パリ五輪選考ポイントのかかった「TリーグNOJIMA CUP2022」<8月13、14日/トッケイセキュリティ平塚総合体育館>は、世界ランク6位の早田ひな(日本生命レッドエルフ/日本生命)が圧倒的な強さで優勝した。 2日間で7ゲームマッチ…

 パリ五輪選考ポイントのかかった「TリーグNOJIMA CUP2022」<8月13、14日/トッケイセキュリティ平塚総合体育館>は、世界ランク6位の早田ひな(日本生命レッドエルフ/日本生命)が圧倒的な強さで優勝した。

 2日間で7ゲームマッチ4試合を戦い、落としたのはわずか2ゲーム。

 決勝では直近のWTTシリーズで1勝1敗と互角の平野美宇(木下アビエル神奈川/木下グループ)と対戦し、第1ゲームは平野が高速フォアハンドの連続攻撃で奪ったものの、第2ゲームからは形勢が逆転。

 持ち前のパワードライブを軸にポイントを重ねた早田が、勝負を分けた第3、4ゲームの10オールを競り勝つなど4ゲームを連取して勝利を決めた。

 今年3月、パリ五輪第1回選考会を兼ねた「2022LION CUP TOP32」でも優勝している早田は、これで選考ポイントを75ポイントに伸ばし首位に立っている。

2位は55ポイント獲得の木原美悠(木下アビエル神奈川/JOCエリートアカデミー/星槎)。

五輪金メダルの陳夢戦で変わった1ポイントの取り方

 今大会の早田は攻守のバランスが良くプレーに安定感があった。そして、目を見張ったのが1ポイントに懸ける集中力の高さだ。

 本人いわく「試合の流れというよりは1本1本に集中した」とのこと。

卓球は目先の1ポイントに一喜一憂せず、最終的に11ポイントを取れば勝ちという競技だ。

早田も以前は「試合を流れで捉えていた」と言うが、そのアプローチに変化が起きたのは今年7月、ヨーロッパサマーシリーズのひとつとしてハンガリー・ブダペストで開かれたWTTチャンピオンズがきっかけだった。

女子シングルス準々決勝で東京五輪シングルス金メダルの陳夢(中国)と対戦した早田は5ゲームマッチのフルゲームで惜敗し、こう考えたという。

「陳夢選手にゲームカウント2-2の8オールまで行って負けてしまったとき、このレベルで勝つとなると流れじゃなくて1本1本の勝負だなと感じて。もちろん試合には流れがあるんですけど、相手が何をしたがっていて何を嫌がっているのか、その上で自分が何をしたいのかをもっと1本ずつ考えて選択していくような形が必要だと痛感しました」

 早田は帰国後、Tリーグ NOJIMA CUP2022までの約1カ月間、サーブの配球やレシーブのコースをこれまで以上に熟考し、ポイントの取り方にこだわる質の高い練習を積んだ。その成果が大会本番での気迫となって表れ、優勝という最高の結果で実を結んだ。

決勝後、「練習でやっていることがそのまま試合で出来た」と話す早田の表情は納得と自信に満ちていた。

しかし、パリ五輪選考はまだ始まったばかりだ。今後の選考レースを見据えると伊藤や平野ら同年代、先輩の石川佳純(木下アビエル神奈川/全農)といったライバルたちに加え、下の世代の追い上げも気にならないわけではない。

「優勝を重ねて、追う立場から追われる立場になっていく中で、張本美和選手(木下アビエル神奈川/木下アカデミー)のようにピッチの速い卓球がどんどん進化して、自分自身も進化し続けないといけない。自分もまだ22歳。いろんなことを学んでもう一回り二回り自分を超えていけるよう力をつけていきたい」と言い、第1回選考会で優勝した半年前とは「フォアハンドもバックハンドもサーブ・レシーブ、ブロックや構えとかも全部変わっている」と胸を張る。

 次戦は地元凱旋。パリ2024オリンピック第2回選考会を兼ねた「2022全農CUP TOP32福岡大会」<9月3、4日/アクシオン福岡>に乗り込む。
※カッコ内の表記は(Tリーグチーム/所属)

(文=高樹ミナ)