東京六大学秋季リーグ戦で、東大は17日、慶大に4-3で先勝。昨秋の立大戦以来、約1年ぶりに白星を挙げた。エースでプロ志望届提出済みの井澤駿介投手(4年)が先発し、6回を2失点の好投で通算2勝目。元中日投手(後に外野手転向)で78歳の井手峻…

 東京六大学秋季リーグ戦で、東大は17日、慶大に4-3で先勝。昨秋の立大戦以来、約1年ぶりに白星を挙げた。エースでプロ志望届提出済みの井澤駿介投手(4年)が先発し、6回を2失点の好投で通算2勝目。元中日投手(後に外野手転向)で78歳の井手峻監督は「井澤を先発で勝利投手にすることが私の夢だった。やっと叶いました」と感慨深げに語った。

 最大のピンチに、百戦錬磨の指揮官がマウンドに歩み寄った。3-2と1点リードして迎えた6回、井澤は2死一塁から1球もストライクが入らず、連続四球を許して満塁のピンチを招いた。打席にはプロ注目の2番・朝日晴人内野手(4年)が向かっていた。

「井手監督がマウンドに来られて、『任せる』と言っていただいたので、もう1段階気持ちが入りました」と明かす井澤。カウント2-1から朝日に得意のカットボールを打たせ、捕邪飛に仕留めて乗り越えた。

ピンチを乗り切った井澤投手【写真:伊藤賢汰】

 初回にも、3四球で1死満塁の窮地を招いたものの、犠飛による最少失点にとどめていた。その後の失点は、相手の4番・萩尾匡也外野手(4年)に右越えソロを浴びた5回の1点のみ。2点リードの状況で、7回から2番手の松岡由機投手(3年)にリレーし、初の先発勝利を手にした。相手の慶大・堀井哲也監督は「井澤君を打ち崩せなかったことが敗因。もともとカットボールは良かったが、春に比べてストレートの威力が強くなり、両方をマークしなければならなくなった」と成長に目を丸くした。

 一方、井手監督は2020年の就任当初から、当時2年生の井澤を見込んでエースとして重用してきた。チームは昨年春、法大に2-0で零封勝ちし、井澤も3番手として登板して2回無失点で一翼を担ったものの、勝利投手にはなれず。昨秋、立大に7-4で勝った際には、井澤は6回途中から救援し、3回2/3を無失点で初めて勝利投手となったが、井手監督には「あくまでエースが先発して勝つのが、チームの形ですから」というこだわりが残っていた。

戦況を見つめる井出監督【写真:伊藤賢汰】

 万感の白星を挙げた東大。今月8日、井手監督の背中を追うようにプロ志望届を提出した井澤は「僕にとっては(先発勝利は)夢ではなかった」と苦笑し、「大学に入ってから勝ち点を取ったことはまだないので、ぜひやってみたい」と1ランク上の目標を掲げた。東大が同一カードで2勝して勝ち点を取れば、法大を2戦2勝で撃破した2017年秋以来、5年ぶりとなる。

 井手監督は「もともと守りでなんとか、というチームでしたが、攻撃でも対抗できるようになり、普通の試合運びを狙っていけるようになりました。夏の間に結構バットを振り込み、オープン戦後半から当たりが出ていました」と確かな手応えを口にする。勝ち点を取る準備は整った。もちろん、井澤がいてこその戦略、戦術がであることは言うまでもない。

(Full-Count 宮脇広久)