宮里藍も指導した鎌田貴トレーナーが証言 女子ゴルフの17歳・馬場咲希(日本ウェルネス高2年、9月1日から代々木高2年)が、ハードな「真夏の大冒険」を終えた。6月から8月にかけて日米を3往復し、フランスにも渡った。そして、全米女子オープンで日…

宮里藍も指導した鎌田貴トレーナーが証言

 女子ゴルフの17歳・馬場咲希(日本ウェルネス高2年、9月1日から代々木高2年)が、ハードな「真夏の大冒険」を終えた。6月から8月にかけて日米を3往復し、フランスにも渡った。そして、全米女子オープンで日本人アマとして8年ぶりの予選突破、全米女子アマチュア選手権で日本人37年ぶりの優勝、世界女子アマチュアチーム選手権では個人4位で、チーム3位にも貢献した。一方で体重は10キロ近く減。馬場を指導する鎌田貴トレーナーは「回復力のある10代だから乗り越えられた日程」と指摘し、今後のためにカロリー摂取の向上、さらなる体幹強化を課題に挙げた。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

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 鎌田氏は、馬場が世界女子アマチュアチーム選手権でも好成績で終えたことに安堵しつつ、「体の状態が心配です」と言った。理由は、目に見えて痩せてきているからだ。父の哲也さんによると、馬場の体重は春先よりも約10キロ減。5月の全米女子オープン予選会突破で始まった想定外の忙しさによるものだが、鎌田氏は今後のために「カロリー摂取の向上も大事」と指摘した。

「咲希はゆっくりなら弁当2つでも食べられるのですが、この夏はそんな時間も取れないほど忙しく、体格に対して十分なカロリーを摂ることができていませんでした。結果、これまで蓄えてきた筋肉までエネルギー消費していました」

 しかし、馬場はこの期間に女子ゴルフの歴史に名を刻み、日本代表としても大いに活躍した。海外試合を「楽しい」と表現し、疲れた顔も見せてはいない。結果が出て気力が充実しているからにも思えるが……。

「それもありますが、この日程をやり切れたのは、一晩寝たら疲れが取れている回復力、充電力のある10代だからです。人の体は20歳を境に少しずつ老化が始まるわけで、『今だからできた』とも言えます。ただ、体の状態は細かくチェックする必要はあります。特にアライメント(位置)を」

9月国内ツアー参戦、今後は「ミリ単位」の調整も重要に

 鎌田氏によると、ラウンドや練習を重ねるゴルファーは、右足の股関節が詰まる傾向にあるという。スイングを繰り返すことが原因で、右骨盤が上がった状態に。それを改善しないままボールを打っていると、調子を崩すことがあるという。

「つまり、一般的に右足が左足よりも短くなった状態になるので、平らなライでも左足上がりのような感覚になるのです。結果、アドレスでボールの位置も変わります。咲希もそれで調子を崩した経験があるので、もし今、右股関節がそういう状態にあるならトレーニングとエクササイズで骨盤の位置を戻す必要があります。ミリ単位のことですが、とても重要なことです。その上で、体幹のさらなる強化をしていければと思っています。まだ、フィジカルの完成度は3割程度なので徐々に上げていきたいです」

 今後の馬場は、9月16日開幕の住友生命Vitalityレディス東海クラシックを皮切りに国内ツアーに参戦することになるが、それまでの2週間で、管理栄養士と相談しながら可能な限りの増量、消費した筋力もトレーニングで戻していくことになる。米国やフランスで見せた平均270ヤードのドライバーショット、精度の高いアイアンショット、勝負強いパットをツアーでも披露するべく、馬場はコンディションを整え、技と心も磨いていく。

◆馬場咲希の今季戦績

【3月】
ヤマハレディース葛城 58位
【4月】
全米女子オープン日本予選会 4位※本大会出場権獲得
【5月】
関東女子選手権 優勝
ブリヂストンレディス 28位※ベストアマ
【6月】
全米女子オープン 49位
日本女子アマチュア選手権 9位
【7月】
全米女子ジュニア選手権 32強
関東ジュニア選手権 優勝
【8月】
全米女子アマチュア選手権 優勝
世界女子アマチュアチーム選手権 個人4位、チーム3位

■鎌田貴(かまた・たかし)
 1962年4月15日、山形県新庄市生まれ。東海大学大学院体育学研究科修了(体育学修士)。プロアスリートのフィジカルトレーナーとして、幅広いジャンルのアスリートの体作りを担当。これまで、ホンダレーシングの専属トレーナーとして、ロードレース、モトクロス、トライアルで20人を超える多くのライダーをチャンピオンの座に導き、F1レーサーの角田裕毅も指導。女子ゴルフでは、宮里藍をプロ転向して間もない2004年から、米女子ツアーに参戦して3年目の08年まで指導した。現在はモータースポーツ、ゴルファーに加え、野球、陸上選手らを指導。次世代を担う若手アスリートの育成にも力を入れている。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)