ポカリスエット「エールキャラバン2022」で徳島・富岡東高を訪問 女子バレーボール日本代表として2012年ロンドン五輪で28年ぶりに銅メダルを獲得し、昨年の東京五輪でも主将として活躍した荒木絵里香さんが現役高校生と触れ合った。7月13日、徳…

ポカリスエット「エールキャラバン2022」で徳島・富岡東高を訪問

 女子バレーボール日本代表として2012年ロンドン五輪で28年ぶりに銅メダルを獲得し、昨年の東京五輪でも主将として活躍した荒木絵里香さんが現役高校生と触れ合った。7月13日、徳島・富岡東高を訪問し、女子バレーボール部やバスケットボール部、剣道部の生徒に特別授業を実施。今夏のインターハイに出場する女子バレー部に直接指導も行った。「学生時代の試合の経験は、競技だけでなく人間形成の中でもすごく特別な期間。選手たちにはこのスペシャルな時間を味わっていただけたらと思います」と富岡東高と全国の高校生にエールを送った。

 日本女子バレー界の“レジェンド”にとって、高校生とこうして触れ合うのは初めて。始まる前は多少の緊張感も見られたが、特別授業の生徒たちから大きな拍手とともに迎え入れられると、「こんなに温かく迎えていただいてうれしい」と表情をほころばせた。

 今回の企画は、部活で汗を流す、すべての高校生を応援するポカリスエットの「エールと、ともに。」プロジェクトの一環として、大塚製薬が2014年から開催する「エールキャラバン2022」。各競技のレジェンドがサポーターとなり、部活を頑張る高校生、指導者に直接指導するだけでなく、レジェンドの高校時代の苦しみや挫折から何を学んだか、経験をもとにしたエールを送る活動だ。

 コロナ禍以前の2019年12月までに全国45校を訪問し、約3万5000人の高校生と交流。今年はインターハイが四国各地で開催されるということで、四国の高校での実施となった。その中で、富岡東高女子バレーボール部が8大会ぶりにインターハイ徳島県予選で優勝したこともあり、荒木さんの登場となった。

 特別授業に参加した生徒たちは、同じ教室に荒木さんがいるという興奮を隠しきれないままスタート。「どんな気持ちで高校時代の部活動に取り組んでいたか」という問いに対し、荒木さんが最初に語ったのは「バレーボールがうまくなりたい」という思いだった。

 中学時代は岡山・倉敷市の公立校でバレーボールをしていた。当時はお世辞にもチームメイトたちのレベルは高くなく、「高いレベルでやりたいということに飢えていた」という。高校は女子バレーの名門の東京・成徳学園(現・下北沢成徳)に進学。岡山から家族全員で引っ越して新天地での生活を始めた。

「一気にレベルが上がって、ついていくのに必死でした。難しいバレー用語も飛び交って、何のことだか分からないくらいでしたが、とにかくバレーがうまくなりたかった。高校に入って『日本一になる』という高い目標を立てましたが、それを達成できた時に震えるような気持ちを味わうことができたんです。そこで、もっとこういう気持ちを味わいたい、もっと高いレベルでやりたいという気持ちになれて、部活動をずっと続けることができました」

 日本女子バレー界のレジェンドの成長物語を聞く生徒たちの目は輝き、必死にメモを取る姿も。今回、インターハイに出場するバレー部の生徒たちはコロナ禍の中で部活動も制限が多かったのだとか。

 モチベーションを保つことすら難しい状況だったが、荒木さんは「そういう時は自分が憧れている選手のプレー映像を見るのもいい。今はスマホでもすぐにそういう映像を見ることができる」と推奨。荒木さん自身も高校時代は「VHSのビデオテープに録画した日本代表や海外の試合を何度も巻き戻して見ていた」そうだ。

「自分が苦しい時は周りも苦しい」 そんな時に大事なのは周囲への「声かけ」

 次第に話に熱気がこもり、授業中も「きちんと水分補給をするのを忘れないで」とポカリスエットで給水しながらの講義となった。話は生徒たちが「今、どんな気持ちで部活動に取り組んでいるか」という話題に。部活動では、つらいことや苦しいことにも直面するが、荒木さんは周囲への「声かけ」の重要さを口にした。

「自分だけで頑張ろうと思ったら視野は狭くなるけど、そういう時に周りに声をかけたら自分も頑張れるし、その人も頑張れる。そうすればチームももっと大きくなれると思います。自分が苦しい時は周りも苦しい。そういう時はあえて周りに声をかけていったほうがいいですね」

 荒木さんは銅メダルを獲得したロンドン五輪だけでなく、結婚、出産を経て復帰した後も日本代表に選出され、キャプテンの大役を任された。そのキャプテンシーの強さや大きさは活躍を通じて多くのファンの知るところ。就任当初は悩みの多い日々を送っていたという。

「私はミドルブロッカーという役割で、プレー的に先頭に立ってグイグイ引っ張っていくようなキャラではなかった。だから先頭に立つのではなく、チームの真ん中でみんなを鼓舞し、士気を上げ、熱量を持ってやる。私にできるのはそれだと思っていました」

 授業の終盤では「先生などに怒られた時はどうすればいいか」という質問を受けた。「怒られた時は落ち込んでしまって、プレーも弱くなっちゃうよね」と大きくうなずいたが「ネガティブなことやマイナスのことを“頑張るエネルギー”に変えられればいいと思う。相手に言われたことは変わらないけど、捉え方は自分で決められるので」といったメンタルコントロールの方法も伝授した。

 ちなみに「高校時代は先輩にも怒られたけど、後輩にも『やる気がないなら出ていけ』と言われたこともありました」という裏話も披露し、生徒たちがざわつく場面もあった。

 45分間の特別授業を終えて、地元テレビ局の取材を受けた荒木さんは「生徒たちの目がキラキラしていて、まっすぐに学生生活を送る皆さんを心から応援したいと思いました」とエネルギーをもらった様子。目前に迫るインターハイについては「学生時代の試合の経験は、競技だけでなく人間形成の中ですごく特別な期間。選手たちにはスペシャルな時間を味わってほしいと思います」とエールを送った。

女子バレーボール部を直接指導 世界を封じた“本気のブロック”も披露

 荒木さんはこの後、女子バレーボール部の練習を直接指導した。

 始めは選手たちに緊張した様子がうかがえたが、練習が進むにつれてコミュニケーションをとる姿も見られた。ミドルブロッカーとして活躍した荒木さんは、選手たちにブロックの時の手の出し方や指先の力の入れ方などを指導。熱心に話を聞いた選手たちはすぐに実践し、荒木さんから拍手で褒められるシーンも見られた。

 練習の最後には荒木さんも加わって1セットマッチの“試合”も実施。「現役引退後、ここまで本格的に体を動かすことはなかった」と言いながらも、世界を封じてきた本気のブロックも随所に披露。充実した表情で約2時間にわたって行われた練習を締めた。

 練習終了後、選手たち個別にポカリスエットのスクイズボトルが手渡し、チームにサイン入りのジャグタンクを贈呈。さらにサプライズとして、荒木さんが今回考えた「意志は力」という言葉が入った応援フラッグもプレゼントした。フラッグにサインを入れている姿を見ていた生徒たちはみんな感激の面持ちだった。

 最後に行われた挨拶では、富岡東高のインターハイでの健闘を祈るとともに「勝つことも大事なことだけど、みんなでやるということがもっと大事なこと。笑顔を忘れずに頑張ってください」とエールを送った荒木さん。選手たちが今回の経験をこの夏の、そして、人生のプラスにしてくれることを心から願っている。(THE ANSWER編集部・瀬谷 宏 / Hiroshi Seya)