関東インカレの結果は「まずまず」という丹所健丹所健「後輩たちにいい背中を見せたい」 トラックシーズンの締めとなるホクレンディスタンスチャレンジ。昨年出雲駅伝優勝、全日本大学駅伝5位、箱根駅伝総合5位の東京国際大は、収穫と課題が明確になったレ…


関東インカレの結果は

「まずまず」という丹所健

丹所健「後輩たちにいい背中を見せたい」

 トラックシーズンの締めとなるホクレンディスタンスチャレンジ。昨年出雲駅伝優勝、全日本大学駅伝5位、箱根駅伝総合5位の東京国際大は、収穫と課題が明確になったレースになった。

 主力のひとり、丹所健(4年)は、網走大会で1万mに出場し、序盤から先頭集団に位置し、いいリズムでラップを刻んでいった。外国人選手たちに食らいついていき、28分01秒24の自己ベスト更新。27分台に迫るタイムで関東インカレから調子を戻してきた。

「関東インカレ(1万m)では、29分フラット、28分台が出ればいいって感じだったですけど、28分36秒72が出てまずまずでした。そこからホクレンの大会で27分台を狙って練習をして、いい流れできていたんで、それが結果に結びついたかなと思います。27分は、秋にまた狙っていきます」

 丹所にとっては、久しぶりに手応えのあるレースだった。

 今年の箱根駅伝で3区を走り、東京国際大総合5位に貢献した後、故障した。食べることが好きなため、故障後も食が進み、箱根時に59キロだった体重が67キロまで増えた。「故障してストレスがたまり、陸上から離れたいという気持ちにもなった」と言うが、復帰を見据えて減量を始め、関東インカレでは64キロになった。ホクレンに向けて、さらに体を絞り、今は60キロになった。

「自分の課題は、ほんと、この体重だけ。しっかりと練習をして、体重を落として、整えていけば自然とタイムは出るかなと思っていました」

 見るからに顔がほっそりとして、体も引き締まっている。箱根駅伝の時の体重に戻し、走りに勢いが戻ってきた。

「3年の時、周囲の評価が高くなり、自分も手応えがありました。でも、その1年だけと言われるのは悔しいじゃないですか。4年生でも活躍できるようになりたいので、そのためのホクレンでした。昨年は箱根の3区で区間賞を獲ったけど、区間2位と5秒差だった。それじゃエースとは言えない。今年は、2区を走って、圧倒的な走りをしたいですね。ただ、ケガがあるとスイッチがきれやすいので、そこだけ気をつけていきたいです」

 丹所の復活は、チームにとって非常に大きい。先頭に立つエースが背中を見せることで下級生の意識や競技力が高まる。丹所もそこを意識している。

「夏は4年生として後輩たちにいい背中を見せられるようにして、多くを残していきたい。そうして全体の力を上げていかないと箱根の総合優勝は難しい。まずは、出雲で昨年のような圧倒的な強さを見せて連覇し、そこで自信をつけて全日本を獲りたい。最後の箱根は、笑って終われるようにしたいですね」

 そのために背中でチームを牽引していく覚悟だ。

山谷昌也の調子は上がるのか

 イェゴン・ヴィンセント(4年)はケニアから戻り、千歳大会の5000mでペーサーとして出走した。13分40秒の設定のせいか、余裕がありすぎてペースが早くなり、「リラックス」と声かけされたが、調子は上々のようだ。大志田秀次監督は「ケニアの選手は日本のようなペーサーで試合を運ぶのではなく、ペースの上げ下げの激しいレースをしている。ヴィンセントは、日本に慣れて、ケニアで育っている選手とは違う。そういうところを含めて、いろんなことを経験してきたと思うので、それを今後、どう活かすかですね」と、競技者としてケニアでの経験を経て、またひとつ成長した姿を見せてくれることを期待している。

 山谷昌也(4年)は、網走大会での1万mは29分53秒17、千歳大会の5000mは14分37秒73に終わった。関東インカレの2部5000mでは日本人2位になり、春は丹所よりも調子がよかった。そこからホクレンまでの間に、いったい何が起きたのだろうか。

「関東インカレで入賞して、いい結果を残せたんですけど、その後、調子を崩してしまいました。なぜ、調子が落ちたのか、よくわからないんです。関カレ前は余裕を持ってできていたペースの練習が関カレ後はきつくなって......。急に暑くなったり、疲労が抜けないとか、そういうのもあるのかもしれないですけど、それでもなんとか調子を上げようと工夫してきたんですが、調子が上がらないまま今回、スタートラインに立ってしまった感じです」

 レースに出ない選択肢もあったが、大志田監督から「調子が悪いなりにしっかりとまとめることがこれからの成長につながるよ」と言われて出場した。

「監督と話をして予定していたタイムよりも大幅に遅れてしまったので、自分の力不足を感じました。トラックシーズンは......50点ぐらいですね。前半はよかったので、そのままホクレンもよければ100点だったんですけど......。昨年もこの時期に走れなくなって、気持ちが落ち込んだのですが、夏合宿で調子を上げていくことができたので、今年もこれから調子を取り戻していきたいです。丹所も最近調子を上げてきていますからね。1万mの自分の自己ベストを抜かれてしまったので、夏合宿で強くなって、もう1回、丹所の記録を抜き返せるようにしたいと思っています」

 山谷自身の調子は、まだ底の状態のようだが、チーム全体を見渡すと故障からの復帰組や中間層も結果を出すなど、選手層の底上げが確実に進行している。

トラックシーズンで新戦力が出てきた

 網走大会の5000mでは山岸柊斗(2年)が13分58秒31の自己ベスト、千歳大会5000mでは、木村海斗(2年)が14分02秒92で網走大会に続いて自己ベストを更新、牛誠偉(2年)も13分50秒28で自己ベストを更新した。また、佐藤棒紀(2年)は昨年、出雲駅伝で2区4位とルーキーながらすばらしい走りを見せ、初優勝に貢献、続く全日本大学駅伝後、故障して箱根駅伝に出走できなかった。今年3月には大腿骨の疲労骨折で離脱。5月末に練習を再開し、今回のホクレンが復帰レースになった。千歳大会でのタイムは14分06秒92だったが、「夏に向けていいイメージをもっていくためのレース」としてまずまずの手応えを掴むことができて、表情に少し余裕があった。

 千歳でレースを見ていた大志田監督は、うれしさ半分という表情でこう語った。

「山谷は、今回5000mに調子が悪いなりに出て、14分37秒かかって、何やってんだという見られ方をされると思うんですよ。そういうことはレースに出ないとわからないので、それを踏まえて今後どうするのかということですね。今回の収穫は、牛と佐藤ですね。木村も頑張りました。網走大会から千歳大会と中2日で普通は1本のところ、うちは2本出て、しんどい思いをさせたと思うんですけど、2本をどうまとめるのかというのを見たかったんです。みんなそれなりに結果を出してくれたのは大きいですね」

 中間層や復帰組のレース結果を見てもチーム力は確実に増しているのが見てとれるが、全体を俯瞰するとやはり上級生の充実さが伝わってくる。山谷は今、苦しんでいるが、夏明けには戻ってくるだろうし、丹所、ヴィンセントはさらに強くなっていくだろう。

「昨年の箱根駅伝は、4年生はひとり(野沢巧理)しか走れなかったんです。でも、今年は主将の宗像(聖)ら4年生の多くが箱根経験者で、彼らの足並みが揃えばかなりの力になります。その4年生を脅かす存在として牛、山岸や木村らが出てきたので、夏合宿にいい流れでいけますね」

 選手層は、確実に厚くなっていきそうだが、箱根制覇を目指す東京国際大の最大の懸念は山だ。前回、5区はルーキー(当時)の倉掛響が区間14位、6区の林優策(当時2年)は区間13位と苦戦を強いられた。この特殊区間をどうマネジメントしていくのか。

「まだ、山の計算はついていないですけど、昨年走った倉掛あたりがどうなるのか、ですね。夏合宿では、全体練習のなかに山用の練習も入れていくので、そこで出てくる選手がいればと思っています。ただ、特殊区間も含めてですが、他大学と比べることはしていません。うちは我々が目指しているオーダーが組めるかどうか、ですね。そのオーダーで自分たちが思うようなゲーム展開になれば総合優勝が見えてくると思っています」

 言葉の端々に大志田監督の自信を垣間見ることができる。

 今季のチームは、選手が揃えば相当に完成度の高いチームになりそうだ。もっとも選手を故障なく揃えるのが難しいのだが......。

 夏合宿は、例年と少し異なり、4年生は実業団合宿には参加せずに、チームに帯同して1か月、北海道で集中して行なう予定だ。

「4年生を残したのは、下級生に4年生の背中、取り組みを見せるためです。(伊藤)達彦(Honda)が4年の時の1年生が育っているのは、達彦たちの背中を見てきたからだと思うんです。そういうところは継承して、次に活かしていかなければならないと思っているので」

 丹所らは、大志田監督の考えを意識してチームを牽引していく。選手からは「3冠達成」という目標に向けて、自分たちがやるんだという意識がホクレンでの走りに感じられた。

 今年の東京国際大は、何かを成し遂げようとする気迫に満ちている。