ドイツ杯優勝の記念撮影で喜びを爆発させる香川真司 ドイツカップ決勝、ドルトムント対フランクフルトの一戦は、ドルトムントが2-1で勝利を収めた。ドルトムントは今季初タイトルを獲得し、有終の美を飾った。ドイツ杯優勝は2011~12シーズン以…



ドイツ杯優勝の記念撮影で喜びを爆発させる香川真司 ドイツカップ決勝、ドルトムント対フランクフルトの一戦は、ドルトムントが2-1で勝利を収めた。ドルトムントは今季初タイトルを獲得し、有終の美を飾った。ドイツ杯優勝は2011~12シーズン以来、5季ぶりのことになる。

 また、トーマス・トゥヘル監督にとっては就任以来初のタイトルとなった。今季はチャンピオンズリーグのモナコ戦に向かう途中で爆弾事件の被害に遭うという最悪の出来事もあった。歓喜でシーズンを終えられたのは格別の思いだったに違いない。トゥヘル監督はクラブ公式サイト上でこうコメントしている。

「我々は目標をすべて達成し、特別なシーズンを締めくくることができた。これは互いに信頼し合ってこそ成し得ることだ」

 5シーズン前を振り返ると、ドルトムントはリーグ戦で2連覇を達成し、クラブにとっては初の2冠を成し遂げた年だった。ユルゲン・クロップ体制が成熟し、マリオ・ゲッツェ、ロベルト・レヴァンドフスキ、ケビン・グロスクロイツら若くて生きのいい選手たちが、前線からのプレスとショートカウンターのスタイルを完成させた。

 当時、香川真司にとっては入団2年目。ゲッツェとともに攻撃の核として機能した。ドルトムントに近い報道関係者やファンが香川を特別視するのは、ドルトムントというクラブにとって特別な意味を持つ2年間の主力選手だったいうことが大きな理由だ。

 バイエルンを倒した2012年のドイツ杯決勝。マンチェスター・ユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督(当時)が観戦に訪れ、かねてから噂されていた香川のマンU移籍が確実であることをアピールした。香川も前半3分に先制点を決め、勝利に貢献。大きな置き土産を残してチームに別れを告げた。香川は惜しまれながらも、温かく送り出された。それはチームにとっても香川にとっても、ある意味でハイライトとも言える一戦だった。

 今回はどうだったか。香川はフル出場。前半には自陣ペナルティエリア付近まで戻ってボールを奪ったシーンもあったし、後半立ち上がりにはコンビネーションからシュートまでいった場面もあった。攻守に貢献したという表現が妥当だろう。状態もきっちり仕上げていた。

 だが、チームは先制しながらも一度は追いつかれる苦しい展開となった。主将のマルセル・シュメルツァーはこう言う。

「見応えのあるゲームでなかったことは間違いない。でも決勝だから、それは重要じゃない」

 ドルトムントは相変わらずあっさりとカウンターで逆襲をくらい、守備陣はチグハグな動きでそれをなんとか止めるだけ。オーバメヤン、ウスマン・デンベレ、マルコ・ロイスといった前線の選手の能力に頼ったシーズンだったことを証明した試合となった。

 なにより気がかりなのは、ここに至ってもまだ、トゥヘル監督と選手たちの不協和音が報道され続けていることだ。フランクフルト戦では、リーグ戦最終節で骨折したMFユリアン・ヴァイグルの代役として、ヌリ・シャヒンではなく、より守備的でCBでプレーすることが多いマティアス・ギンターが起用された。これについてドルトムントと密接な関係にある地方紙ルールナハリヒテンは次のように報じている。

 記者が「驚いたのだけど」と問いかけると、シュメルツァーはこう答えた。

「僕もだよ。僕もショックだった。理由は分からないが、(1年間不動のボランチだった)ヴァイグルのような選手の代わりをできるのは、ヌリしかいない。だから彼がベンチにも入っていないことに驚いた」

 恣意的な質問だったかもしれないが、百戦錬磨のシュメルツァーは、自分の発言がどう受け取られるかを十分わかっているはず。何より問題なのは、優勝を手放しで喜ぶべき地元紙が、このタイミングで不仲を連想させる記事を掲載することだろう。トゥヘルは続投に意欲を見せているが、今回のドイツ杯優勝により、また一歩、退団へ近づいたようにも感じられる。

 試合の翌日、香川は優勝パレードに登場。チームメイトとバスに乗り込み、街中の人々に満面の笑顔を見せた。5年前のパレードでは惜別感が漂わせたが、今回は純粋な喜びの表情だ。山あり谷ありのシーズンを、香川は「いいシーズンだった」と振り返る。まずはこの瞬間をチームメイトたち分かち合いたいというところだろう。

 その香川が来季もドルトムントでプレーするのか。それはトゥヘルの去就とも深く関係する。いつになく”人事”が気になるオフになる。