新進気鋭のハーフ団が、代表の舞台でポテンシャルを披露した。 6月25日、ラグビー日本代表(世界ランク10位)は「リポビタンDチャレンジカップ2022」でウルグアイ代表(同19位)と対戦。結果、日本代表は6トライを挙げてウルグアイ代表に43…

 新進気鋭のハーフ団が、代表の舞台でポテンシャルを披露した。

 6月25日、ラグビー日本代表(世界ランク10位)は「リポビタンDチャレンジカップ2022」でウルグアイ代表(同19位)と対戦。結果、日本代表は6トライを挙げてウルグアイ代表に43−7で快勝した。

 6月11日のトンガサムライフィフティーン戦と6月18日のウルグアイ戦は、日本代表予備軍(NDS=ナショナル・ディベロップメント・スコッド)によって編成された「セカンドチーム」が出場。だが、この試合は宮崎で合宿していた「ファーストチーム」で挑み、実力の違いを見せつけた。

 ジェイミー・ジョセフHCは「我々にとってはいいスタートだったと思います。新しい選手たちは本当にいいパフォーマンスをしてくれました。テストマッチという舞台のなかで、彼らの戦い方はすばらしかった。満足しています」と頬を緩めた。



積極的な動きでアタックを牽引したSO山沢拓也

 一軍の司令塔としてゲームをコントロールする9番のSH(スクラムハーフ)と10番SO(スタンドオフ)。桜のジャージーでそれを背負ったのは、7キャップ目のSH齋藤直人(東京サンゴリアス)と4キャップ目のSO山沢拓也(埼玉ワイルドナイツ)だ。

 2019年ワールドカップ組のSH流大(ながれ・ゆたか/東京サンゴリアス)とSO松田力也(埼玉ワイルドナイツ)がコンディション不良とケガの影響で代表活動に参加できず、齋藤と山沢に好機が回ってきた。テストマッチでコンビを組むのは初めてで、齋藤が9番、山沢が10番を背負って先発するのはそれぞれ2試合目。

 試合前から日本代表は「試合の入りを意識していた」という。FB(フルバック)野口竜司(埼玉ワイルドナイツ)のハイパントキックを武器に、自分たちからアンストラクチャー(陣形が整っていない状態)を積極的に作り、ウルグアイ代表から試合の主導権を奪いにいった。

代表に定着しつつある齋藤

 齋藤は昨年7月のアイルランド代表戦以来の先発。「周りを気にせずに自分を信じてプレーする」との言葉どおり、素早いラン、フィットネス、ボールさばきで序盤からテンポを作った。

「(山沢をはじめとする3人の日本代表SOとは)たくさんコミュニケーションを取ってうまくやれています。モメンタム(勢い)があるかないかで、9番と10番がアタックかキックを判断するので、チームをドライブさせるためにも戦術を理解することが大事だと思っています」

 24歳ながら経験豊富な齋藤は、鋭い眼光で常に周囲を観察しながらアタックを引っ張った。

「相手に強みを出させない、そして自分たちの強みを出す、というプランを遂行することを一番フォーカスした。トランジション(ディフェンスからアタックの切り替え)でしっかりボールを動かすところや、こういった(雨上がりの)天候のなかでもしっかり攻められたところがよかった」

 齋藤はこの1年ですっかり代表に定着した感がある。相手の隙を見つければランで仕掛けたり、グラバーキックを蹴ったりするなど、成長の跡を見せた。

「9番もひとつのオプションになる、相手にとって脅威になるというのは、昨年の遠征から(コーチ陣に)言われていて、そのあたりも意識しながらこの半年間やってきた」

 一方、昨季リーグワン準決勝・決勝でのプレーが評価されて5年ぶりの日本代表戦となった山沢は「早く声かけをして、チーム全体が迷いなくプレーできるようにしたい」との言葉どおり、序盤は味方をしっかりと使ってゲームに安定感をもたらした。

「自分のやるべき仕事はそれなりにできた。エリアマネジメントをとって敵陣でプレーし続けることを一番フォーカスし、いいキッカーがたくさんいるので彼らと連係しながらプランを遂行できたと思います。自陣に釘づけになってしまう部分もあったが、基本的には敵陣でプレーすることができ、失点を少なく抑えられたところはよかった」

徐々に本領を発揮した山沢

 リードして試合が落ち着いてくると、山沢の本領はさらに発揮された。50メートル近いPGを決めたり、大外にいたWTB(ウイング)シオサイア・フィフィタ(花園ライナーズ)にキックパスを通したり、左足のアウトサイドキックで横回転をかけてタッチキックを蹴ったりなど、"山沢らしさ"を披露。

 齋藤と初めてハーフ団を組んでみた感想について、山沢はこう振り返る。

「すごくやりやすかった。齋藤も自分の声を待つだけでなく、自分の感覚や判断でプレーすることもやっていたので、チームコントロールもFWの人たちをリードできていたと思う。お互い助け合いながら、という点はよかった」

 指揮官であるジョセフHCにも、新ハーフ団の評価を聞いてみた。すると開口一番、まずは「彼らはすごく大きな可能性がある」と賞賛の言葉を述べた。

 齋藤について。「すごくコントロールすることができたと思っています。ラインアウトなどプレッシャーがかかってくるなか、難しいボールでもうまくさばいていた部分もあった。フィットネスもタフだし、すごく素早い動きを見せてくれてよかった」。

 続いて山沢について。「最初の試合としてはよかったかなと思います。もっと経験をたくさん積んでもらいたい。経験を積むことでもっといい選手になってくるし、これからもジャパンのジャージーを着てもっと試合に出ることで成長していくんじゃないか」。

 今回、スキルとスピードのあるふたりを先発で起用したことは、ジョセフHCが常に「(体の大きな海外の強豪に対して)小さい体を活かし、日本の強みとしてスピードを活かしていかないといけない」と話す言葉とも重なる。

 1年3カ月後に控える2023年ワールドカップで日本代表は、スピード、フィットネス、そしてアンストラクチャーからのアタックを武器に戦う方向なのは間違いない。そのタクトを握る存在として、SH齋藤、SO山沢の新たなハーフ団は今回のテストマッチでも通用することを証明した。