生まれ育った京都の、昨年合格したプロテストの舞台でもあった験のいいコースで、初優勝にしてメジャータイトルを手にしたのが、川﨑春花だ。日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(京都・城陽CC)を、史上最年少となる19歳133日で制した。 渋野日向…

 生まれ育った京都の、昨年合格したプロテストの舞台でもあった験のいいコースで、初優勝にしてメジャータイトルを手にしたのが、川﨑春花だ。日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯(京都・城陽CC)を、史上最年少となる19歳133日で制した。

 渋野日向子ら黄金世代でもなければ、2000年に生まれた古江彩佳らミレニアム世代、あるいは2001年に生まれた笹生優花らの世代よりもさらに2歳若い、2003年生まれの新世代だ。あどけなさが残る――ではなく、まだまだあどけない少女の戴冠だった。

「ぜんぜん、信じられないです。(今、やりたいことは)ご飯が食べたい(笑)。母の料理。何でも美味しいけど、やっぱりお味噌汁ですね」



ルーキーイヤーで国内メジャーの日本女子プロ選手権を制した川﨑春花

 最終日は首位の山下美夢有と4打差の4位タイでスタートした。7番までは2度ほどチャンスにつけたが、いずれもカップに蹴られ、スコアに上下動はなかった。しかし、迎えた8番のパー4で、フェアウェーからPWで放った2打目が、ピンの右手前に落ち、そこから左に下って直接カップイン。このホールをイーグルとした。

「若干ダフってしまいました(笑)。グリーンが左に傾斜していたので、右に着弾させようと考えていました。今日はとにかく、最後まで諦めないと誓って、8番のティー(グラウンド)でそれを思い出して、そうしたらセカンドが入った。そこからずっと『最後まで諦めない』と思い続けてプレーしました」

「最後まで諦めるな」は、小学生の頃からスイング指導を受けていた恩師のLINEにあった助言だという。

 後半に入ると、12番から4連続バーディーを奪って最終組にいた山下のスコアを大まくりしたうえで、17番、18番と再び連続バーディーを決めて優勝を確実なものにした。

 後半9ホールは、わずか11パット。最終日に、彼女自身の生涯ベストである「64」をマークした。あまりに劇的な展開にして、信じられないビッグスコアに、本人が戸惑うのも無理はない。

「自分でもびっくりで。最近、パットの調子が上がってきていました。もともと得意だと思っていたんですが、今日は(プレーに臨むうえで)一番自信を持っていました」

 大阪学院大学高校のゴルフ部に在籍した昨年、プロテストに一発合格して、今季デビューした。だが、腰痛に苦しみ、レギュラーツアーは計10戦に出場して6度が予選落ち。トップ10の経験すらなかった。

「もともと中学生の頃から腰痛があった。プロになって、今年の7月ぐらいは今までで一番痛かった。ステップ・アップ・ツアーでも棄権したりして、ゴルフもメンタルも苦しかった。

 コンディショニングのジムに足を運んで、体作りをして、ケアもたくさんしてもらった。股関節や腰回りを、使える身体に変えてもらいました。スイングも腰に負担がかからないように、イメージ作りから変えました。家族やサポートしてくれる人が力になってくれて、今は痛くありません」

 8月末のステップ・アップ・ツアー、山陰ご縁むす美レディース(大山平原GC)で独走Vを飾った勢いそのままに、国内メジャータイトルを手にした。

 憧れは昨年の賞金女王にして、東京五輪の銀メダリストである稲見萌寧だ。

「以前、練習ラウンドを一緒に回ったり、試合でも回ったことがあるんですけど、ゴルフにストイックな姿勢がすごい。試合でミスしても、私だったらミスのまま終わるのに、ミスがミスにならず、そこからバーディーを獲ってくる。そういうところが本当の強さだと思います」

 日本女子ゴルフ界に誕生した新世代の女王である。百花繚乱の時代はまだまだ続いている。