レスター・シティの岡崎慎司が、またしても前半の45分間だけで交代を命じられた。 5月18日に行なわれたトッテナム・ホットスパー戦でプレミアリーグ4試合連続となる先発出場を果たすも、チームが2点リードされて迎えたハーフタイムで退いた。代…

 レスター・シティの岡崎慎司が、またしても前半の45分間だけで交代を命じられた。

 5月18日に行なわれたトッテナム・ホットスパー戦でプレミアリーグ4試合連続となる先発出場を果たすも、チームが2点リードされて迎えたハーフタイムで退いた。代わりに投入されたのはFWのイスラム・スリマニ。だからといって、レスターはまったくと言っていいほど試合の流れを変えられず、最終的に1−6の大敗を喫した。



先発した岡崎慎司はまたもハーフタイムでの交代となった 6失点は今季最多で、内容もトッテナムに試合の主導権を完全に握られたうえでの惨敗であった。「後手に回ると、レスターは厳しい。しかも、相手はリーグトップクラス。すごいやられっぷりだった」と、岡崎も肩を落とした。

 試合序盤から、トッテナムは気持ちよくパスを回した。レスターは前方からプレスをかけようとするも、トッテナムはその圧力をうまくかわしていく。こうなると、レスターとしては厳しい。プレスは空回りし、得意のショートカウンターも発動できなかった。

 そして、劣勢のチームのなかで埋没するように、岡崎も存在感を示せずにいた。しかし、パフォーマンスがふるわなかったのは、レスターの選手全員にも言えたことである。にもかかわらず、真っ先に交代を命じられたのが岡崎だった。

 前半だけで交代するのは今季7度目。前節のマンチェスター・シティ戦で敵将ジョゼップ・グアルディオラ監督に「規格外のゴール」と褒められ、クレイグ・シェイクスピア監督も「岡崎のクオリティは、あのゴールで証明された」と語っていた直後の試合であったが、これまでとシナリオは変わらなかった。

 岡崎は思いの丈を口にする。

「前の試合で点を獲ったから、気持ちとしては自分の可能性にかけてほしかった。だけど結局、自分の立ち位置は変わらないわけじゃないですか。監督がそうやって褒めていたとしても、『シンジはあのゴールを決めているから、次の試合でも期待したい』とはならない。そういう意味では、(前半だけで交代させられることも)固定のシナリオというか。ちょっとやそっとじゃ、今の立ち位置は動かない。そう考えたくはないが、自分としても『もう代わるだろうな』と思ったし、0−2になった時点で『ああ、今日は45分しかないな』と考えてしまう。

 0−1で折り返していたとしても、自分が代えられていたと思うんですよ。本当に難しい立ち位置で勝負している。一方で1試合に1回、来るか来ないかというラストパスを待ち続けている。ただ、『そこを決めればなぁ』となっても、なかなか(難しい)」

 岡崎は、レスターの戦術上のキーマンである。前線からプレスをかけ、ボールを奪ってすばやく前線につなげる。岡崎の動きがレスターのストロングポイントに直結しているといっても過言ではない。しかし、ひとたびチームが機能しなくなると、岡崎に代えて違う選手を投入する。キーマンであるがゆえ、システムを変更するときに迷うことなく交代を命じられてしまう。

 こうした一連の流れは今シーズンのみならず、昨シーズンから何度も、何度も繰り返されてきたことである。ただ今回は、前節マンチェスター・C戦でゴールを決めた直後の試合だ。それだけに、岡崎も「やり切れなさ」と「難しさ」を強く感じていた。

「シェイクスピア監督が指揮を執り始めて、自分が重要だと思って使ってくれるようになった。でも、チームの歯車が噛み合わなくなると、『そのピースは必要じゃない』と判断されてしまう。だから自分も『なにしているん、俺?』となってしまう。チームの出来に影響されるのが今の立ち位置。これをこのまま続けていっていいものなのか。そこに満足してしまうと、『このまま”レスターの岡崎”で終わってしまうのではないか?』という不安に駆られる。

 前線からプレッシャーをかけていくことも、それをするにはまず、マインドをチームに合わせることが必要。点を獲りたいですけど、そうした気持ちを全部隠して、チームプレーに徹しないとできない。

 でも、点を獲った後の試合は、『(前線で)待っていたら点を獲れるのではないか?』と思ってしまう。だけど、『ちょっとここは(守備に)戻らないでおこう』ってやると、やっぱり相手にやられてしまうんですよね。そう考えてしまう……。レスターで戦うんだったら、僕はそこから逃げられない。考えたくないですけど、考えさせられてしまうというか」

 レスターでの役割を言い表せば、「ディフェンシブ・フォワード」である。最前線にいるFWジェイミー・バーディーを後方で支え、中盤の守備でもチームを助ける。しかし、日本代表FWのマインドはストライカーである。「マンチェスター・C戦のようなゴールを決めると、『やっぱ自分の可能性を信じなければ』という気持ちになる。やっぱり、そこで勝負しないと」と語るように、ゴールへの飽くなき探究心も忘れていない。そこに、大きなジレンマがある。

「今の立ち位置を変えるには、『何試合もゴールを決める』、もしくは『定期的にゴールを決める』。1シーズンで10ゴール以上獲ったときに何か変わるかもしれないですけど、それはすっごいハードルが高いですよね。もちろん、それを追い求めるために来ましたけど、モチベーションをそのまま保てるかと言ったら、なかなか難しいもので……。どこかでストレスが溜まるし、動けなくなる瞬間もある。

 でも、決定機を外してしまったときは、やっぱり自分の責任だと思って、またモチベーションが蘇ってくる。そして、ゴール決めて……。それの繰り返しをしてきた。ただ、いつになったら……と思うときがある」

 献身的な動きでチームを支えなければという責任感と、ストライカーとしてゴールを獲りたいという強い気持ち。ゴールを決めた直後の試合を45分間だけで終えてしまうやり切れなさと、ストライカーとして自分の可能性にかけてほしいという欲求――。

 さまざまな思いに揺れたトッテナム戦であった。