2001年度生まれ「新世紀世代」の21歳和久井麻由、3度目のプロテスト挑戦 女子ゴルフの国内ツアーが活況を呈する中、今年も8月からプロテストが実施される。だが、合格率は3%台の超難関。何度も跳ね返されている選手が数多くいる。小、中、高で全国…

2001年度生まれ「新世紀世代」の21歳和久井麻由、3度目のプロテスト挑戦

 女子ゴルフの国内ツアーが活況を呈する中、今年も8月からプロテストが実施される。だが、合格率は3%台の超難関。何度も跳ね返されている選手が数多くいる。小、中、高で全国大会優勝を飾っている和久井麻由(わくい・まゆ)は3度目の挑戦。高2までは同学年の笹生優花、西郷真央、山下美夢有を上回る戦績を残していたが、この3年は苦しみ、もがいてきた。その中で見えてきた光明。ライバルたちの背中を追う21歳の思いを聞いた。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田通斉)

 和久井は、2001年度生まれ「新世紀世代」の一人だ。小6でゴルフダイジェストジャパンカップ優勝、中3で全国中学選手権春季大会優勝。高1では、全国高校選抜マッチプレー選手権決勝で西村優菜に勝利した。高2では、全国高校選手権春季大会を安田祐香とのプレーオフの末に制した。1学年上の強者2人に競り勝つ強さで、同学年の1歩先を行く存在だった。だが、今は笹生、西郷、山下が遠く先を走っている。和久井は言った。

「みんなとは今も仲がいいですし、ツアーで優勝した時は素直に『すごい。おめでとう』と思います。優花とは同じ高校で一緒にフィリピン合宿にも行きました。真央とも同じ環境で練習をした時期があり、ものすごく努力する姿を見てきたので、『結果が出てきたな』と感じています。美夢有の活躍にも納得です。私は高3の時、日本女子アマでワンパンチをくらって、その先はメンタルの問題が出てきてしまって…」

 和久井は7歳でスヌーピーの7アイアンを握った。ゴルフ好きでハンデ5の母・裕希子さんに練習場に連れられ、程なくコースにも出るようになった。指導は地元のレッスンプロから受け、小6でプロを目指し始めた。中学入学時には新たなコーチの指導を受けるため、両親と山梨に転居。高校時代は地元の栃木に戻り、通信制の代々木高ゴルフ部でも笹生らと腕を磨いた。

 そして全国制覇を重ねて、高3で日本女子アマに出場。初日64で西郷と並んで首位、第2日から単独首位に立ったが、最終日は72と伸ばせなかった。結果、2打差2位で出た西郷に逆転されて2位。これが1つ目のダメージだった。

「勝っていれば、最終プロテストから受けられたのでショックが大きかったです。その後、(国内女子ツアーの)ニトリレディスに推薦出場して10位に入り、プロテストの1次予選も通過しましたが、だんだんと調子が悪くなってしまって……」

初挑戦は2次不通過、再挑戦は病で断念

 2019年10月、三重・ジャパンクラシックCCで開催されたプロテスト2次予選で和久井は、初日78、第2日77、第3日77。通算16オーバーで最終ラウンドに進出できなかった。信じがたい結果……。和久井はここでどん底に落ちた。

「テストの時は、緊張と不安で全てがダメになりました。途中、OBの数え方も分からなくなり、過大申告もしました。自分自身に情けなさを感じる中、周りから『がっかりした』という声も聞こえてきて、誰とも会いたくなくなりました」

 裕希子さんは「麻由が部屋から出てこなくなって困りました」と当時を振り返る。「ゴルフを辞めたい」とも言われたが、「1度、決めたことはやり通しなさい」と説得。しばらくして、和久井は人目を避けながら練習を再開したが、裕希子さんいわく「気持ちが全く入っていませんでした」。そして、コロナ禍で20年度のプロテストは21年に延期された。和久井にとっては、メンタルの異変を経た2度目の受験。だが、1次予選2週間前になって、体に異変を起こした。

「扁桃腺が腫れ、高熱が出て寝込むようになりました。原因は重度のストレスでした。その時点で開催コースのある福島県内のホテルにいましたが、コロナ禍で栃木県から来た私は入院できませんでした。練習もできず、体はボロボロ。2日前に症状は治まりましたが、当日の朝、私の判断で欠場を決めました」

 和久井は再び絶望を感じた。しかし、同年夏から21年度のプロテストが開催されることが救いだった。周囲からも「すぐにまたテストだから」と励まされた。その頃、笹生が全米女子オープンを制覇したが、「自分は自分」と言い聞かせ、笹生に「おめでとう」と祝福メッセージも送った。

 しかし、同年11月の21年度最終テストも合格できなかった。1次、2次は順調に通過したが、最終は合格圏に6打届かず45位。京都・城陽CCのグリーン周りに苦しんだ。

「ショットは良かったのですが、逆目の芝に対応できずにアプローチのミスを重ねました。初日の77が痛かったです。それまで受けたテストの中で一番ショックでしたが、この時はすぐに切り替えができました」

新コーチに師事でメンタル安定「次こそは合格します」

 和久井は自分の殻を破るべく、今春から米国生まれのジョージ武井氏に師事するようになった。武井氏は、古屋京子、村田理沙、吉川桃らのコーチを務め、メンタル面も含めて支えてくれるという。

「私が二酸化炭素を吐いても、酸素に変えてくれるような方です。思うようにいかず、『もう、無理』と言っても、『無理じゃないのよ~』と受け止め、前向きな言葉をかけてくださいます。おかげで気持ちも安定してきました」

 メンタルの状態が良化したことで、和久井は持ち前の実力を発揮するようになった。プロテスト合格を目指す選手が集う今季マイナビヒロインネクストツアー第2戦、第3戦で優勝。ツアープロを目指す女子ゴルファーを支援するDSPEの月例会でも上位成績を収めている。今月は、武井コーチが「アプローチ強化月間」に指定。和久井にとって3度目の挑戦となる10月の22年度テスト2次予選(21年度最終進出で1次は免除)に向けたプランもできているという。

「いろいろとありましたが、次こそは合格します。活躍している優花、真央、美夢有に追いつきたいという焦りはありませんが、早く上の舞台で戦いたいという思いはあります」

 遠回りはしているが、まだ21歳。和久井は22年度プロテスト合格だけでなく、ツアーで輝くために今日もクラブを握る。

■和久井麻由(わくい・まゆ)

2001年5月28日、栃木・小山市生まれ。代々木高卒。7歳でゴルフを始め、小、中、高で全国大会優勝。得意なクラブはパター。ドライバー平均飛距離250ヤード。長所「ずっとしゃべっている」、短所「めんどくさがりや」。好きな料理は「母の作ったハンバーグ」。家族は両親、兄、姉。身長168センチ。血液型A。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)