F1初開催となる第5戦マイアミGPは、アメリカの壮大なスケール感と、F1人気の沸騰ぶりを如実に物語るレースになるだろう。 NFLのマイアミ・ドルフィンズが本拠地としているハードロック・スタジアムを取り囲むように、その広大な敷地をサーキット…

 F1初開催となる第5戦マイアミGPは、アメリカの壮大なスケール感と、F1人気の沸騰ぶりを如実に物語るレースになるだろう。

 NFLのマイアミ・ドルフィンズが本拠地としているハードロック・スタジアムを取り囲むように、その広大な敷地をサーキットへと様変わりさせた。コースサイドにはビーチやマリーナ、ステージや観戦スイートが建ち並び、ひとり1万ドル(約130万円)を超えるチケットも驚くほどの勢いで売り切れたという。

 F1ドライバーたちは時差調整だけでなく、F1グループやチームのプロモーション活動も含めて早々に現地入り。様々なイベントに出演し、アメリカのF1ファンの声援に応えてきた。



多くのメディアから取材を受ける角田裕毅

 角田裕毅(アルファタウリ)はレース前週の金曜日にニューヨークを訪れ、ボクシングの試合を観戦したりショッピングをしたりと、アメリカの雰囲気を楽しんでからマイアミにやって来たという。

「トラックウォークもしましたが、すごくユニークなサーキットだと感じました。雰囲気も独特で、ターン12イン側のフェイクのアリーナやビーチなど、マイアミの雰囲気に合っていて、とてもいい仕事をしていると思います。

 マイアミは思っていたより暑くて、湿度が高いですね。レースではなくて、オフで訪れたい街です。実際ここに来てからの2日間、フィルミング(宣伝用撮影)だったり、イベントでマイアミをフルに楽しめていませんから。でも、食べ物がここまで美味しいとはまったく思っていませんでした」

 戦いの舞台となるマイアミ・インターナショナル・オートドロームは、全長5.412kmのなかに極端に長いストレート区間が2本ある。

 セクター1にはターン4〜5という250km/hオーバーの高速コーナーがあるが、セクター2には道幅が狭くツイスティな低速コーナーが連続するセクションもある。つまり、最高速なのか、低速コーナーなのか、高速コーナーなのか、セットアップの落とし所が難しいサーキットということになりそうだ。

バトルが増える可能性あり?

 それとは別に、ぐるりと左に回り込みながらブレーキングするターン7がカギになりそうだと、角田は見ている。

「ターン7は完全にブラインドで、コンシステント(安定的)に走るのが難しいでしょうから、エイペックスをミスしたりすると大きなタイム差につながる。毎ラップ完璧な走りを決めるのは難しいと思います。そこでミスをすれば立ち上がりが遅れてターン11で抜かれたり、(相手の)オーバーテイクチャンスを増やすコーナーなので、このサーキットでカギになるコーナーのひとつだと思います」

 ターン7からターン8のブレーキングやライン取りで挙動を乱してタイムロスを喫することもあれば、そこからの立ち上がりで遅れてターン11までの長いバックストレートで劣勢に立たされることもある。ターン7のミスは、ターン11にまで直結するというわけだ。

 しかし、低速セクションのあとには再び長いバックストレートがある。ここでDRS(※)を使って抜き返すことも可能だろうと、角田は予想している。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

「ターン11から16までのタイトコーナーでは、前走車のうしろを走ってもそれほどダウンフォースを失わないでしょう。ターン11で抜かれても(相手に)ついていって、ターン17で抜き返すチャンスはあると思います。なので、多くのバトル、オーバーテイクが見られるのではないかと思っています」

 だからこそ、ダウンフォースと空気抵抗を削ってストレートスピードを稼いだほうがいい、という考え方もある。各チームとも2回の金曜フリー走行を使いながらデータを収集し、ライバルたちの出方を見ながらセットアップを仕上げていくことになるだろう。

 路面舗装は非常にスムーズ。だが、コーナーによってはアウト側が下がるオフキャンバーで、マシンの挙動は不安定になりそうだ。

 ターン13〜15への登りやターン16への下りをはじめとして、わずかなアップダウンやアンジュレーションもある。シミュレーターだけでは把握しきれないサーキット特性の習熟も、金曜フリー走行からの重要なポイントになるだろう。初日の角田はコースを走り込み、フリー走行2回目で13番手につけた。

ガスリーと遜色ない走りも?

 そういう意味では、角田にとってはベテランたちとの経験値の差が縮まるチャンスでもある。

 昨年もバクー(第6戦アゼルバイジャンGP)やジェッダ(第21戦サウジアラビアGP)など、開催回数が少ないサーキットでは僚友ピエール・ガスリーと遜色ない走りを見せることも少なくなかっただけに、角田にとってはチャンスになるかもしれない。

 前戦イモラ(第4戦エミリア・ロマーニャGP)では、それを裏づけるような好走を見せた。

 チームにとって最もデータと経験値の多い地元イモラとは対照的に、まったくデータがないなかで戦うマイアミGPのレース週末では、ドライバー自身のスキルや成熟度もいつも以上に問われる。角田にとっては2年目の真価が問われるレースになりそうだ。

「自信という点では、イモラは今までで最高のフィーリングでした。去年のアブダビ(第22戦)とも違う自信です。

 今年はまったく新しいマシンだっただけに、自信をビルドアップし直す必要があったんですが、イモラではこれまでで最高の自信を持って走ることができました。これから様々なアプローチの方法を採って、ステップバイステップでさらに自信を深めていければと思っています」