資生堂レディス最終日 女子ゴルフの国内ツアーの資生堂レディス最終日が3日、神奈川・戸塚CC(6570ヤード、パー72)で行われ、単独首位で出た青木瀬令奈(フリー)が6バーディー、3ボギーの69で回って通算14アンダーで優勝した。大会記録を2…

資生堂レディス最終日

 女子ゴルフの国内ツアーの資生堂レディス最終日が3日、神奈川・戸塚CC(6570ヤード、パー72)で行われ、単独首位で出た青木瀬令奈(フリー)が6バーディー、3ボギーの69で回って通算14アンダーで優勝した。大会記録を2打更新し、昨年6月の宮里藍サントリーレディス以来、約1年1か月ぶりのツアー通算3勝目。2015年から青木を支えてきた大西翔太コーチも、「1年前からは引退も考えていたのに」と回顧。青木は会見でコーチへの感謝の思いを口にした。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 青木が表彰式でスピーチしていた時、大西コーチが青木の「魂の一打」を振り返った。

「連続ボギーでスタートした後、3番の第2打とバーディーには魂がこもっていましたね。この1年、テーマにしてきたことが出せたと思います」

 文字通り、起死回生の一打。青木はそこから本来のリズムを取り戻した。10番パー4から勝負をたぐり寄せる3連続バーディー。大西コーチは「ここでも気持ちが入っていました。まさに魂を入れたショットが続きました。彼女が真剣にゴルフに向き合ってきた成果です」と表現した。

 昨年4月、調子が上がらない青木が、ふと弱音を吐いたという。

「食事をしていた時、『引退』という言葉を口にしたので驚きました。僕は『持っているアプローチとパットの技術を軸に、やれる限りやるべきだ』と伝え、ゴルフについて考えていることをノートにつけるように勧めました」

 その後も話し合いを続け、青木は大西コーチの「練習量ではなく、ゴルフにどれだけ向き合うかだ」の言葉に心を打たれ、同6月の宮里藍サントリーレディス第2日から、「懺悔ノート」を付け始めた。同大会でツアー2勝目。満足はせず、「また勝ちたい」の思いで好きなゲーム、漫画を断った。コースを離れてもゴルフのことを考え、「懺悔ノート」は6冊目に入ったという。大西コーチも自身を磨き続けた。

「大谷翔平選手が目標達成シートを書いてこられたことは有名ですが、ああいうのがお手本で、書いて考えを整理することが大事なんです。僕自身も書いていますし、よりよいコーチングをするために、栄養士やトレーナーの資格も取ってきました」

コーチとの信頼関係を語る青木「もう8年目。ものすごく勉強をされている」

 青木も会見で「もう8年目ですけど、ものすごく勉強をされていて、いいものを私に伝えてくれています」とコーチへの感謝を口にした。青木自身もコーチに依存するだけでなく、あらゆる工夫を続けている。

「私は練習では敢えて本番でやらないことをしています。今大会は、ティーを低くしてドライバーを打っていましたが、練習場ではハイティーにしてアッパーのスイングでショットしていました。パターも練習ではエースを使わず、本番だけにしています。練習で悪いものを出して、本番が良ければいい。それが私のスタイルと分かってきました」

 その上で、2人は「飛距離は出なくも勝てる」の思いで一致。大西コーチは「3ウッドでも、5ウッドでも、彼女はコントロールして、バーディーチャンスにつけらます」と言い、「すぐに4勝目、5勝目もいけます」と断言した。

 青木は選手から信頼され、2020年からは選手会長に相当するプレーヤーズ委員長を務めている。大西コーチは「責任ある立場を任されることで、選手は気持ちの面でさらに強くなります。これからもやってほしいです」と言った。深い信頼関係にある選手とコーチ。2人のサクセスストーリーは、まだ道の途中だ。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)