楽天がパ・リーグの首位を快調に走り続けている。その原動力のひとつに挙げられるのが、入団2年目を迎えた茂木栄五郎と、来日2年目のカルロス・ペゲーロの”1・2番コンビ”だ。ふたりのここまで(5月29日現在)の数字を…

 楽天がパ・リーグの首位を快調に走り続けている。その原動力のひとつに挙げられるのが、入団2年目を迎えた茂木栄五郎と、来日2年目のカルロス・ペゲーロの”1・2番コンビ”だ。ふたりのここまで(5月29日現在)の数字を眺めれば、驚くばかりである。

茂木   打率.325/本塁打10/打点32/出塁率.410/長打率.577
ペゲーロ 打率.281/本塁打11/打点36/出塁率.358/長打率.539

 ペゲーロは、昨今、野球界においてトレンドとなっている「攻撃的2番打者」にふさわしい数字を残しており、茂木も1番打者でありながらパンチ力のあるバッティングを見せ、10本塁打はペゲーロに次ぐチーム2位である。この茂木、ペゲーロのコンビは「1番打者は俊足で、2番打者は小技に長(た)ける」という従来のイメージを大きく覆(くつがえ)している。



2番打者でありながらリーグ4位の11本塁打を放っているペゲーロ 茂木に、”1・2番コンビ”のイメージについて聞くと、こんな答えが返ってきた。

「出塁ですね。チャンスメイクということです。1番はヒットを打てて、足も速く、盗塁ができる。2番は基本的につなぎなのですが、何でもできるイメージがあります。やっぱり、よく言われてきたように、1番は出塁して、2番がつなげるというイメージを持っています」

―― 茂木選手とペゲーロ選手の”1・2番コンビ”は、茂木選手が抱くイメージとは大きく違います。

「今までの”1・2番コンビ”のイメージとは大きくかけ離れていると思います。ただ、僕たちがそのイメージと比べて上かどうかはわからないですけど……」

 茂木は自身のホームラン数と長打率について、ペゲーロが2番にいることが大きいと語った。

「ペギー(ペゲーロの愛称)が後ろにいることで、素直に僕のバッティングができているんじゃないかと思っています。ペギーの前に、四球でもエラーでもいいから出塁すれば、得点につなげてくれる。そういう気持ちになれるので、すごく助かるんです。打席に入って『シングルより長打を打たなければ……』といった余計なことを考えないですし、無駄な力が入ることもありません。本当にペギーが後ろにいるのといないのとはでは、全然違うと感じています」

 では、対戦相手は楽天の”1・2番コンビ”をどう見ているのか。5月21日、ZOZOマリンスタジアムでの試合前にロッテの田口昌徳バッテリーコーチに話を聞いた。

「プレーボールから3、4番のクリーンアップを迎えるようなものですからね。試合開始からピンチというか(笑)。実際、走者がいるわけではないのでピンチではないんですけど、それぐらいの迫力、恐怖心はあります。機動力はそれほどでもないのですが、ふたりとも積極的に打ってくる打者で、一発もあり、出塁率も高い。長打力を備えているバッターとの対戦は、プレッシャーが違います。長打を打たれないように警戒しすぎるとボールが先行してしまい、ストライクを取りにいこうとするとが甘くなり打たれてしまう。まさに悪循環ですよね。バッテリーとしては、攻めるところはしっかり攻める。とにかく、ファウルでもいいからカウントを稼いで、早めに追い込むことが大切になります」

 田口コーチに話を聞いたわずか数時間後、茂木はロッテ先発の唐川侑己から初球を先頭打者ホームラン。今シーズン早くも3本目の先頭打者ホームランだった。この試合、茂木はホームランのあともシングルヒット、二塁打、内野安打と、圧巻の4打数4安打。三塁打が出ればサイクルヒットという活躍ぶりだった。

 一方のペゲーロは無安打に終わったが、楽天の”1・2番コンビ”が相手に与えるプレッシャーのすごさを見せつけた試合だった。

 そもそもペゲーロの2番起用は、故障者などによるチーム事情で決まったという。偶然の産物によって茂木の長打力が引き出されたわけだから、つくづく野球というスポーツの奥深さに感嘆してしまう。

 ちなみに、プロ野球の長い歴史で”1・2番コンビ”が揃って打率3割、2ケタ本塁打を記録したのは、2007年の高橋由伸(打率.308、35本塁打)と、谷佳知(打率.318、10本塁打)の一例しかない(※)。茂木とペゲーロの”1・2番コンビ”が史上2組目の快挙に近づくほど、チームは4年ぶりのリーグ優勝にグッと近づくのである。
※100試合以上、1・2番コンビを組んだ選手対象