Jプロツアー福島3連戦の最終戦となる「第1回古殿ロードレース」は7月18日、海の日の祝日に開催された。市民レースとしての開催経験はあるものの、Jプロツアーとして選手たちが走るのは、今年が初めてとなる(昨年はコロナ禍により中止)。古殿町は前日…

Jプロツアー福島3連戦の最終戦となる「第1回古殿ロードレース」は7月18日、海の日の祝日に開催された。市民レースとしての開催経験はあるものの、Jプロツアーとして選手たちが走るのは、今年が初めてとなる(昨年はコロナ禍により中止)。

古殿町は前日までレースが開催されていた石川町と同じ石川郡にあり、心和む里山風景が広がる美しい町。古殿八幡神社で毎年開催(コロナ禍のため、2020年より中止)されてきた流鏑馬や、鮫川沿いの1000本を超える桜や、点在する名木など、桜の美しさでも知られている。

実は自転車界とも縁が深く、リオ五輪にトラック日本代表として出場し、現在は競輪とトラックレース、ロードレースと3つの舞台で活躍する窪木一茂(TEAM BRIDGESTONE Cycling)の出身地。他にも、オリンピアンや名選手を輩出してきた土地である。

今回のコースは樹齢400年、樹高20mという県の天然記念物にも指定されたヤマザクラ「越代の桜」をシンボルとし、この桜の前にスタートゴールを設営した1周12.2kmの特設コースだ。
コースには、前半につづら折りが続くテクニカルで長い下りが含まれ、続いては、4kmほど続く長い登坂が待ち受けている。平坦部分はほとんどなく、休める場所がない。登坂力もさることながら、下りのテクニックも要求され、選手たちが消耗されていく難コースと言えるだろう。

前日のレース展開からして、この日も力勝負のハードなレースになることが予想された。迎えた当日、選手が「越代の桜」の前にラインナップ。個人総合首位の証であるプロリーダージャージは、ここまで6勝という圧倒的な強さを見せつけてきた小林海(マトリックスパワータグ)が引き続き着用し、U23のリーダーが着用する白いネクストリーダージャージも山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が守り続けている。
シーズンの開幕から連勝を続けてきたマトリックスパワータグの快進撃は、この福島の連戦でストップし、リーグの流れが変わっていた。マトリックスの連勝カウントが再開されるのか。底力のあるメンバーを揃え、厳しい展開に持ち込んでいくスタイルのキナンレーシングチームがそれを阻むのか。あるいは、活性化された他チームからの突き上げが生まれてくるのか。大いに注目が集まった。なお、この日のレースはコースを9周回する109.8kmに設定された。



赤いプロリーダージャージを着る小林海(マトリックスパワータグ)と白いネクストリーダージャージを着る山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)を先頭にしてスタート

地域の人々の温かい拍手に送られて、レースがスタートした。直後から、激しいアタックの掛け合いが始まった。抜け出したい選手が飛び出しては、集団に吸収されていく。



アタックの応酬となるが、どの動きも決定的なものにならず

こなすだけで消耗されていく厳しいコースながらも、集団の動きは落ち着かないまま。抜け出しと、抜け出した選手を捉えるためのペースアップが続き、ハイペースで推移していくレースに、選手たちは疲弊していった。



メイン集団をコントロールするマトリックスパワータグ



タフなコースと展開に選手たちは淘汰されて行く

4周目を終える頃には、もうすでに集団は半分以下まで絞り込まれていた。5周目に入り、いったん落ち着きを見せた集団だが、後半の登坂に差し掛かったところで、また集団が活性化。アタックの掛け合いが始まった。このペースアップが決定打となり、集団はバラバラに分裂してしまった。



5周目に入ると、いったん集団は安定化したが……。

※ペースが上がり、サバイバルレースへ!
優勝争いの行方は…!?

ここで残った7名の実力者が新たな先頭集団を形成した。後続は完全に分裂し、事実上脱落しており、再度追いつける可能性は極めて低い。折り返しを越えた時点で、すでにレースの行方はこの7名に絞り込まれていた。



選手は7名に絞り込まれた。降り出した雨の中、トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)が仕掛ける

続く6周目、また決定的な動きが生じた。小林海と、トマ・ルバ、山本大喜(ともにキナンレーシングチーム)の3名が先行したのだ。この3名を追えるものはおらず、残りのメンバーとの差は、あっという間に2分30秒まで開いた。



終盤、レースは小林、山本大喜、ルバ(ともにキナンレーシングチーム)の3名に絞り込まれる

さらに8周目、コース前半のテクニカルな下りの中で、小林がアタック。しかし、キナン勢を振り切ることはできず、その後の登坂パートで、ルバと山本大喜は小林に追いついた。



ラスト2周、小林が長い下りで仕掛けた



最終周回を前に、ルバが仕掛け、独走に入ると、小林との差を開いていった

最終周回に入る直前、ルバがアタック。そのまま加速すると単独で先行を始めた。表情も変えず、衰えぬスピードで、淡々と先頭を走り続ける。独走力を誇るルバとはいえ、レースはまだ1周を残している。12.2kmの難コースを1人で逃げ切れるのか?
小林は懸命にルバを追う。だが、その差はなかなか縮まらず、30秒以下に詰めることはできなかった。



最終周回、先頭を独走するルバ



小林はルバを追ったが、差は詰まらず、逆にじわじわと開いて行った

ルバはそのまま最終周回を独走で走り切り、悠々とフィニッシュ、優勝を決めた。山本大喜も、ルバの勝利を確信し、小林を振り切って、ゴールへ向かった。



ルバは1周以上を単独で逃げ切り、優勝を決めた

山本大喜が笑顔で両腕を上げてゴールし、キナンレーシングチームのワン・ツーフィニッシュが決まった。このレースを完走したのは、たったの8名。まさにサバイバルレースとなった。



前日に引き続き、順位を入れ替えた同じメンバーによる表彰台となった

ルバはレース後、非常にタフなレースだったと語った。ハードなコースではあったが、その分だけ、ルバの独走力を生かした展開に持ち込めたのだろう。第3戦の結果、福島3連戦のタイムを総計した総合順位でもルバが首位となった。
キナンレーシングチームは、別リーグのJCLを主戦場としており、Jプロツアーは交流戦としての参戦ではあったが、連勝と総合首位という最高の形を残すことになった。Jプロツアーランキングのの上位に動いは生じず、リーダーの小林、U23リーダーの山本はともに首位を守った。



プロリーダージャージを守った小林と、ネクストリーダージャージを守った山本

Jプロツアーは、この福島3連戦で大きく流れが変わった。この後、リーグは経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップなどの重要なレースが続き、シーズンのクライマックスを迎える。後半戦には、このあと、どのようなドラマが待ち受けているのだろうか。

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【結果】第1回古殿ロードレース(109.8km)
1位/トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)3時間14分48秒
2位/山本大喜(キナンレーシングチーム)+1分29秒
3位/小林海(マトリックスパワータグ)+1分35秒
4位/金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)+6分14秒
5位/ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)+6分22秒

【福島3連戦・総合順位】
1位/トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)6時間18分1秒
2位/山本大喜(キナンレーシングチーム)6時間16分18秒
3位/入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)6時間26分14秒

【スプリント賞】
1回目/該当者なし
2回目/金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)

【敢闘賞】
佐藤光(稲城FIETS クラスアクト)

【Jプロツアーリーダー】
小林海(マトリックスパワータグ)

【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

画像提供:一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟

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