熊野地域を舞台に展開される国際レース「ツール・ド・熊野」は5月28日に大会2日目を迎えた。和歌山県新宮市で行われた第1ステージから、三重県熊野市へと舞台を移し、第2ステージは、丸山千枚田や札立峠を上る大会名物の熊野山岳コースで競われる。ツー…

熊野地域を舞台に展開される国際レース「ツール・ド・熊野」は5月28日に大会2日目を迎えた。和歌山県新宮市で行われた第1ステージから、三重県熊野市へと舞台を移し、第2ステージは、丸山千枚田や札立峠を上る大会名物の熊野山岳コースで競われる。

ツール・ド・熊野2022の第1ステージレポートはこちら



ツール・ド・熊野名物の丸山千枚田を駆け上がる集団

第2ステージは日本屈指の美しくも厳しい山岳コース。いくつかの登坂には山岳賞が設定されており、その登坂の難度に合わせ、上位通過に獲得ポイントが割り振られている。この日のステージでは日本の棚田百選にも選ばれている丸山千枚田を2回上るが、この千枚田は2級山岳に、今大会最大の難所である札立峠は1級山岳に設定されている。この3つを越えたのち、最後のフィニッシュへと向かう上りも3級山岳に設定され、まさにクライマーのための1日といえる。走行距離は104.5km。非常にタフなレースになるだろう。



各賞の首位の選手たちがリーダージャージ姿で先頭に並ぶ

朝10時、スタートする。昨日のステージで優勝した窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)が個人総合成績首位の証、イエロージャージを着用してスタートラインについた。ポイント賞も窪木が獲得しているが、繰り上げで次点のネイサン・アール(チーム右京)がグリーンジャージを着用して走る。山岳賞首位のレッドジャージは、中井唯晶(シマノレーシング)が、U23首位のホワイトジャージは香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム)が獲得している。



20名の先頭集団が形成された。中には多くの有力選手を含み、逃げ切りの可能性も大きい力のある集団だ

リアルスタートと同時に、いくつものアタックがかかったなか、10km過ぎに20人が抜け出して先頭グループを形成した。ほぼすべての主要チームは、この中にメンバーを送り込んでおり、中には有力選手も多く含まれていた。
自転車ロードレースでは、集団は先頭の選手が受ける空気抵抗を交代することで分担しながら進む。大集団と小集団の差は、人数が少ない場合、その空気抵抗を分散しきれず、疲労が早いことにある。だが、この山岳ステージでは、空気抵抗が問題にならないほど厳しい登坂が多く、今回の先頭集団は人数も多い。うまく協調しあえば、逃げ切りの可能性も小さくはないといえる展開だ。



一定の差を保ったまま走るメイン集団

先頭集団は、ペースを上げ、メイン集団から距離を開いていく。タイム差が3分以上に開いた状態で、1回目の丸山千枚田に差し掛かった。一つ目の山岳賞はエンクタイヴァン・ボロー・エルデン(MGL)が1位、山本大喜(キナンレーシングチーム)が2位通過。先頭集団が先行した状態のまま、レースは1級山岳の札立峠に向かう。



熊野地域の山岳を走る先頭集団

札立峠の上りは約6km。ここでレース全体に動きが出た。先頭グループから数人が脱落し、代わってメイン集団からネイサン・アールとベンジャミン・ダイボール(チーム右京)、さらにはトマ・ルバ(キナンレーシングチーム)、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、小林海(マトリックスパワータグ)ら、本命の実力者たちが追走を始めた。



山岳賞に向け、積極的な走りを見せた山本大喜(キナンレーシングチーム)

2回目の山岳ポイント、札立峠も、山本大喜が1位通過。1級山岳の先行通過で10ポイントを獲得し、山岳賞のバーチャルリーダーに名乗りをあげた。頂上通過後の下りで追走集団は差を縮め、やがて先頭グループへと合流をはたした。先頭グループは、さらに実力者たちの集団となり、勢いを増すこととなる。



山岳コースを走る選手

約20人の形勢を保ったまま、2回目の丸山千枚田へと向かう。



先頭集団の先頭に立ち、ペースアップするベンジャミン・ダイボール(チーム右京)

この上り始めでダイボールが独走を図った。抜け出すことはできなかったが、ペースの上げ下げで揺さぶられた集団は脱落者が出て、集団は9名のみに絞られた。2回目の千枚田の山岳賞は、アール、山本大喜の順に通過。山本はここまでで山岳賞ポイントを20確保し、山岳賞を確実なものにした。



トマ・ルバらが抜け出しを図る

頂上通過後の下り以降、集団は勝ちを狙う選手たちがアタックを試みるが決定打には至らない。勝負はそのままフィニッシュへ向かう登坂でのスプリントにゆだねられることに。



先頭集団では、フィニッシュに向け、牽制が始まった

牽制が入り、先頭9名は急激にスピードダウン。お互いの動きに神経を尖らせての走行が続く。このペースダウンを受け、遅れていたメンバーの中から、松田祥位(チームブリヂストンサイクリング )とホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が追いついてしまった。マトリックスはさらにメンバーを増やし、有利な状況に。これまで守られてきたレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)がフィニッシュに向け、前方にせせり出てきた。



スプリントで他を寄せ付けぬままガッツポーズでフィニッシュに飛び込んだレオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)

スプリント勝負となるが、他の選手を寄せ付けぬまま、キンテロが一番にフィニッシュラインに飛び込んだ。ツール・ド・熊野初出場にして、初めての勝利をあげた。2位にはアールが入った。前日のステージ2位で得たボーナスタイム6秒が生き、個人総合時間賞でも首位に浮上した。



上位3名の表彰台。地域の産品が副賞として贈られた

キンテロは表彰台で「優勝出来て本当に嬉しい」と喜びを語った。チームメイトやスタッフへの感謝とともに、母国であるベネズエラにいる、ここまで支えてくれている家族や友人達にも感謝の思いを述べた。
各賞リーダーの行方には、大きく変動があった。ポイント賞は前日優勝した窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)が守ったが、山岳賞は山本大喜(キナンレーシングチーム)がトップに立った。U23首位のヤングライダー賞は湯浅博貴(ヴィクトワール広島)が獲得し、チーム総合首位にはマトリックスパワータグが浮上している。



ネイサン・アール(チーム右京)が個人総合首位のイエロージャージを獲得した



山岳賞首位を獲得した山本大喜(キナンレーシングチーム)。ジャージにはツール・ド・フランス同様、赤ドットが描かれている



U23首位のホワイトジャージを獲得した湯浅博貴(ヴィクトワール広島)

第3ステージは、和歌山県太地町で開催される。翌日のステージにコマを進められるのは、77名。これが最終ステージとなり、総合優勝者が確定する。個人総合成績で上位8名のタイム差は10秒以内。1分以内にも、10名の選手が控えており、まだ十分挽回の可能性が残っている。
これまでの2ステージで結果を残せなかったチームも、順位を守りたいチームも、決死で挑む、熱い戦いが期待された__。

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【結果】ツール・ド・熊野2022第2ステージ(104.5km)
1位/レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)2時間38分50秒
2位/ネイサン・アール(チーム右京)+0秒
3位/小林海(マトリックスパワータグ)
4位/松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)
5位/山本大喜(KINAN Racing Team)

【個人総合時間賞】
1位/ネイサン・アール(チーム右京)5時間10分01秒
2位/小林海(マトリックスパワータグ)+5秒
3位/レオネル・キンテロ(マトリックスパワータグ)+6秒
4位/山本大喜(KINAN Racing Team)
5位/増田成幸(宇都宮ブリッツェン)

【ポイント賞(グリーンジャージ)】
窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)25pts

【山岳賞(レッド[赤ドット]ジャージ)】
山本大喜(KINAN Racing Team)20pts

【ヤングライダー賞(ホワイトジャージ)】
湯浅博貴(ヴィクトワール広島)5時間12分35秒

【チーム総合】
マトリックスパワータグ 15時間30分25秒

画像:©︎TOUR de KUMANO 2022