新しくなった国立競技場で、昭和63年生まれのふたりが躍動した。 7月9日、ラグビー日本代表(世界ランキング10位)は通算成績1分10敗のフランス代表(同3位)と激突。日本代表としては"新・国立"で初のテストマッチとなり、ワールドカップをの…

 新しくなった国立競技場で、昭和63年生まれのふたりが躍動した。

 7月9日、ラグビー日本代表(世界ランキング10位)は通算成績1分10敗のフランス代表(同3位)と激突。日本代表としては"新・国立"で初のテストマッチとなり、ワールドカップをのぞいて国内最多記録となる57,011人もの観客が詰めかけた。



フランス代表から2トライを奪った34歳のFB山中亮平

 1週間前の豊田スタジアムでは23−42で敗戦。日本代表はキャプテンに選ばれたHO(フッカー)坂手淳史(埼玉ワイルドナイツ)を中心に「勝って特別な日にしよう」とチーム一丸となり、今夏のシリーズ最終戦に挑んだ。

 前半こそ15−7とリードしたが、後半はミスが多発。結果、15−20で逆転負けを喫した。

 ホームでの試合であり、チャンスは何度もあっただけに、勝たなければならなかった。ジェイミー・ジョセフHCも「選手たちがよく頑張り、勝利にふさわしいチームだと思うが(白星を)逃したことは残念。ビールを何本か飲まないと、この気持ちは収まりません」と悔しさを露わにした。

 今夏のシリーズでは、選手層を厚くするため若手や国際経験のない選手を積極的に起用した。それでも強豪相手に"勝つ流れ"にもっていけたのは、指揮官が「シニアプレイヤー」と呼ぶベテランの力が大きかった。

 それをフランス戦で見せつけたのが、ともに昭和63年(1988年)生まれのFB(フルバック)山中亮平(神戸スティーラーズ)とFL(フランカー)リーチ マイケル(ブレイブルーパス東京)だ。

 特に前半、出色の出来栄えだったのは山中だ。神戸の後輩でもある21歳のSO(スタンドオフ)李承信とともにキックとランでゲームを組み立てた。「先週はあまりキックを使わずアタックでボールを動かすプランだったが、今週はアタックに勢いが出なかった時にキックを蹴るというバランスがよかった」と胸を張る。

36歳の堀江翔太も大絶賛

 山中は前半12分、前半40分にカウンターから2トライも挙げて、スタンドを埋め尽くした5万7千人のファンを大いに沸かせた。

「(宮崎合宿から)練習でやってきました。(キック)カウンターからどんどんアタックするプランでした。(ふたつのトライとも)外のプレーヤーがしっかりとボールをつなぎ、サポートしていたところにラストパスが来た。チームで取れたトライです。会場との一体感が出た」

 一方、ワールドカップでキャプテンを2度務めたリーチも健在だった。山中のふたつ目のトライでは、ライン際で得意のランを見せてアシストするだけでなく、ラインアウトや接点でも力強いプレーを繰り返した。

「相手の力強いプレー、モール、スクラムの強さを再び感じた試合になった。いい準備をやってきて、強豪相手に惜しいところまでいったのに負けたのは悔しい。前半のトライは日本の理想とする形だったので、チームの自信になった」(リーチ)

 ベテランふたりの活躍に、チーム最年長36歳のHO堀江翔太(埼玉ワイルドナイツ)も目を細めた。

「山ちゃん(山中)は34歳。僕が2019年の時の年齢、いい時期じゃないですかね! リーチも自分にプレッシャーをかけて、頑張らなあかんと必死にやっていますね!」

 それだけに、後半の出来は実にもったいない。何度もチャンスを作ったが、2019年ワールドカップを経験していない選手たちを中心にノックオンなどミスが多発。キャップ数の少ない選手の連携不足、強豪とのテストマッチ経験の足らなさが響き、金星を逃す結果となった。

 ベテランふたりも、後半のミスを嘆いていた。

「(後半は)簡単なミスでボールがつながらず悔しかった。ボールが滑ったのかな。自分はそういう感じではなかったが、流れが変わることもあるのでミスをなくしていきたい」(山中)

「暑くて疲れのたまりやすい試合だったが、3フェーズ以上のアタックシーンがそんなになかった。連続攻撃できなかったのが(負けた)ひとつの要因。接点でプレッシャーを受けたが、5フェーズ攻撃を継続できればスペースができるので、そこまで持っていきたかった」(リーチ)

W杯ベスト4に欠かせぬ昭和男

 ただ一方、ふたりは収穫も口にする。

 山中は神戸の後輩SO李と早稲田大の後輩SH(スクラムハーフ)齋藤直人(東京サンゴリアス)について、「堂々としていて、ゲームコントロールもできていて、安心感がありました。特に21歳の(李)承信は冷静で落ち着いてプレーしている。僕の21歳の頃と比べたらすごい!」と語気を強めた。

 リーチは「この夏のシリーズでは、新しい選手にテストマッチの経験をさせた。新しいキャプテン(坂手)の下、新しいリーダーグループで戦ったことは(今後に向けて)いい財産になる。前の日本代表のように『(負けたけど)いい試合』で終わる悪い癖をつけないようにしたい」と先を見据える。

 2023年ワールドカップはさらに年齢を重ねて迎えるふたりだが、まだまだ若い選手に負けない存在感を発揮している。ジョセフHCは「若い選手たちが試合に出て、経験のある選手もいるなか、バランスが取れたチームができてきた」と満足げな表情を見せた。

「年齢は関係ないし、あまり気にしていない。今が一番調子もいいですし、自分としての役割も果たせた」(山中)

「元気になってきました! 足、腰、ひざ、(2019年W杯前に負傷した)股関節もよくなってきた。まだまだ6番としてインパクトを残さないといけない。勝ちたいという思いだけ!」(リーチ)

 2023年ワールドカップで前回大会を上回るベスト4以上を達成するには、若手の台頭だけでなく、"昭和男"の活躍も必要不可欠だ。