フランス・パリで開幕した「全仏オープン」(本戦5月28日~6月11日/クレーコート)の見どころをお届けしよう。 大会欠場者の中には、ロジャー・フェデラー(スイス)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)、マリア・シャラポワ(ロシア)のような、目…

 フランス・パリで開幕した「全仏オープン」(本戦5月28日~6月11日/クレーコート)の見どころをお届けしよう。

 大会欠場者の中には、ロジャー・フェデラー(スイス)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)、マリア・シャラポワ(ロシア)のような、目を引く名もある。彼らは3人合わせて6つの全仏タイトルと、46のグランドスラム・シングルス・タイトルを獲ったチャンピオンたちで、テニス界でもっとも人気のある選手たちでもある。

 その3人が欠場した理由は何か。

 フェデラーは、グラスコートとハードコートの準備に集中するため、クレーコート・シーズン全体をスキップすることを決めた。セレナは妊娠し、秋の出産を予定しており、2018年にツアーに戻ってくると言っている。薬物使用により15ヵ月の出場停止処分から戻ったシャラポワは、ランキングが落ちて、大会出場権を得るに十分なだけ高いところまで順位を上げることができなかった。そして全仏主催者であるフランステニス協会は、シャラポワにワイルドカード(主催者推薦枠)を与えなかった。

 それでも----ロラン・ギャロス(全仏)には注目すべきストーリーがたくさんある。

■アンドレとノバク

 昨年の全仏オープン優勝が、4大会連続でのグランドスラム優勝となったジョコビッチ。生涯グランドスラム(キャリアを通じて4つのグランドスラムのすべてを制すること)を達成した彼のスランプは、そこから始まり、およそ一年続いている。そのため彼は大規模なチーム再編成を行う道を選んだ。

 ジョコビッチの最新の動きは、全仏期間中のコーチとして、アンドレ・アガシ(アメリカ)を招き入れるというものだった。ふたりはパリで会い、すぐに練習を行った。

 アガシはグランドスラムで8度優勝しているが----数的にはジョコビッチより4度少ない----一度もコーチとして働いたことがない。しかし、「もうずっと長いことお互いを知り合っているかのように感じた。すぐにピタッとくる感じがし、迅速に親しくなった」とジョコビッチは言った。「彼は、僕に大いにインスピレーションを与えてくれる人なんだ」。

■ナダルの復活

 3大会連続でクレーコート大会で優勝を遂げることで、ラファエル・ナダル(スペイン)は復活ののろしをあげた。

 ナダルはふたたびグランドスラムにおいて、ほかの誰もがやったことのない圧倒的な形で覇権をふるった大会、全仏オープンの優勝候補となったのだ。彼は、左手首の故障のため3回戦を前に棄権した昨年大会のあと、一年後に、10度目の全仏タイトルを勝ち獲ることができるだろうか。

■世界1位の人生は厳しい

 アンディ・マレー(イギリス)とアンジェリック・ケルバー(ドイツ)、現在シングルス世界1位であるふたりが、今年ここまで四苦八苦している。マレーは優勝1度で16勝7敗。ケルバーは優勝なしで19勝10敗である上、トップ20の選手との7対戦で全敗している。

「昨年の私は、ただプレーしていたけど、今季は期待がより大きいことを感じる」とケルバーは言った。

 そのケルバーは大会初日の1回戦で、エカテリーナ・マカロワ(ロシア)に2-6 2-6で敗れた。世界1位の初戦敗退はオープン化後の全仏オープンで初となる。

■どの女子選手が浮上するか?

 セレナとシャラポワが、もしも出場していたら全仏の有力な優勝候補となったはずだ。しかし彼女たちがいない今年、はっきりとした優勝候補はいない。

 2014年大会の準優勝者で、大舞台でまだ優勝していない選手の中でもっとも注目されるシモナ・ハレプ(ルーマニア)は、ここまでのクレー大会でいいプレーを見せていたものの、直近の大会で右足首の靭帯を痛めてしまった。

 センセーションを巻き起こし得る、そのほかの女子選手の中には、昨年9月の全米オープンで準優勝した世界3位のカロリーナ・プリスコバ(チェコ)、前哨戦のクレー大会で優勝したばかりの世界6位、エリナ・スビトリーナ(ウクライナ)の顔も見える。

■次世代

 今週は、ATPのコンピューター・ランキングの40年を超える歴史の中で、トップ5の選手が全員30歳以上となった初の週である。グランドスラム・チャンピオン・チーム(マレー30歳、ジョコビッチ30歳、ワウリンカ32歳、ナダル30歳、フェデラー35歳)が歩調を緩めるときはくるのか----例えば、20歳のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、23歳のドミニク・ティーム(オーストリア)、22歳のニック・キリオス(オーストラリア)のような、若く上昇中の選手たちに注意を払っておく価値はある。

■アメリカのティーン

 ニュージャージー出身の15歳、アマンダ・アニシモワ(アメリカ)は、グランドスラム大会の本戦出場を遂げた初の"2001年生まれ"のプレーヤーとなった。彼女は、アメリカテニス協会の全仏ワイルドカードにより、出場を果たした。アニシモワはまた、2005年のアリゼ・コルネ(フランス)以来、もっとも若い全仏本戦出場者でもある。

 昨年の全仏ジュニアの部で決勝に進出したアニシモワは、1回戦で日本の25歳、奈良くるみ(安藤証券)と対戦する。

■雨の中で歌う

 全仏オープンは、変わらずセンターコートに屋根のない唯一のグランドスラム大会であり続けている(数年のうちに、センターコートに開閉式の屋根を設置するプランは存在する)。

 そして昨年は屋根ないゆえに、ことはいい具合に進まなかった。ここ16年で初めて、雨のために一試合も消化できなかった日が生まれ、大会オフィシャルによる他の天気にかかわる決断に対し、選手たちから批判の声が上がった。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はフランス・パリで開幕した「全仏オープン」の会場の様子(撮影◎毛受亮介/テニスマガジン)