専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第105回 ゴルフ会員権は、バブル以降の最安値の相場を順調に更新中って、なんですかねぇ……。 でも、昔ながらの高額名門倶楽部と、10万円程度の激安会員権…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第105回

 ゴルフ会員権は、バブル以降の最安値の相場を順調に更新中って、なんですかねぇ……。

 でも、昔ながらの高額名門倶楽部と、10万円程度の激安会員権はそこそこ流通しています。あまり需要がないのは、メインの100万~300万円程度の中堅銘柄。上と下が動く会員相場の、その理由を探ってみたいと思います。

 まず、高額銘柄ですが、これは「だいぶ安くなったから」と、私の知り合いも都内の名門倶楽部に入会しました。

 今さらながら、なぜ高額な会員権が売れているのか? それは若い頃、買えなかった自分への”リベンジ”なんですね。

 バブルの頃、軒並み1億円を超える名門ゴルフ倶楽部、俗に言う「億カン」コースがいくつもありました。そりゃすごく欲しいけど、家すら買っていないのに「億カン」を買うなんて、夢のまた夢の話でした。

 それが、あれから月日は流れて25年――。何気に会員権相場を見てみると、当時1億円だった名門カントリー倶楽部が500万円で売りに出ているじゃないですか!? 

 これって、銀座の高級クラブのホステスに憧れていたものの、まったく相手にされないまま、月日が過ぎ去ってしまいました。でもそうしたら、あのホステスが五反田にスナックを開業し、突然「遊びに来て♪」とメールをもらったようなものです。

 あれから25年じゃあ、売れっ子ホステスも50歳……。はたして行くべきか、悩みどころですけどね……。




かつては高嶺の花だったホステス、いや名門ゴルフ倶楽部の会員権が手の届くものとなれば、確かに食指が動くかも... それに比べると、ゴルフ場の場合、25年経ったほうが風格も増して、レストランや風呂場も改装されて、トイレもすべてウォシュレット完備となって、といいことずくめです。

 とすれば、「これは千載一遇のチャンス!」と思って、みんな自らのほろ苦い青春の思い出を払拭するべく、購入に踏み切るわけですね。

 片や、10万円未満の激安銘柄もそれなりに動きがあります。こちらは、実需を伴った”動き”です。

 最近の友の会の料金は、土日もプレーできるやつだと、5万~9万円ぐらいします。だったら、10万円出して、正式メンバーになって活動したほうがすっきりする、そう考えるのも無理はありません。

 お値打ちの大衆銘柄コースは、メンバーが多いのがたまにキズですが、どのコースもひとりなら、プレーは保証されます。ですから、アクティブメンバーになって、毎月月例に参加。土日もふらっとプレーしに行けば、十分に元は取れるというものです。

 大手のグループに属しているコースだと、他の系列コースが割引でプレーできるメリットもあります。そう考えれば、大衆コースのほうがみんな気軽にプレーできて、居心地がいいのです。

 ジャケット着用なんて、堅苦しいマナーもなく、エントランスが高級車だらけで安易にクルマを寄せづらいとか、そういうこともないです。大衆コースのメンバーのほうが、ゴルフをこよなく愛している感があって、親しみが沸きますよね。

 一方で、100万~300万円程度の中堅銘柄が芳しくないのは、最近の年会費の値上げが響いていると思われます。

 以前は年間2万円程度だった年会費が、今や5~6万円というのがざらになっています。これは、「経営補強する」という名目でメンバーから徴収されていますが、ゴルフ場にとっては非常に美味しいお金です。

 仮に1コース、2000人ぐらいのメンバーがいるとしましょう。ちょっと多いですが、生き残っているコースは会員権をふたつに分割していることが多いので、まあこんなものでしょう。で、5万円の年会費を2000人からいただくと、ざっと1億円になります。なんら経費がかからない”真水”で1億円が入ってくるんですから、ゴルフ場にとってはたまりませんよね。

 ちなみに、最近のゴルフ場の運営というか、売り上げ(予算)はどうなっているのでしょうか。

 例えば、18ホールのゴルフ場だとすれば、予約数は基本50組です。夏場は65組くらいに増えますが、建前上50組で満員です。もちろん、平日と土日で入場者の数はだいぶ違ってきますから、ざっくり半分の25組が入って、客単価をメンバーやビジターひっくるめて7500円としますか。

 そうすると、1組およそ3万円で25組ですから、1日の売り上げが約75万円。それを1年で計算すると、2億7000万円程度になります。バブル崩壊以降、ゴルフ場の売り上げは年間3億円いけば、なんとか食べていける説があったのですが、あながち間違いではないです。

 しかも、年会費の1億円が入ってくる。売り上げが2億円でも、年会費があれば、それでしのげる。そんな感じで、今のゴルフ場はどこも運営しています。

 話を戻しましょう。年会費が上がると、どんなことが起きるのか?

 スリーピングメンバー、すなわち、とりあえず会員権を持っているだけのメンバーが「ならば売ってしまおう」と処分します。処分と言っても、紙くずみたいなものですから、会員権の預託金が全額戻ってくることは稀(まれ)です。当然ながら、先に払った会員権の預託金は消えます。それでも、毎年さらに5万円取られるよりマシ、というわけです。

 こうして、メンバーの多い大衆コースはごっそり売りが出ますが、10万円ほどの投資って、女性が英会話学校やエステなどに通うのと同じようなものです。それぐらいなら「道楽してもいいんじゃないか」、むしろ「10万円払ったからこそ、頻繁に通うんだ」と、みなさん思うみたいですね。

 その結果、大衆コースの会員権売買は盛んになるわけです。

 翻(ひるがえ)って、中堅銘柄だと、結構な預託金も払っているので、なかなか手放せない人が多いみたいです。それに、たとえ売りに出されても、さすがに数百万円も道楽にはつぎ込めません。奥さんや彼女に向かって「おまえのエステ代と一緒だよ」とも言えませんしね……。

木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

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