「オカザキの規格外のゴールで我々は失点した」 そう舌を巻いたのは、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督である。見事なダイレクトボレーで今季3ゴール目を決めた岡崎慎司 岡崎慎司の今季3点目となるゴールが生まれたのは、マン…

「オカザキの規格外のゴールで我々は失点した」

 そう舌を巻いたのは、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督である。



見事なダイレクトボレーで今季3ゴール目を決めた岡崎慎司 岡崎慎司の今季3点目となるゴールが生まれたのは、マンチェスター・Cに2点のリードを許して迎えた42分。左サイドでMFマーク・オルブライトンがボールを持つと、岡崎はペナルティエリア内に向かってダッシュを開始する。手を上げてクロスボールを要求した、その日本代表FWにボールが飛んできた。

 左斜め後方部から飛んでくる難しいクロスボールだったが、岡崎は迷うことなくダイレクトで左足を一閃――。ゴール右上に飛んだシュートは、GKウィルフレード・カバジェロの手をかすめてネットに吸い込まれた。

 スペイン人策士が「規格外」と褒めたこのゴールは、英メディアでも「今季ベストゴール候補のひとつ」(英紙『デイリー・メール』)と絶賛されている。英紙『デイリー・ミラー』も「オカザキの機敏さ、そして技術の高さが際立ち、GKカバジェロはこの美しいボレーを止めるチャンスはなかった」と記した。

 この得点場面について、岡崎は次のように振り返った。

「(ニアサイドとファーサイドの)どちらにも入れる準備をしていたんですけど、基本的にあの状況でファーにいったら絶対ノーチャンスだと思って、ニアに切り替えたのがよかった。自分に向かって来るボールが得意なので、それに合わせることができてよかった。(ボールが)ちょっと後ろから来たので、自分から(ボールを)迎えに行くような形だった。無理やり当てるのではなく、シュートを流した感じがよかった。FWとして、これだけゴールがないと厳しいし、久々にゴールが取れてよかったです」

 ゴール前への入り方も、岡崎の持ち味が出ていた。FWジェイミー・バーディーがすでにゴール前にいる状況で、1.5列目からペナルティエリア内へ遅れて入っていった。いつもなら、何も考えずにバーディーにパスを届けようとするレスターアタッカー陣だが、クロスを上げたオルブライトンは岡崎の動き出しをしっかりと見ていた。おかげで、フリーで走り込んだ日本代表FWにクロスが届いた。

 このゴールの背景として、岡崎は練習のなかで手応えを掴んでいたという。

「最近、ゴール前への動き出しが(周囲に)認められていた。練習では、そういうゴールをよく決めていた。でも、試合になると、味方の余裕がなくなってしまう。そして、どうしても”バーディー1本”になってしまう。ただ、バーディーが前線へ抜けた後に、『自分が(ゴール前に入る)』というプレーが最近多かった。あのクロスがレスターの形。自分としても、あのような入り方ができてよかった。

 でも、このゴールを決めたからと言って、レスターにおける立ち位置は変わらないと思います。ただ、やっぱり1点決めると、周りが『あいつはゴールを決められる』という風に見てくれるようになるので。そのチャンスを『自分が掴めるかどうか』と思うんですけど。今までもこういうチャンスは何回もあったし、まあ本当にもうちょいという……。

 あの位置からゴール前に入っていけるのが自分の強み。ただ、(守備に走ったり、中盤でつなぎ役をしたりする)いつものプレースタイルをしていると、あそこに入っていくのはなかなか難しい。でも、今日は駆け引きで勝った。さらにいいゴールが決めることができてよかったです」

 スロースタートだったマンチェスター・Cがじわりじわりと調子を上げていき、時間が経つにつれてレスター・シティの劣勢が色濃くなっていった。そして、36分までに2点のリードを奪われる。74%のボールポゼッションを記録していたマンチェスター・Cの勝利は堅いように思われた。その意味でも、岡崎が生んだ42分の一発は、レスターに流れを引き戻す貴重なゴールとなった。

 しかし後半に入ると、岡崎の運動量が次第に落ちていく。60分を過ぎたあたりになると、クロスボールのチャンス時でも、ゴール前に入っていけないシーンが目立つようになった。

 岡崎によれば、体調不良を抱えながらの強行出場だったという。本人は試合後、「体調がよくなくて、鼻がちょっと。風邪から、その後、鼻に残るやつで。それで身体がけっこうガタガタ。(シーズンの)最後に来ているのに……」と明かした。

 それでも、マンチェスター・Cを相手に効果的なプレーを示したうえ、得点を挙げた意義は大きい。ゴールを褒めていたグアルディオラ監督も、「レスターにはオカザキ、(イスラム・)スリマニ、(リヤド・)マフレズがいる。コントロールするのが難しい」とし、岡崎を軸とするプレッシングサッカーと対峙するのに難しさがあったと漏らしていた。

「(マンチェスター・Cのようなビッグクラブが相手でも)意気込まなくなったかなと思う。『やってやるぞ』というより、自分がどのようなプレーをしなくてはいけないのか想像できるようになった。自分の価値を来年に残すためにも、ビッグチームから点を獲れたというのはよかった」(岡崎)

 守備やパスのつなぎ役をこなしながら、大事な局面でゴールを決める――。岡崎は常々、レスターにおける自身の理想像についてそう語っているが、このマンチェスター・C戦で実践してみせた。レスターは1-2で敗れたが、岡崎にとってはチーム内での風向きを変える転機になったのではないだろうか。