“自分らしく輝く”。すごく素敵なことだけど、実は結構難しいと感じることもあります。自分が一番いきいきとしながら、輝けることを見つけるためにはどうすればいいのでしょうか? そんな疑問に今回答えてくれたのが、パラアスリートの谷真海さん。20歳の…

“自分らしく輝く”。すごく素敵なことだけど、実は結構難しいと感じることもあります。自分が一番いきいきとしながら、輝けることを見つけるためにはどうすればいいのでしょうか? そんな疑問に今回答えてくれたのが、パラアスリートの谷真海さん。20歳のときに義足になったことが、自分と向き合い、チャレンジを続けるきっかけとなりました。現在は、パラアスリートとしてのみならず、NHKのスポーツ情報番組「サンデースポーツ」のメンバーとしてアスリートに取材するなど幅広く活躍しています。そんな谷さんに自分らしく輝くための秘訣をインタビュー!

常識を打ち破る強い気持ちを。チャレンジすることで個性は磨かれる

パラアスリートに関しては、我が道を行くタイプの人が多いと思いますね。今はパラリンピックを取り巻く環境もよくなってきていますが、昔から競技をやっている人は、本当に手探り状態の中でチャレンジをしてきています。私自身もそうですけど、失敗を恐れずに、思い切って世界に飛び出していく、誰かがやっていたからという理由ではなくて、自分がこうしたいという気持ちを行動に移していく。そういう強さがあるのかなと思いますね。

そうですね。今は全ての人にとって人生の選択は多様になってきていますが、これまでアスリートはこうあるべきみたいな風潮があって、その幅が狭かった。でもこれからはそうではなくて、自分の心の声を聞いて行動に移していく、やりたいからやるということを多くの人が大事にしてほしいと思います。

人生が180度変わった20歳の出来事。谷さんの殻を破る原動力となったものとは
東京2020パラリンピックではトライアスロンに出場。笑顔でゴールテープを切りました photo by Takashi Okui

”自分らしさ”ということについて考えたタイミングは、20歳のときに病気で足を切断し、義足になったときですね。目標を持って一生懸命になるということや、常に心から笑顔で笑っている自分とか、そういったものを一旦、全部失ってしまったと感じたときに、”自分らしさ”とはなんだろうとすごく考えたんです。そして考え抜いた結果、せっかく命が救われたのだから、もう一度前向きに楽しく生きていきたいと思いました。私の場合は競技を始めたことで、自分の殻を破れたと思います。もう一度自分らしさを取り戻せた、という経験になりましたね。

パラリンピックの存在はすごく大きかったです。世界中から集まるパラリンピアンたちにいい意味で圧倒されて、自分自身も全てを運命として受け入れて、今あるものを輝かせていこうという生き方に変わったのが大きいですね。そこから挑戦し続けて20年が経って、人生の半分になった。それが自分の生き方になった。その中でスポーツが欠かせなかったということです。この先もどういう形になるか分からないですが、スポーツそのものは続けていきたいし、スポーツの力を信じていきたいですね。

多様な生き方を認め合う時代へ。3万いいねがついたTwitterの投稿

https://twitter.com/mami_sato/status/1432301750392737796

東京パラリンピック開催中の2021年8月30日、谷さんの公式Twitterで大きな反響を呼んだ投稿。「オリンピックに出場した海外選手が同じような構図の写真を撮っているのを見て、私も撮影したいと思い、選手村を出る直前にトライアスロンのメンバーみんなで撮影しました」

パラリンピックを通して競技の迫力、選手たちが限界にチャレンジする姿を伝えたいという想いももちろんありましたが、その延長線上で、それぞれの生き方があるということをいろいろな人に知っていただきたいという想いもありました。日本のパラトライアスロンチームのメンバーのなかにも、様々な障がいの選手がいます。車いすだったり、義足や腕がなかったり、目に見える違いがあるパラアスリートだからこそ伝わりやすく、パラリンピックというものを象徴しているような写真であったのかなと思います。「みんなちがって、みんないい」というメッセージは、金子みすゞさんの詩をお借りしたのですが、この写真を一言で伝えるなら、この言葉がピッタリだなと。ちょうど東京パラリンピックの期間中だったので、パラアスリートに対してみなさんが何かしら感じてくださっていたタイミングとばっちり重なって反響を呼んだのだと思います。

実際、多様性という言葉だけではなかなか伝わりにくいですよね。ダイバーシティ&インクルージョンが目指す先にあるのは分かりながらも、現実として捉えられない人も多いと思うのですが、スポーツがその壁を取っ払ってくれる存在なのかなと。例えばイベントに障がいのある人が来ますという紹介だと、どうしても心配になったり、大変そう、かわいそうという気持ちになってしまいがちだと思うんです。でもスポーツを通して実際に体を動かすと、子どもたちが興味を持って目の色が変わっていくのが分かる。スポーツから入ると、それまで持っていた意識を変えやすい。だからこそ子どもたちが、もっとパラスポーツに触れられる機会が増えればいいなと思っています。

パラスポーツ自体が、人と比べず、自分の心を大切にしながら行動を起こしていくことを大事にしています。パラアスリート=チャレンジという側面もあるので、パラスポーツ、パラアスリートに触れることで子どもたちも何かあったときに諦めない心やチャレンジする心を育んでもらいながら、自分の良さを引き出すクセをつけていってもらえると嬉しいですね!

自身の体験を通して、いろいろな質問に答えてくれた谷さん。自分の心の動きに正直に、様々なことにチャレンジを続けること。それが自分らしさを表現することになり、人生をより豊かなものにすることを教えてくれました。また、自分らしくいることが、多様性と調和の世の中を実現する鍵となる。それを自身の行動で証明し続ける谷さんの活動に今後も注目です。

https://www.parasapo.tokyo/topics/100801

https://www.parasapo.tokyo/topics/26157

20歳のときに骨肉腫で右脚膝下を切断し、パラリンピック出場を新たな目標に陸上競技を始める。走り幅跳びとトライアスロンでパラリンピックに4大会出場。2013年にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)総会で、東京2020大会招致メンバーの最終プレゼンテーションに立ち、東京大会の招致に大きく貢献した。東京2020パラリンピックでは日本代表選手団の旗手を務める。現在はサントリーホールディングス株式会社に所属。他にも様々な媒体でのインタビューや、「紅白歌合戦」に審査員として参加するなど、パラスポーツ・パラアスリートの地位向上を目指し、精力的に発信し続けている。

text by Jun Nakazawa