので、自分の球がちょっと浅くなってしまった」

 一方、シャルディは息を吹き返すことができた理由を次のように語った。

「圭がフィジオ(療法士)を呼んでくれたのは、僕にとって都合がよかった。その3分間で落ち着けて、ゼロからスタートした。圭は逆に少しリズムを失ったね。簡単に負けたくなかったので、とにかくファイトしたよ」

 シャルディは本来の強力なファーストサーブが復活し、一番の武器である回り込んでのフォアハンドストロークを逆クロスへ打ち込んだ。後手に回った錦織は2度のブレークを許し6-6とされたが、なんとかタイブレークを取ってシャルディの反撃を振り切った。

「最後、タイブレークを取られてもおかしくなかったので、3セットで終われてホッとはしました」と振り返った錦織は、右肩の治療を受けたことで「自分のリズムを崩して、相手を蘇らせてしまった。あんまりいい選択ではなかったですけど……」と反省する。右肩の痛みは1回戦の前からあったようで、大会前から不安視されていた右手首と関連があるのかどうかはわからない。正直なところ、今回は中堅プレーヤーでメンタルに波のあるシャルディだから、反撃を断ち切れた感は否めない。

 これから全仏で上位進出を狙い、トップ10プレーヤーの地位を保っていくためには、いくら才能のある錦織といえども、手負いの状態では難しく、今後の戦い方に不安を残した。

 3回戦で、錦織はチョン・ヒョン(67位)と初対戦する。韓国テニス界期待の21歳で、ATPの”Next Gen”のひとりでもある。身長185cmから繰り出されるサーブとバックハンドストロークが強力だ。

 チョンは13歳から15歳の時に、錦織と同じIMGアカデミーで練習していたことがあり、西岡良仁(70位)とは寮で同室だった。西岡によれば、英語がまったくできなかったが、テニスの才能は当時からあったという。

 2015年シーズンに自己最高の51位を記録したチョンだったが、昨シーズンは146位までランキングを落とした。今季はこれまで結果の出なかったクレーシーズンで好成績を収め、バルセロナ大会ではベスト8、ミュンヘン大会ではベスト4まで進出して再浮上している。

 今回の全仏では1回戦で第27シードのサム・クエリー(28位、アメリカ)を4セットで倒してシードダウンを演じ、グランドスラムで初めて3回戦に進出して、錦織への挑戦権を獲得した。

「対戦したことがないし、練習したこともありません。でも、一度対戦してみたかったんです。(錦織との)試合では、ずっと集中しなければいけませんね。圭は、アジアナンバー1選手で、トップ10選手です。もちろん自分が少しナーバスになるかもしれませんけど、ちょっと楽しみだし、ちょっとワクワクしています」(チョン)

 バルセロナ大会準々決勝で、チョンを破ったラファエル・ナダル(4位、スペイン)は「かなりの潜在能力がある。よいバックハンドを打つし、動きもいい。トッププレーヤーになるための素養をもっている」と称えた。かつてナダルは、18歳の錦織と初対戦した時に、「錦織は将来トップ5に入る」と予想して実現しているだけに、今回のチョンへの評価も真実味がある。

「この数年の彼の活躍はしっかり見ていますし、ストロークがすごくしっかりしている選手で、特にバックはダウンザラインもクロスもしっかり打てる。より長いラリーになると思います」

 このように相手の印象を語った錦織。右肩の回復具合が気になるところだが、新しい世代のチョンによる挑戦をどう受け止めるだろうか。

 パリで初めて実現する”日韓戦”は、実に興味深いものになりそうだ。