(写真:六川 則夫) 前半だけで4度、5度とあった好機を、日本は生かせなかった。球際やスプリントといった部分で、相手はアフリカ人特有の身体能力の高さを押し出してきた。しかし、敵と敵の間でパスを受ける、細かいステップで前を向いてしかける、複数…


(写真:六川 則夫)

 前半だけで4度、5度とあった好機を、日本は生かせなかった。球際やスプリントといった部分で、相手はアフリカ人特有の身体能力の高さを押し出してきた。しかし、敵と敵の間でパスを受ける、細かいステップで前を向いてしかける、複数の連係で敵陣を突き崩す。そうした技術とアイディアあふれる攻撃を、日本は世界大会の初戦から体現できていた。
 だからこそ、序盤の時間帯が悔やまれた。「初戦なので、どうしても硬くなってしまう部分も出てくる」(三好康児)と、選手たちもある程度の緊張感を想定していたが、それが現実となった。特に守備陣が南アフリカの縦一本の攻撃に耐え切れず、その流れから7分に失点を喫してしまった。普段では考えられないミスが出る。幾度となく構築したチャンスを決められない。完全に国際舞台での負けパターンだった。
 そんなイヤなムードをエースがかき消した。48分、複数の選手の連係で左サイドを崩すと、岩崎悠人の折り返しを小川航基が左足でゴールに押し込んだ。前半、完全にフリーで放ったヘディングを外していた背番号9。泥臭く決めた意地の一発だった。
 そして59分、ついに久保建英が登場する。小川と並んで2トップの位置に入ると、いきなりファーストプレーで小川に鋭いスルーパス。日本の勢いを加速させると、72分に試合が再び動いた。
 途中交代で入っていた遠藤渓太からパスを受けた堂安律が前方にパス。ペナルティーエリア内で受けた久保が左足ダイレクトで相手DFの裏をかいたマイナスボールを中央に送ると、走り込んできた堂安が左足でゴールネットを揺らした。今大会の日本が誇る二人の天才レフティー。ゴール後、ガッツポーズの堂安に歓喜を爆発させて飛びついた久保。大会を勝ち抜くために不可欠な才能がいきなり開花した。
 その後のピンチにも、徐々に安定感と剛健さが増していった冨安健洋率いる守備陣が体を張り、ゴールを許さず。必勝を誓って迎えた初戦。韓国・水原で、若き日本代表は力強く勝ちどきをあげた。

文・西川 結城