ブリヂストンレディス最終日 国内女子ゴルフツアーのブリヂストンレディス最終日が22日、千葉・袖ヶ浦CC袖ヶ浦C(6713ヤード、パー72)で行われた。首位から出た20歳・西郷真央(島津製作所)が1イーグル、2バーディー、1ボギーの69で回り…

ブリヂストンレディス最終日

 国内女子ゴルフツアーのブリヂストンレディス最終日が22日、千葉・袖ヶ浦CC袖ヶ浦C(6713ヤード、パー72)で行われた。首位から出た20歳・西郷真央(島津製作所)が1イーグル、2バーディー、1ボギーの69で回り、通算13アンダーで優勝を飾った。ツアー初優勝を飾った今季開幕戦ダイキンオーキッドレディスから出場10試合で5勝目。5勝達成に要した試合数は、2004年の不動裕理(11試合)を上回り、史上最速という歴史的快挙に。会見では一時、稲見萌寧(Rakuten)に逆転された展開を含めて「辛かったけど、最後まで頑張って良かったです」と喜びを口にした。(取材・文=THE ANSWER編集部・柳田 通斉)

 西郷は表彰式で、自身の快挙を知らされた。憧れの不動を抜く最速記録に目を丸くしつつ、素直に喜びを口にした。

「すごく驚いていますが、記録を作ることができてうれしいです」

 会見では1ボギーの37で終えた前半を「辛かったです」と表現した。第3日終了時で3打差をつけていた稲見に逆転され、2打のリードを与えた。そして、バーディーを狙った11番パー4では第2打がバックスピンでバンカーに入り、第3打も寄らずの状況。西郷はグリーン上ですさまじい集中力を発揮した。

「7メートルの下りスライス。ここホールのこのラインは、(練習ラウンドで)たくさん練習した。カップを過ぎると速くなる。タッチを合わせていけばいい」

 イメージ通りのパットは読み通りにカップイン。同組の山下美夢有に「しぶとい」と言わしめた大きな一打となった。

 そして、13番パー4で初バーディー。右手で小さくガッツポーズを取るも、14番パー4は第1打を右サイド深くに打ち込んだ。右側から木の枝がせり出し、その下にコブがある状況。その隙間は2メートル程度だったが、西郷はここでも感覚を研ぎ澄ませ、持てる力を発揮した。

「前に障害物があったので、ドロップしたらボールが潜って下が土でした。ただ、(枝の)下を通すしかないので、今日イチでマン振りをしました」

 ボールは狙った隙間を抜け、そのままナイスオン。2パットでパーをセーブした。

 その後、15番まで終えて西郷、稲見、山下、青木瀬令奈が10アンダーで並ぶ混戦となったが、西郷には「我慢」のご褒美が待っていた。

復活の裏に師匠ジャンボの助言、今後待ち受けるのは世界初挑戦

 16番パー5。グリーン左のバンカーから第3打がカップイン。瞬間、西郷は右手を突き上げた。キャディーとグータッチをし、カップからボールを手に取るとギャラリーに向けて両手を挙げた。

「ピンまで25ヤードでした。半分キャリーさせて、寄せるノーマルのバンカーショットです。その前に(11番で)バンカーショットをしていたので今日の砂質は分かっていましたし、ライも良かった。打ちやすい状況でしたが、まさか入るとは思わなかったので、ビックリしました」

 3週前、同じ地元千葉県の開催だったパナソニックオープンレディースでは、15番パー4の第2打をカップインさせた。その光景を彷彿させる劇的な展開に、ギャラリーも大興奮。最終18番パー5でもバーディーを奪い、勝利に花を添えた西郷は言った。

「辛い時もたくさんのギャラリーの方々に『これからだ』『地元で頑張れ』と言っていただきました。結果を出せてうれしいです。ありがとうございました」

 そして、会見では師匠・尾崎将司への感謝も口にした。直近2週間は突然の不調で連続予選落ち。携帯電話にため込んだスイング動画とその当時に感じた「スイングメモ」を5年分見返したが、「初めて感じたテークバックからトップへの違和感」は解消できなかった。だが、尾崎宅を訪ね、アドバイスを受けて一気に目の前が開けたという。

「本当にジャンボさんに教えていただいたおかげで優勝できました。『ありがとうございました。これから頑張ります』と報告に行きたいです。ただ、優勝したから解決ではないので、また教わったことを繰り返します。そして、これからは自分でも修正できるようにしたいです」

 蘇った西郷は今後、世界への初挑戦を始める。近く渡米して、全米女子オープン(6月2~5日)に出場。中2週で開催の全米女子プロ選手権にも出場する。「スケジュールは検討中」と言うが、新型コロナウイルス感染防止対策の隔離義務も考慮し、長期米国滞在を選択する可能性もある。だが、西郷は「将来は米女子ツアーで」と公言しており、この挑戦に目を輝かせている。

「世界トップレベルの舞台に自分が立てる喜びはあります。ただ、学びに行くだけではもったいない。結果として残せるようにしたいです。メジャーに向けて、体も整えていきます」

 同期の笹生優花は、昨年の全米女子オープンに優勝している。渋野日向子は19年に海外試合初挑戦で全英女子オープンを制している。今、国内女子ツアーで最も強い20歳も、自分の全てを懸けて頂点を目指す。(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)