第6戦スペインGPで2022年のF1は本格的なシーズンの始まりを告げる。4月にイモラ(第4戦エミリア・ロマーニャGP)でレースが行なわれているとはいえ、本当の意味でのヨーロッパラウンドが始まるのはここからだ。 選手権をリードするフェラーリ…

 第6戦スペインGPで2022年のF1は本格的なシーズンの始まりを告げる。4月にイモラ(第4戦エミリア・ロマーニャGP)でレースが行なわれているとはいえ、本当の意味でのヨーロッパラウンドが始まるのはここからだ。

 選手権をリードするフェラーリや、いまだバウンシング問題に苦しむメルセデスAMGなど、各チームがスペインで大きなアップグレードを投入する。その背景には、2月の開幕前バルセロナテストですでにしっかりと走り込んでいてデータが豊富で、新投入パーツの評価が正確にできるという点がある。

 開幕からの5戦で、レッドブルは細かなアップグレードを投入し続けてきたが、フェラーリはここで初めてのアップグレード投入となる。これが勢力図にどんな影響を及ぼすのか、その開発方向性が正しいのか正しくないのか、それは今後のシーズンの趨勢を占ううえでも重要になる。



スペインにやってきたアルファタウリの角田裕毅

 トップチームだけでなく、これまでになくタイトな争いになっている中団グループでも、アップグレードを投入するチームは多い。アルファロメオやアルピーヌは、課題となっているダウンフォース増大を狙って新たなパーツを投入してきている。もちろん、どのチームも目に見えない部分での軽量化も進めてきているはずだ。

 そんななかで、アルファタウリにはアップグレードがない。地元イモラで新型フロアを投入したためだ。

 イモラではその効果もあって入賞を果たし、前戦マイアミでは2台揃ってQ3進出を果たした。しかし、ライバルが追い着いてくる今回のバルセロナでは厳しい戦いを強いられるだろうと、角田裕毅は予想している。

「今回はアルピーヌもアルファロメオもアップデートを持ち込むと聞いているので、難しい状況だと思います。でも、前回のマイアミで初めて2台揃ってQ3進出ができましたし、いいパフォーマンスが発揮できていました。

 僕らの次のアップデートが入るまで、それができるだけ長く続くことを願っています。そのためにも、僕らはできるだけフィードバックをして、マシン開発が正しい方向に進むようにしなければならないと思っています」

ガスリーが苦しむ回頭性不足

 僚友ピエール・ガスリーも、今、自分たちの手にあるマシンのポテンシャルを最大限に引き出すことが重要だと指摘する。逆に言えば、今シーズンのアルファタウリはそれができていない。マシンの競争力どおりの結果を手にできていないのだ。

「これまでのレースで何がよくて、何がよくなかったか、それをしっかりと見直したうえでマシンのポテンシャルを最大限に引き出す必要がある。トラブルなく、予選も決勝もクリーンに戦うこと。それによって最大限のポイントを取ることが大事。

 中団グループでは6チームが(トップ3チーム以降の入賞圏)7位〜10位を争っている状況だ。僕たちよりも速いライバルもいるし、かなり厳しい。去年はポテンシャルの98%、99%を引き出すこともできていたけど、今年はそこまでいけていないからね」(ガスリー)

 開幕前から抱えてきたダウンフォース不足は、完全に解決はできていない。イモラで投入したフロアも満足のいく出来ではなかったようで、「フロアからのダウンフォースをもっと引き出すべく努力している。風洞やCFDでの作業が進められているけど、すぐに投入できる計画ではないんだ」という。

 ガスリーは特に、低速域・中速域での回頭性不足に苦しんでいると訴える。

「マシンのフロントが、僕が望むほど強くない。特に中速コーナーと低速コーナーでの回頭性に苦しんでいる。そして、その後はマシンがスライドしてしまう。高速コーナーでは4輪がスライドしてしまって、ライバルたちのようなスピードをキャリーすることができない」

 結果的にそれが、ガスリーの持ち味である高速コーナーでの驚くような速さを削いでしまっている。

 ガスリーはもともと、リアのスタビリティが高いアンダーステア傾向のマシンを好むドライバーだ。だが、そのガスリーでも「足りない」というほどマシン全体のダウンフォースが足りていないのがAT03の現状だ。

 フロントのダウンフォースが弱ければ、リアのダウンフォースを下げて前後バランスを取るしかない。つまりそれは、全体的なダウンフォース量の低下を意味する。

求められるクリーンな週末

 一方、もともとリアが不安定でも苦にせずマシンを振り回して走ることができる角田は、このAT03にそれほど苦労してはいないという。

「フロントが弱い(リアの安定性が高い)マシンの扱いに関しては、彼(ガスリー)のほうがうまいと思います。僕は彼よりももっとオーバーステアなマシンが好きなので、アンダーステアが強いマシンでは僕のほうが苦しむんです。特に去年はそうでした。でも、今はそんなに苦労はしていないです。

 もちろん、フロント寄りのセットアップもできるんですけど、そうすると(弱いフロントよりさらに弱くしなければならないため)リアのダウンフォースがあまりに弱くなりすぎてしまう。リアが弱いマシンは彼よりもうまく対処できるので、だからこそ僕は問題をあまり感じていないんだと思います」

 マイアミではQ3に進出したものの、決勝でペースが振るわず、ずるずると後退してしまった。

 決勝日の体調が悪かったこともあるが、タイヤをうまく扱えずにレースペースがフルに発揮できないというのは、角田自身も課題だと感じている点だ。

「とにかく僕の場合は、クリーンな週末を送ることと、タイヤに対する理解を深めてレースペースを向上させることです。その点はピエールほどうまくできていないですね。

 どのレースでもどちらかのマシンに問題が起きて、完全にクリーンな週末を送ることができていないので、次のステップとしてそれが果たせればと思っています。もちろん、レースを経るごとにマシンへの理解は進んでおり、トラブルも減ってどんどんよくなってきていることは確かです。なので、それを達成することはそんなに難しいことではないと思います」

 チーム全体としてもトラブルやセットアップミスを減らし、"クリーンな週末"を目指さなければならない。マシンの進歩が遅れていても、そのポテンシャルを100%引き出せるかどうかは自分たち次第だ。

 今の自分たちにできることをすべてやり尽くし、ドライバーとAT03の持つポテンシャルを結果に結びつける。それこそが、今のアルファタウリと角田に求められていることだ。