6月6日から全日本大学野球選手権大会が開幕する。神宮球場と東京ドームを舞台に、全国27校の代表校が頂点を争う。昨年の同大会では、西日本工業大の隅田知一郎(現・西武)が初戦の上武大戦で8回14奪三振の快投。対する上武大のブライト健太(現・中…

 6月6日から全日本大学野球選手権大会が開幕する。神宮球場と東京ドームを舞台に、全国27校の代表校が頂点を争う。昨年の同大会では、西日本工業大の隅田知一郎(現・西武)が初戦の上武大戦で8回14奪三振の快投。対する上武大のブライト健太(現・中日)が隅田から強烈な決勝弾を放つなど躍動。ともに株を上げ、秋のドラフト会議では1位指名を勝ちとっている。

 今年はどんなニューヒーローが現れるのか。大会に出場する有望選手を4年生中心にピックアップしてみよう。



昨年の大学野球選手権でも好投した上武大・加藤泰靖

150キロ超えの本格派が目白押し

 右投手で筆頭格は加藤泰靖(上武大)だ。身長184センチ、体重86キロの威圧感のある体躯から、最速153キロをマークする本格派。昨年の同大会では前出の隅田と投げ合い、4安打完封勝利を挙げている。昨年よりストレートの球威が増し、総合力が一層高まった。今大会でのアピール次第では、ドラフト1位の声も聞こえてきそうだ。昨年ベスト4の上武大はシード校になっており、大会3日目に東農大北海道と宮崎産業経営大の勝者と対戦する。

 力強さと打者を打ちとる術のバランスがとれているのは、金村尚真(富士大)と青山美夏人(亜細亜大)のふたり。金村はカットボール、青山はスプリットと絶対の自信がある球種を持っており、完成度は高い。実戦での強さを印象づけたいところだ。富士大は大会初日に大阪商業大との強豪同士の好カードを戦う。シード校の亜細亜大は大会3日目に近畿大と和歌山大の勝者と対戦する。

 速球派では眞田拓(名城大)が楽しみな存在だ。昨年から150キロを超える快速球で知られたが、今年に入って制球力が改善され投球を組み立てられるようになってきた。

 名城大は3年生にも松本凌人、岩井俊介と速球派右腕がひしめく。とくに松本はサイドハンドから最速150キロを計測し、縦・横をえぐる変化球も精度が高い。昨年の同大会でも好投しており、初見で打ち崩すのが困難な逸材だ。名城大は大会2日目に天理大と対戦する。



東海大菅生時代から華麗な守備を見せる亜細亜大・田中幹也

 ほかにも神野竜速(神奈川大)、高坂綾(千葉経済大)も実績を積み上げてきた好素材。春のリーグ戦で本調子ではなかった木村光(佛教大)、村上幸人(福岡大)は復調の兆しを見せているだけに、大舞台で本来の安定感を発揮できるか。

 左投手では、久保玲司(近畿大)、伊原陵人(大阪商業大)と上背は乏しいもののキレと実戦力で勝負する両投手に注目したい。

捕手に好素材ひしめく

 今大会は捕手の好素材が多く出場するという特徴がある。大会の目玉になりうるのは、野口泰司(名城大)だ。厚みのある迫力満点の肉体で、攻守とも馬力が際立つ。昨年12月の大学日本代表候補合宿で他大学のエリートから刺激を受け、大学最終学年でさらにレベルアップしてきた。

 上武大は小山忍と3年生の進藤勇也という全国屈指の捕手陣を擁する。ともに圧巻のスローイングとパンチ力の効いた打撃力を持ち、甲乙つけがたい。小山が春先に故障したため春のリーグ戦は進藤が正捕手だったが、上武大の谷口英規監督は大学選手権で両捕手とも起用することを示唆している。

 攻守にしぶとく存在感がある蓑尾海斗(明治大)、頑健な体と勝負強い打撃の土井克也(神奈川大)、大学トップクラスのスローイング能力を誇る石伊雄太(近大工学部)、南部九州大会で2本塁打を放った松山翔太(宮崎産業経営大)といった好捕手も見逃せない。

 内野手では、ぜひシートノックから見てもらいたい選手がいる。田中幹也(亜細亜大)。東海大菅生高時代から「忍者」の愛称で親しまれた遊撃手である。好選手揃いの大学球界でも、弾けるような動き出しのキレは異次元。今春のリーグ戦では1試合6盗塁の東都リーグタイ記録をマークしている。

 友杉篤輝(天理大)は昨年の同大会で10打数8安打と大暴れした遊撃手。シュアな打撃と盗塁可能な俊足を備えている。今年は前出の名城大の好投手と強肩捕手の野口を相手に、どんなパフォーマンスを見せられるか。

 復活に期待したいのは、村松開人(明治大)だ。今春リーグ戦は右ヒザ半月板のクリーニング手術明けのため出場機会が限られたが、DH制のある大学選手権で抜群の打撃センスを見せてくれる可能性もある。



今春の東京六大学リーグ戦で首位打者を獲得した明治大・宗山塁

 明治大は3年生以下も人材豊富だ。大学1年時から名門の遊撃レギュラーをつかみ、2年春の今春は打率.429で首位打者を獲得した宗山塁(明治大)。その絵になる攻守は早くも「鳥谷敬(元阪神ほか)の再来」の声もあるほどだ。長打力がありながら、今春リーグ5盗塁と動ける3年生の強打者・上田希由翔も主軸を務める。明治大は大会2日目に神奈川大と流通経済大の勝者と対戦する。

 外野手では今春の仙台六大学リーグで打率.550、4本塁打、14打点と三冠王を獲得した杉澤龍(東北福祉大)が楽しみ。3年生では強打とスピードを兼ね備えた天井一輝(亜細亜大)、2年生では広角に力強い打球を放つ右打者の渡部聖弥(大阪商業大)もチェックしたい。

 高校野球ほどの注目度はないものの、ハイレベルでドラマ性に富んだ大学野球は一度はまれば病みつきになる。ぜひ神宮球場や東京ドームに足を運んでみてほしい。