2017年3歳クラシックSportivaオリジナル番付(牝馬編:第5弾) 牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)は、思わぬ結果となった。前哨戦のGIIIチューリップ賞(3月4日/阪神・芝1600m)を快勝し、「…

2017年3歳クラシック
Sportivaオリジナル番付(牝馬編:第5弾)

 牝馬クラシック第1弾のGI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)は、思わぬ結果となった。前哨戦のGIIIチューリップ賞(3月4日/阪神・芝1600m)を快勝し、「死角なし」と見られていた2歳女王ソウルスターリング(牝3歳/父フランケル)が敗戦。直線で伸びあぐねて3着に沈むという、大番狂わせが起こったのだ。



桜花賞を制したのは8番人気のレーヌミノルだった 波乱のレースを制したのは、8番人気のレーヌミノル(牝3歳/父ダイワメジャー)。ソウルスターリングを引き離し、2着リスグラシュー(牝3歳/父ハーツクライ)の追撃も半馬身差振り切った。終わってみれば、昨年のGI阪神ジュベナイルフィリーズ(2016年12月11日/阪神・芝1600m)の上位3頭の着順が逆になっただけ、という結果だった。

 続いて、迎えるのは牝馬クラシック第2弾となるGIオークス(5月21日/東京・芝2400m)。トライアル戦では、GIIフローラS(4月23日/東京・芝2000m)をモズカッチャン(牝3歳/父ハービンジャー)が、オープン特別のスイートピーS(4月30日/東京・芝1800m)はブラックスビーチ(牝3歳/父ディープインパクト)が制した。

 これらの結果を受けて、2017年3歳牝馬の最終『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。なお、当然ながらオークスに向けての評価に特化したものゆえ、オークスに出走しない馬は番付から除外している。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独自なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、今回はオークスに挑む3歳牝馬の、現時点における実力・能力を分析しランク付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。



 1位はソウルスターリング。2歳女王となって以降、ずっと守ってきた首位の座を今回も保持した。桜花賞ではよもやの敗戦を喫したが、「それでもこの世代の主役」という意見が大半を占めた。

市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「桜花賞の3着は、馬場が合わなかったとしか考えられません。勝ったレーヌミノルが苦にしなかった分、その差が相当大きかったと思います。続くオークスでは、問題になるのは距離(2400m)ですが、これまでのデータから言うと、桜花賞で上位に入った馬がオークスで距離に泣くケースはほとんどありません。余程の短距離血統なら別ですが、この馬の場合は母父が中距離で活躍馬を出したモンズーン。ごまかしの利かない平均以上のペースになれば別ですが、良馬場でスローの上がり勝負になったら十分にこなしてくれるでしょう」

木南友輔氏(日刊スポーツ)
「桜花賞の敗因は道悪に尽きると思っています。それからこの馬に関しては、同じ世代の牝馬同士なら距離の壁はないでしょう。欧州では今月に入ってからも次から次へとフランケル産駒のクラシック候補が出てきて、好レースをしています。『無敗のヒロイン』の誕生を期待したい気持ちもあったので、桜花賞で敗れたことは残念ですが、オークスでの反撃が楽しみです」




吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「栗東トレセン(滋賀県)の滞在はなく、関東馬が阪神JF→チューリップ賞→桜花賞のローテーション。この長距離輸送3連発が、桜花賞では重箱の隅をつつけば……という程度の不安点でしたが、その影響が少なからずあったのかもしれません。チューリップ賞から中5週で時計を出したのが、当週と1週前追いの2本だけというのもさすがに少なかったですね。

 蹄(ひづめ)が大きいとはいえ、血統や走法からは道悪はこなせるタイプで道中の走りは問題ありませんでした。道悪を敗因にするのは簡単ですが、走破時計を踏まえれば、それだけを理由にするのは危険かと思われます。満を持して直線を向いたにもかかわらず、追い出してから内へモタれ気味にふらついていたことを考えれば、チューリップ賞の出来にはなかった、ということが本当の敗因でしょう。

 今度は中5週で”ホーム”の東京競馬場。4月30日には美浦トレセン(茨城県)の坂路で4F56秒1をマークしており、桜花賞の1、2着馬より早い始動は巻き返しへの意欲の表れ。折り合い面、体形からして距離は問題なく、オークスの舞台なら全能力を発揮できるはずです」

 2位はリスグラシュー。チューリップ賞で3着に敗れて一度は評価を落としたものの、桜花賞2着となって再浮上した。

土屋真光氏(フリーライター)
「前哨戦のチューリップ賞で、直線で伸びを欠いたレースぶりから、3歳になっての成長度に疑問を持って評価を下げましたが、今思えば、あのときは完全なトライアル仕様の競馬でした。桜花賞では他の有力馬が伸びあぐねた馬場で、同馬だけは一旦止まりかけながら、再度伸びてきてしっかりと自身の能力を発揮。この点は、どの馬にとっても未知の距離となるオークスでも大きな武器となるはずです。また、ハーツクライ産駒という点では、桜花賞3着からオークスを制したヌーヴォレコルトと同じ。東京コースもアルテミスS(2016年10月29日/東京・芝1600m)で勝利を飾っており、問題ないでしょう」

木南氏
「昨年のアルテミスSで初めて見たとき、小柄ながら、ものすごいバネがある馬だと思いました。桜花賞で2着という結果を残せたのは、休み明けのチューリップ賞から本番にかけて、矢作芳人厩舎がうまく仕上げたからでしょう。血統的には距離が短いほうがいいのかなと思っていましたが、桜花賞で見せたあの脚が使えるなら、オークス馬にかなり近い存在だと思います」

本誌競馬班
「桜花賞では、直線で一度馬群に沈みかけながら盛り返してきました。その底力に魅力を感じます」

 3位はアドマイヤミヤビ(牝3歳/父ハーツクライ)。桜花賞では見せ場もなく12着と惨敗を喫したが、もともとオークス向きと言われていただけに、大きく評価を落とすことはなかった。

吉田氏
「多少ベタ爪気味とはいえ、桜花賞はあまりにも走らなさすぎ。周りが速かったため、馬群に入れない形が影響したのか、直線を迎えて大外に出してからもまったく伸びてきませんでした。パドックでもテンポよく歩いていて、状態が悪かったとは思えないのですが……。いずれにしろ、クイーンC(2月11日/東京・芝1600m)と百日草特別(2016年11月6日/東京・芝2000m)で見せたパフォーマンスからすれば、東京の2400mでこそ、本領を発揮できるタイプ。今回は遠征競馬になりますが、ソウルスターリング同様、この中間は意欲的な調整を重ねており、最大目標のオークスに向けて巻き返しのお膳立ては整っていると見ています。あとは、馬込みで闘争心を呼び起こす競馬ができれば、自慢の末脚が本番で炸裂するはずです」

市丸氏
「アドマイヤミヤビの桜花賞惨敗は、まずは馬場。次に、ハイペースが影響したのでしょう。この馬は、上がり33秒台で3勝しているように、スローの上がり勝負が一番向いている展開。オークスでは、舞台は府中、距離延長と、この馬にとっていい条件に変わります。もし当日良馬場となれば、最も狙える馬になると考えています」

 4位は、桜花賞を快勝したレーヌミノル。オークスでは距離延長が課題と見られ、戴冠を果たしながらランキング急上昇とまではいかなかった。

木南氏
「アエロリット(牝3歳)がGINHKマイルC(5月7日/東京・芝1600m)を制覇。クイーンC出走組から、2年連続で勝ち馬が出ました。あの時期の東京マイルをしっかり走れる馬は、その後も信頼できるという証(あかし)。同レースで4着と健闘したレーヌミノルも同様です。そのスピード能力の高さから、オークスの距離は明らかに長いと思いますが、クイーンC好走馬のオークス好走という例は過去にも多く見られ、そこは強調材料になると思います」

本誌競馬班
「桜花賞の勝利を素直に評価したいですね。脚質転換を図って、距離の融通性も増したように思います。オークスでは、再び気楽な立場で臨めそうなのもプラスに働くのではないでしょうか」

 上位4頭とはかなりのポイント差がある5位には2頭がランクイン。オークストライアルのフローラSを制したモズカッチャンと、3着フローレスマジック(牝3歳/父ディープインパクト)が入った。

吉田氏
「ローテーションはタイトながら3連勝という勢いを重視して、距離不安のある桜花賞馬よりもモズカッチャンのほうを上に見ました。ハービンジャー産駒ですが、胴長+脚長のスラッとしたシルエットのうえ、かなりトモ高の体形からすれば、瞬発力勝負を制したのは納得です。折り合いは不問で、距離延長は望むところ。好枠を引いて好位置で競馬ができれば、オークスでもノーチャンスではないと思います」

市丸氏
「フローラSは最内を走った馬が、1、2、4着に入線。インを走らないと、勝ち負けに加われないようなレースでした。そんななか、フローレスマジックだけが終始やや外目を通りながら、内を行った上位2頭と同タイムの3着。そのことを考慮すれば、評価を上げざるを得ないでしょう」

「ハイレベル」と言われてきた今年の3歳牝馬戦線がいよいよクライマックスを迎える。女王の復権があるのか、二冠馬が誕生するのか、はたまた再び思わぬ馬が台頭するのか、”樫の女王”争いの行方に注目である。