3年ぶりの日本GP開催まで、あと1週間。 F1サーカスはその前に、シンガポールへとやって来た。こちらも鈴鹿と同様に2019年以来3年ぶりの開催で、地元のみならずアジア大洋州全域から大勢のファンが詰めかけ、地元のタクシードライバーも「人の数…

 3年ぶりの日本GP開催まで、あと1週間。

 F1サーカスはその前に、シンガポールへとやって来た。こちらも鈴鹿と同様に2019年以来3年ぶりの開催で、地元のみならずアジア大洋州全域から大勢のファンが詰めかけ、地元のタクシードライバーも「人の数も渋滞の度合いも3年前とは比べものにならない!」とうれしい悲鳴を上げている。

 そんなシンガポールGPは、角田裕毅にとって大きなターニングポイントになるかもしれない。いや、そうしなければならない。

 ここで本来のリズムを取り戻し、日本GPと残りの5戦に向けて弾みをつけたい。そのためにも、第6戦スペインGP以降一度もできていないポイント獲得を果たしたいところだ。



レッドブルとの契約延長がようやく決まった角田裕毅

 その前に、うれしい知らせもあった。レッドブルが角田との契約を延長し、2023年も引き続きアルファタウリからF1に参戦することが決まった。

 6月のアゼルバイジャンGPの頃から話し合いをしており、モータースポーツアドバイザーのヘルムート・マルコをはじめとするレッドブルが、今シーズンの角田の成長をリザルトではなく中身できちんと評価しているからこそ、契約延長は既定路線だった。

 マルコは「夏休み中には正式に決めてベルギーGP前には発表してしまいたい」と語っていたが、その遅れの理由も角田にはマルコ自ら説明していた。

「去年よりも(契約延長の)自信はありましたし、サプライズではありませんでしたね。アゼルバイジャンGPの時から交渉はしてきていましたし、かなり時間はかかりましたけど、それは僕にどうこうできることではなかったので、そちらに気を取られるよりも自分がコントロールできる目の前のレースとドライビングのほうに集中していました」

 コルトン・ハータ(アメリカ/22歳)やニック・デ・フリース(オランダ/27歳)など、アルファタウリのシートと関連づけてさまざまなドライバーの名前が挙がっていた。だが、それは角田に代えてということではなく、フェルナンド・アロンソが離脱しオスカー・ピアストリ(オーストラリア/21歳)が拒絶したアルピーヌの空席にピエール・ガスリーが移籍するかもしれないからだ。

 その点も、マルコからきちんと説明を受けていたようだ。

10時間寝たのも久しぶり

 契約延長に関して、角田は心配していなかったと言う。ただ、それでも来季のことが正式に決まらない間は完全に本来の集中力を発揮することは難しく、その影響も少なからずあったと明かした。

「今まではレースの外でストレスがありすぎてレース週末に疲れてしまって、レースエンジニアと話すのにもあまり集中できない時もありました。でも今はすごくリラックスできていますし、10時間くらい寝たのも久しぶりですね(笑)。これで残り6戦と来年に向けて、今までよりもリラックスして気持ちよくレースができるようになると思います」

 シンガポールは高温多湿で、決勝が行なわれる午後8時でもジメジメとした暑さが続く。

 さらにマリーナベイ市街地サーキットは狭く曲がりくねった23のコーナーが連続するレイアウトで、ドライバーは常に壁を意識しながらステアリングと格闘しなければならない。息を抜くストレートもなく、肉体的にも精神的にも最もタフなレースになる。

 角田もイタリアで暑さ対策を含めたトレーニングを行ない、月曜日と早めに現地入りしてこのシンガポールGPの週末に備えている。

「サウナに入ったり、ジャケットを着たり帽子を被ったりしてインドアサイクリングのトレーニングをしたり、基本的には暑さ対策のトレーニングをしてきました。今のところ暑さはそんなに気になっていませんし、シンガポールを満喫しています」

 マリーナベイ市街地サーキットは90度コーナーが多く、最終コーナー以外は3速か4速の中低速コーナーしかない。これはアルファタウリが中団トップに立つ活躍を見せたアゼルバイジャンと似た傾向だ。

 もちろん、シンガポールにはバクーのような超ロングストレートはなく、マキシマムダウンフォースの空力パッケージを使うという違いはある。だが、角田もバクーで発揮したようなパフォーマンスを期待している。

「マシンの速さ次第ですけど、もちろんポイント獲得を目指しています。それとQ3進出もですね。ここ数戦はいいパフォーマンスが発揮できていると思いますし、今週もどうかですね。ここは少しアゼルバイジャンに似たサーキット特性なので、バクーですごくいいパフォーマンスが発揮できたように、ここでもそれが維持できればと思っています」

勢いをつけて、いざ鈴鹿へ

 シーズン後半戦に入ってからもリザルトの上ではノーポイントが続いているが、3戦のうち2戦はグリッド降格ペナルティで最後尾からスタートしている。その2戦でガスリーがポイントを獲得しているだけに、アルファタウリと角田の実力不足でそうなったわけではない。そしてオランダGPではマシントラブルでリタイアを余儀なくされたが、予選ではQ3に進出していた。

 第12戦フランスGPで投入した新型フロアを使いこなせるようになり、マシンパフォーマンスは向上した。そしてこのシンガポールGPにはレッドブル風の新型ノーズとフロントウイングを持ち込み、大幅な空力性能へのテコ入れを行なっている。

 クリーンな週末を過ごし、Q3に進出し、ポイントを獲得すること。本来のリズムさえ取り戻すことができれば、それが当たり前のようにできるようになるはずだ。

 その勢いで鈴鹿へ。そのためにも、今週のシンガポールGPは角田裕毅にとって大切な週末になる。