フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコーと)は大会4日目、男女のシングルスは2回戦に入り、ダブルスも始まった。 日本勢は、ダニエル太郎(エイブル)が世界ランク21位のパブロ・カレーニョ ブスタ(ス…

 フランス・パリで開催されている「全仏オープン」(5月28日~6月11日/クレーコーと)は大会4日目、男女のシングルスは2回戦に入り、ダブルスも始まった。

 日本勢は、ダニエル太郎(エイブル)が世界ランク21位のパブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)に5-7 4-6 6-4 0-6で敗れ、奈良くるみ(安藤証券)も第10シードのビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)に3-6 1-6 で完敗。これでシングルスは男女を通して錦織圭(日清食品)を残すのみとなった。

 ダブルスでは、全豪オープン・ベスト4の穂積絵莉(橋本総業ホールディングス)/加藤未唯(佐川印刷)がエイジア・ ムハメッド/テイラー・タウンゼント(ともにアメリカ)を7-5 6-3で下し、加藤はタウンゼントに対してシングルスのリベンジを果たした。

 日比野菜緒(LuLuLun)は4月にモンテレイでダブルス・ツアー優勝を果たしたときのパートナーでもあるアリシア・ロソルスカ(ポーランド)と組み、エレナ・ヤンコビッチ(セルビア)/ココ・バンダウェイ(アメリカ)に0-6 7-6(3) 7-6(10)で逆転勝ち。奈良/尾﨑里紗(江崎グリコ)はヤナ・セペロバ(スロバキア)/シェイ・スーウェイ(台湾)に2-6 3-6で敗れた。◇     ◇     ◇

 ストレートで勝っていても、おかしくなかった-----。

 ダニエルは試合後にそう言っていたが、それが自己の過大評価でも楽観主義でもないことは、続く言葉に表れていた。

「でも予選ではマッチポイントも握られて、予選1回戦のファーストセットですでにヤバいなとも感じていた。そこで負けていてもおかしくなかった」

 勝敗を分ける微妙な差については、簡単に説明がつかないが、その差は確かにあることを思い知らされる試合だったかもしれない。

 2年連続の全仏オープン2回戦。先月エストリルでクレー初タイトルを獲得し、グランドスラムで過去最高の第20シードがついたカレーニョ ブスタは、今ノッている選手の一人といっていい。対戦成績はツアーレベルではダニエルの0勝1敗だが、フューチャーズやチャレンジャーも含めたトータルでは7戦全敗だった。

「彼に勝つためには、自分からいいプレーをどんどん出していかないといけない」

 ダニエルは覚悟をプレーに反映し、第1セットは先手の攻めを心がけて主導権を握った。深いショットで相手をベースライン後方に追い出し、左右に振って長い距離を走らせる。ダウン・ザ・ラインへのウィナーには決意がこもっていた。第3ゲームでブレークに成功し、優位に試合を進めていたが、第8ゲームのサービスゲームを40-0からブレークバックされ、結局5-7でセットを落とした。

「なんであそこのサービスゲームを取れなかったのか、よく覚えてない」

 覚えていないので悔やみようがなかったが、キーポイントだったことは間違いない。

 第2セットもシーソーゲームで進み、やはり終盤で堪えきれなかった。4-5のサービスゲームをブレークされ、これで2セットダウン。ラリーでは競っていながら大事なゲームをさらわれるのは、25歳の絶対的な自信に屈したからだろう。

「大事なところでギアを上げられる〈安心感〉が彼にはある。バラエティがあるなと感じました」

 第3セットは第3ゲームをブレークし、直後のゲームを7度のデュースの末にキープすると、ようやくリードを守りきってセットを奪い返した。望みはつないだが、第4セットはカレーニョ ブスタが一方的にゲームを重ね、ダニエルは1ゲームも奪えず力尽きた。

「上にいくためには、こういう試合をこれからまだまだ負けていかなきゃいけない」

 そんなことを言ったが、普通、選手はこう言うものだ。

「こういう試合に勝っていかなきゃいけない」

 ダニエルはちょっと違う。一歩ずつ一歩ずつ階段を上っていく自分流の戦い方に、たくさんの〈負け〉は付き物だと考えているのだ。近道はないと言いきったのが、とても印象的だった。(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)

※写真は「全仏オープン」2回戦で第20シードのパブロ・カレーニョ ブスタ(スペイン)に敗れたダニエル太郎(日本/エイブル)(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)

【ハイライト】ビーナス・ウイリアムズ vs 奈良 くるみ/ 2回戦

【ハイライト】パブロ・カレーニョ ブスタ vs ダニエル 太郎/ 2回戦

ダニエル太郎 2回戦終了後インタビュー