9月上旬のイタリア・モンツァには、まだ痛いくらいの陽射しが強く照りつける。そんな眩しい太陽の光に、フェラーリの黄色が映える。 フェラーリと言えば"赤色"だ。しかし、創業75周年を記念してF1-75(エッフェウーノ・セッタンタチンクエ)と名…

 9月上旬のイタリア・モンツァには、まだ痛いくらいの陽射しが強く照りつける。そんな眩しい太陽の光に、フェラーリの黄色が映える。

 フェラーリと言えば"赤色"だ。しかし、創業75周年を記念してF1-75(エッフェウーノ・セッタンタチンクエ)と名づけられた今季型マシンのボディには、地元モンツァではカナリアイエローが描かれた。



熱狂的なファンに支えられて75年の歴史を持つフェラーリ

 フェラーリの創設当初、まだ赤色がイタリアのナショナルカラーとされる以前は、エンツォ・フェラーリが出身地モデナの徽章の色である黄色をイメージカラーとしていた。言わずと知れたフェラーリのロゴ『カバリーノ・ランパンテ(プランシングホース)』の背景に塗られているのが、そのカナリアイエローだ。以来、フェラーリと言えば深紅色のイメージが定着してもなお、黄色はコーポーレートカラーであり続けてきた。

 その特別なカナリアイエローが今、マシンに描かれる。マシンのみならず、ドライバーたちのレーシングスーツ、ヘルメット、さらには決勝ではチームスタッフも黄色のウェアに身を包む。その重みを、フェラーリの面々は理解しているはずだ。

 シャルル・ルクレールはこう語る。

「今週はフェラーリの75周年を記念して黄色の特別なカラーリングで走るので、特別な気分だよ。今朝フェラーリロゴのついた黄色いシャツを着た時は少し変な気分だったけど、黄色のカラーリングはクールだね。モンツァで走るのは本当に信じられないくらい特別な気分。昨日ミラノでのイベントでも大勢の人が集まってくれて声援を送ってくれたんだ」

 フェラーリはシーズン開幕時点では、間違いなく最速のマシンだった。しかしいくつもの取りこぼしによって、今ではレッドブルとマックス・フェルスタッペンに大きな差を開けられてしまっている。夏休み明けの後半戦も、2戦続けて不甲斐ないレースが続いている。

ストップ&ゴーのモンツァ

 ハッキリ言って、超高速で全開率が75%を超えるようなモンツァは、フェラーリにとって厳しいサーキットだ。というよりも、スパ・フランコルシャンがそうであったように、空気抵抗が小さくストレート最高速が伸びるレッドブルが圧倒的な速さを発揮する可能性が高い。論理的に考えれば、そう予想するのが当然だ。

「僕らはコーナーでは少し速いけど、ストレートラインではレッドブルのほうが速い。彼らはとても空力効率の高いマシンだ。彼らがストレートで稼ぐ分を取り戻すには、モンツァではコーナーの数が足りない」

 ベルギーGPでレッドブルが圧倒的な速さを見せただけに、モンツァでもその勢力図は変わらないというのが大方の予想だ。

「計算上はコース特性が僕らのマシンとは合わなくてレッドブルのほうが速そうだし、少し厳しいレース週末になると思う。でも、今年はいいサプライズも悪いサプライズもいくつもあった。だから今週がいいサプライズになればと思っているし、僕らの予想を上回るパフォーマンスが発揮できればと」

 モンツァはストレートが長く、全開率も高い。

 2022年型マシンは、コーナリングスピードが落ちてコーナーでマシンの向きが変わるのを待つようなかたちになるため、どんなサーキットでも全体的に全開率は下がる傾向にある。しかしモンツァは、もともとがストレート主体でストップ&ゴー。そのため、全開率はそれほど変わらないのではないかと見られている。

 残る4つのコーナーはいずれも200km/h超えであり、フェラーリが得意とする高速のコーナリング性能が問われる。コーナーの数は少なくともここで大きく稼ぐことができれば、ルクレールの言うようにストレートでのロスをコーナーで取り返すことができるかもしれない。

 レッドブルやマクラーレンがここを得意としてきたのは、ストレートの速さによってではなく、ダウンフォースをつけてコーナー重視のアプローチを採ったからだった。かつてマクラーレンがしなやかな脚回りで縁石の乗り越えをスムーズに決めてタイムを稼いだように、今のフェラーリは非常に柔らかなリアサスペンションを持っている。今年のフェラーリにそれができないと決めつけることはできない。

ルクレールは2019年に優勝

 気になるのは夏休み前のハンガリーGPから惨敗を続けていることだが、決勝ペースの悪さ、タイヤのペースが想定どおりに発揮できないという問題が、この3戦の不振に直結した原因となっている。
 フェラーリのマティア・ビノット代表はこう語る。

「懸念しているのは、3戦続けてレースペースがよくなかったことだ。3戦続けて本来あるべきポテンシャルが発揮できていない。もう残りのレースも少なくなってきているだけに、これは早急に修正が必要だ。

 レッドブルは速いが、メルセデスAMGもレースペースにおいては我々を上回っている。それがなぜか、それをきちんと分析する必要がある。決勝で想定どおりのパフォーマンスを発揮できていないレースが3戦続き、レッドブルだけでなくメルセデスAMGも我々より速いのは明らかだ」

 ドライバーズランキングではルクレールが首位マックス・フェルスタッペンに109点もの差をつけられ、コンストラクターズも135点差。あとがないフェラーリにとっては、絶対に落とすことのできないレース。

 75年の歴史を背負い、どんなレースを見せてくれるのか。

 2019年に勝利を収めて表彰台の頂点に立ったルクレールには、メインストレートを埋め尽くす大観衆の頭上に浮かぶ表彰台からの景色のすばらしさがわかっているはずだ。熱狂に包まれるモンツァが、また見たい。