左足に感覚がない状態でプレーしていたと語ったナダル現地6月5日、「全仏オープン」男子シングルス決勝で勝利し、大会最多14度目のタイトル、そして男子では自身の記録を更新する史上最多22度目のグランドス…

左足に感覚がない状態でプレーしていたと語ったナダル

現地6月5日、「全仏オープン」男子シングルス決勝で勝利し、大会最多14度目のタイトル、そして男子では自身の記録を更新する史上最多22度目のグランドスラム制覇を達成した第5シードのラファエル・ナダル(スペイン/世界ランク4位)。試合後の記者会見では、「この2週間は、極限の状態でプレーしていたんだ。足の神経に注射をしていたため、2週間プレーできた」と明かし、左足に感覚がない状態でプレーしていたと語った。

【写真19点】“前人未到の全仏14冠”ナダル全豪オープン写真館

何より驚いたのは左足について。前哨戦の「BNLイタリア国際」(イタリア・ローマ/ATPマスターズ1000)では、左足を引きずりながらプレーをし、3回戦で逆転負け。試合後には「足の怪我は治らないから痛みをコントロールしてプレーする方法を見つけなければならない」「全仏には主治医を連れていく」と語っていた。
「大会中は足のことは話したくなかった。みんなも知っているはずだけど、大会後に話すと言っていた」とナダル。その理由を「自分のテニスに集中したいし、ライバルたちに敬意を払いたいからで、何が起こっているのかをはっきりさせたくなかったんだ」と説明すると、「この2週間は、極限の状態でプレーしていたんだ。足の神経に注射をしていたため、2週間プレーできた。注射のおかげで足の痛みがなくなっていた。でも、同時に感覚が麻痺するため、足首を曲げたり、ほかの動きをすることはリスクも大きかった」と大会中、足に注射をしながらプレーをしていたと打ち明けている。

もちろん、その理由は「私にとって、この大会がどれだけ大事にしているかは知ってのとおりだ。それ(注射)こそ、自分にチャンスを与える唯一の方法だった」と全仏オープンだからこその決断だったと明かしている。また、今大会のあと、足に悪影響を与えている2つの神経を眠らすための治療をやる予定だとも告白している。

気になるのは、治療が効果的でなかった場合について。「テニスのキャリアはこれまでの人生で優先してきたことだけど、人生の幸福より優先したことはない。だから、これからもそうしていくつもりなんだ。もし、今の体でテニスをすることに幸せを感じられるのなら、そうする。そうでないなら、別のことをするよ」と直接的な表現はしていないものの、場合によっては人生の幸福を優先すると、引退の可能性もあると語っている。

22度目のグランドスラム制覇、前人未到の記録だが、「大事なのは歴代最強になることでも、記録でもない。自分がやっていることが好きだということなんだ。テニスをするのが好き、そして、競争が好きなんだ」と優勝回数や記録が重要なのではなくて、愛すべきテニスをすることが重要なんだと語っている。「私にとって、前進し続ける原動力は、一番になろうとする競争や、他の選手より多くのグランドスラムを勝ち取ろうとすることではない。私の原動力は、ゲームに対する情熱、私の中に永遠に残る瞬間を生きること、そして世界最高の観衆と最高のスタジアムの前でプレーすることなんだ」。

ゲームに対する愛情を突きつめたからこその、14度目の全仏制覇。あまりに見事な優勝だった。

以下がナダルの一問一答である。

Q. 22回目のメジャータイトルおめでとうございます。今年の全豪オープン、そして全仏オープンの優勝はご自身でも予想外のものですか?

「ええ。でも、22度の優勝について話す日ではないよ。ローランギャロスについて話す日だ。私にとって、このトロフィーを再び手にすることは、すべてを意味するんだよ。だから、間違いなく、ある意味予想外であり、感動的な勝利だった。そうだね、とても幸せだよ。この2週間、とても良かったと思う。毎日上達しながらプレーしてこられた。決勝でも、いいプレーができたと思うけど? とてもうれしいし、ここに来た初日からサポートしてくれた皆さんに感謝してもしきれないよ。とても感慨深い」


「この2週間は、極限の状態でプレーしていたんだ」

Q.練習試合では、何度もルードと対戦しているそうですが、彼はあなたに勝ったことはありますか?

「覚えていないな。ごめんね(苦笑) 練習(の勝敗)は覚えてない。ただ、キャスパー(ルード/ノルウェー・同8位)は素晴らしい選手だよ。トップのランキングにいて、毎年向上している。昔はクレーコートだけが得意だったけど、今やほかのサーフェスでもタイトルを獲得しているし、大きな大会でもしっかり戦っている。このスポーツは、日々の積み重ねこそが最も重要だし、価値あることなんだ。彼はそれができている。常に向上しようとしている。彼にとって今日がタフな1日だったとしても、この成果を誇りに思っているだろうし、チームも彼のことを誇りに思っていると思う。彼が達成したことは、それだけ大きなことなんだ。もちろん、彼の家族にとっても素晴らしいことだ。我々はお互いをよく理解している。どれほど良い人間なのかってこともね。将来、彼が(グランドスラムの)トロフィーを掲げるのを見るのが楽しみだよ」


Q.ご自身の将来について教えてください。また大会中、足はどれくらい大変だったのでしょうか?

「考え方は変わっていないんだ。前の日も言ったけど、今のような状況でプレーを続けるのは無理だし、このままではいけないと思っている。仕事を続けながら、解決策や改善策を見つけようとしているよ。この2週間については、驚きと感動に満ちたものだった。でも、大会中は足のことは話したくなかった。みんなも知っているはずだけど、大会後に話すと言っていた。言えることは、自分のテニスに集中したいし、ライバルたちに敬意を払いたいからで、何が起こっているのかをはっきりさせたくなかったんだ。この2週間は、極限の状態でプレーしていたんだ。足の神経に注射をしていたため、2週間プレーできた。注射のおかげで足の痛みがなくなっていた。でも、同時に感覚が麻痺するため、足首を曲げたり、ほかの動きをすることはリスクも大きかった。ただ、ローランギャロスは、ローランギャロス。私にとって、この大会がどれだけ大事にしているかは知ってのとおりだ。それ(注射)こそ、自分にチャンスを与える唯一の方法だった。私のテニスのキャリアにおいて、主治医がどんな困難な状況でも僕を助けてくれたことに、いくら感謝してもしきれない。

でも、足が眠ったままでは、競技を続けられないのは明らか。だから、今こそ復帰する時である。私たちは、何が起こっているのか、どんな可能性があるのかについて、何度も話し合ってきた。だから今、足への悪影響を作り出す2つの神経を眠らせることができれば、この感覚をずっと保つ治療ができれば、ということで、来週はそういうことをやる予定だ。いつかはまだわからない。英語でどう説明していいかもわからないが、神経に高周波を注射して、神経を少し焼いて、今あるような衝撃を長期間にわたって神経に与えようというものだ。うまくいけば、(プレーを)続けられる。うまくいかなかったら、また別の話になる。自分に対して、大事な判断をする準備ができているのか、問いかけてみる。例えば、大きな手術をすれば、再び競争力を発揮できる保証はないし、復帰には長い時間がかかるだろう。だから、私のテニス人生がそうだったように、一歩ずつやっていきたい。次のステップで、どうなるかを見てみたい。いつもポジティブに考えているけど、今抱えている痛みを少し取り除くことができるかもしれない。そうしてみて、芝のシーズンを頑張れるのかどうか考えてみたい」


「私の原動力は、ゲームに対する情熱、私の中に永遠に残る瞬間を生きること」

Q.今大会中は何本注射したのでしょうか? また、医師との話し合いによってはウィンブルドン欠場もありえますか?

「ウィンブルドンに出られるような体になっていれば出場するつもりだ。言えるのは、それだけ。ウィンブルドンは欠場したい大会ではない。誰もがそのはずだ。私はウィンブルドンが大好きだ。多くの成功を収められているし、素晴らしい感動も味わっている。だから、大会には十分な賞賛と敬意を表するつもりだ。常にウィンブルドンでプレーしたいと思っている。ただ、出場するのかと聞かれたら、明確な答えは出せない。治療がどうなるのかだね。注射を何本打ったかは話したくない。抗炎症剤もたくさん飲んだし、毎試合前に何本か注射をしなければならなかった」

Q.注射を打ってまでプレーする。それに見合うだけの価値があるのか? と自問することはありますか?

「私がやったことによって、最悪の状況を招かないことは明らかなんだ。ただ、足に感覚がない状態でプレーするリスクはもちろんある。そのリスクを背負ってもプレーはしたかったんだ。でも、この先もずっとそのリスクを背負っていくわけではないよ。うれしいことに、私は優勝できた。将来の次のステップをどうするかは自分で決めるよ。
明確に言えるのは、私が常にほかのものより人生を優先するということ。テニスのキャリアはこれまでの人生で優先してきたことだけど、人生の幸福より優先したことはない。だから、これからもそうしていくつもりなんだ。もし、今の体でテニスをすることに幸せを感じられるのなら、そうする。そうでないなら、別のことをするよ」

Q.あなたにまだモチベーションは残っていますか? 痛みと不安、そしてケガのリスクを乗り越えて、これからも前進し続けるために必要なことは何でしょうか?

「私にとっては非常にシンプルなこと。あなたにとっては、少し違うかもしれないけど。大事なのは歴代最強になることでも、記録でもない。自分がやっていることが好きだということなんだ。テニスをするのが好き、そして、競争が好きなんだ。過去に何度も言ったけど、私とロジャー(フェデラー/スイス)、ノバク(ジョコビッチ/セルビア)は夢を実現した。おそらく自分たちも予想しないことを達成した。私にとって、前進し続ける原動力は、一番になろうとする競争や、他の選手より多くのグランドスラムを勝ち取ろうとすることではない。私の原動力は、ゲームに対する情熱、私の中に永遠に残る瞬間を生きること、そして世界最高の観衆と最高のスタジアムの前でプレーすることなんだ。自分の仕事に対する情熱は、競争しないと味わえないものだ。優勝は多くのタイトルを取ろうとかそういうことではなくて、自分が好きなことをやり続けるチャンスを得るための目標なんだ」


「正直に言うと、自分はそれほど優れているとは思っていない」

Q. あなたは、情熱、夢、感情について話し、多くのことを成し遂げてきました。その成果について、ご自身ではどんな心境なのでしょうか? また、今大会や全豪オープンでチャンピオンシップ・ポイントが決まった時の感覚はどんなものでしょうか?

「確かに驚きは驚きだよ。14度の全仏制覇、22度のグランドスラム制覇、もしあなたがそれをやって驚かないなら、超放漫なんだと思う(笑) 私はそういうタイプではなくて、自分が達成したことだけど、夢にも思っていなかったことなんだ。正直に言うと、自分はそれほど優れているとは思っていない。ただ単に一歩一歩、練習を重ね、常に何かを向上させるという明確な目標を持ち続けてきているだけなんだ。それは、私のテニス人生の中でずっと変わらない考え方。毎回、自分のプレーを常に何かを向上させるという目標を持って、コートに立ち、練習に励んでいる。それ以外の方法で、このスポーツを理解することはできないんだ。

そんな哲学を持ちながら、近くにいる隣にいる素晴らしいチームや家族、友人たちが、テニスのキャリアを通じて私を支える重要な存在になってくれている。私は、テニスの世界だけでなく、あらゆる場面から学んできた。人生という点でもね。すべての経験が、私を常に成長させてくれている」

Q.大会後に受ける治療に効果が出なかった場合、ウィンブルドンに出るために、さらなる治療を考えてますか?

「いや、おそらく私の英語が十分説明できていないのだろう、ごめんね。そんなことはないよ。私にとって、ウィンブルドンは常に優先事項だ。抗炎症剤を使ってプレーできるのなら、イエスだよ。ただ、麻酔注射をしてプレーするのはノーなんだ。もう二度とこんな状況を経験したくない。一度なら大丈夫だろうけど、私の人生観にそぐわない。私は常にポジティブに、物事が正しい方向に進むことを常に期待している。だから、自信を持って、ポジティブに進めていくよ。そしてどうなるかだね」

Q.今日の試合、第2セット、ブレークされて1-3となりました。ここから何が変わったのか、どんな戦術をしたのか教えてください。

「テニスについて聞いてくれてありがとう。私たちはここで、他のことよりもテニスのことを話すべきだよね?(笑) 
試合の最初、2、3ゲームはとてもいいプレーができたと思う。その後、2ラブでとても悪いゲームをしてしまい、2つのダブルフォールト、そしてフォアハンドのミスを犯してしまった。それで再びブレークすることができたけど、序盤は少し緊張していました。
サーブがいつもよりうまくいかなかったんだ。だから、もう少しセーフティにプレーするようにしたんだ。その後、サーブのフィーリングが少し安定したので、彼のバックハンドに対してフォアハンドで攻めて、ポイントを支配することができたと思う。

でも、今日はクロスのバックハンドがキーだったと思う。そのショットで、キャスパーに大きなダメージを与えることができた。クロスを打つことで、彼がフォア側をカバーするために、かなり走らなければならなかったのでね。私もそこまで(効果があるとは)予測してなかったが。彼の動きを制限できた。回り込みフォアハンドを打つことがあまりできなかったんだ。彼のフォアハンドはとても危険なショットだからね。

第2セットの最初に15-40の場面で、ボレーをミスしてしまった。その後、フォアハンドをダウン・ザ・ラインに打った。ウィナーになったけど、ほんのちょっとミスをしたんだ、いい当たりだったけど。その後、1-2で非常に悪いプレーをした(ブレークされている)。1-3になった時が、決勝で最もタフな瞬間だった。もし、彼がサーブをキープして4-1になったら、大変なことになったはず。でも、彼が何度かミスをしたのはラッキーだった。いくつかいいポイントも取れて、すぐにブレークバックすることができたことで、すべてが変わったね。彼の勢いを止めることができたし、良いバックハンドのクロスを打てるようになったんだ。安定感あるプレーができ、ミスもあまりなく、ポイントを支配することができた。そのあとはすべてが順調に進んだわけだ。私のプレーはどうだったかな? とにかく、とてもハッピーだよ」


■全仏オープン2022
日程/2022年5月22日(日)〜6月5日(日)
開催地/フランス・パリ:ローランギャロス
賞金総額/4,360万ユーロ(約59億円)
男女シングルス優勝賞金/220万ユーロ(約3億円)
サーフェス/クレーコート

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--{【動画】“前人未到の全仏14冠”ナダル記者会見}--





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