南半球4カ国(ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチン)の最強を決める「ザ・ラグビー・チャンピオンシップ2022」が6日に開幕した。2023年ラグビー・ワールドカップ フランス大会が13カ月後に迫るなか、有力国の勢力図を確…

南半球4カ国(ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチン)の最強を決める「ザ・ラグビー・チャンピオンシップ2022」が6日に開幕した。2023年ラグビー・ワールドカップ フランス大会が13カ月後に迫るなか、有力国の勢力図を確認するためにも重要な大会だ。

通常であればワールドカップの本命チームが浮上する時期。しかし、2023年大会はいまだ混沌としている。その一番の原因はオールブラックスの不調だ。悩める常勝軍団の現状を中心に、チャンピオンシップの見どころを解説したい。

◆世界ランキング、フランスが初の1位 日本は10位

■オールブラックスがランキング5位とワースト更新中

第1節の注目カード、南アフリカvs. ニュージーランドは、26-10でスプリングボックスの勝利に終わった。オールブラックスは敵陣22メートルにほとんど入ることができない完敗だった。これで直近のテストマッチ6試合は1勝5敗、アイルランドとの第2戦から3連敗となった。一体どうしてしまったのだろう。

約120年に及ぶオールブラックスの歴史で最悪の連敗記録は1949年にあった6連敗、1998年にも5連敗している。しかし、2004年にヘッドコーチに就任したグラハム・ヘンリー、後任のスティーブ・ハンセンの下では15年間、勝率9割と無類の強さを誇示してきた。

南ア戦の敗北によってニュージーランドのワールドランキングは、2003年のランキング導入後、最悪の4位から5位に下がりワーストを更新。24年ぶり、史上3度目のスランプといえる。

13日に敵地で行われる南アとの第2戦も劣勢は否めない。もし、この試合に敗れれば、ヘッドコーチのイアン・フォスター、キャプテンのサム・ケインの去就が問われることが確実。まさに首の皮一枚の状況だ。

■南アフリカにも絶対的強さなし

なぜ、オールブラックスが勝てないのか。その明確な理由は見つからない。メンバーはそろっているし、戦術を変更したわけでもない。ただ、相手のアタックを止めきれず、ラインアウトでミスを犯し、モールで押され、攻撃の決め手に欠けるだけ。ようするに普通のチームになってしまっている。自信を失ったチームの責任がヘッドコーチに向けられるのは当然だろう。

一方、2019年ワールドカップ日本大会優勝のスプリングボックスが、圧倒的な強さを維持しているかというとそうでもない。7月のウエールズとのテストマッチ3連戦は2勝1敗と勝ち越したが、いずれも接戦だった。その前に行われたイングランド戦は26-27で惜敗している。昨年からのテストマッチ6試合の成績は4勝2敗だ。

■北半球2チームがワールドランキングでワンツー

最新のワールドランキングを見ると、1位アイルランド、2位フランス、3位南アフリカ、4位イングランド、5位ニュージーランド、6位オーストラリアとなっている。北半球のチームがワンツーを占めることは滅多にない。

アイルランドは7月のニュージランド遠征を2勝1敗で勝ち越し、ランキングトップに浮上した。しかし、今年のシックス・ネイションズではフランスに敗れて2位だった。戦力が落ちているオールブラックス相手の3試合をどう評価するかも難しい。

シックス・ネイションズを全勝優勝したフランスは7月に日本代表に2連勝し、一時的にトップに立った。これはフランスにとって初の快挙だった。戦力が充実したホスト国を2023年の本命に上げる専門家もいるが、南半球の強豪国とのテストマッチがないのが気にかかる。

こうして考えると、イングランド、オーストラリアを含めた6チームの実力は拮抗しているといえそうだ。今後、本命が浮上してくるのか、混沌としたまま本戦に突入するのか、テストマッチの行方から目が離せない。

■ジャパンのライバル、アルゼンチンに注目

最後に、ワールドカップでジャパンと同じプールに入る当面のライバルは、アルゼンチン。アルゼンチンはヘッドーコーチに元オーストラリア代表監督のマイケル・チェイカが就任、これまでの力任せのラグビーから、展開してトライを取り切る戦術に転換した。

これが見事にハマって、先月のスコットランド戦を2勝1敗と勝ち越した。特に第3戦はノーサイド直前に逆転トライを上げる、いままでにないスタイリッシュな姿を披露した。

この戦術にさらに磨きがかかれば、1年後、ジャパンとのベスト16進出争いは熾烈になりそうだ。現在のランキングは9位アルゼンチン、10位日本。ザ・ラグビー・チャンピオンシップでのアルゼンチンの試合にも、ぜひ注目してほしい。特に敵地に乗り込んで戦う27日、9月3日のニュージーランド戦は、いろいろな意味で興味深い試合となる。

ラグビーワールカップ日本大会が終わってすでに3年が経とうとしている。日本代表の大活躍に湧いた2019年から、日本はどう成長しているのか。15年のスポーツ史上に残る番狂わせから19年の躍進、そして23年は日本も真価を試される大会ともなりそうだ。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。