現在はストリーマーとして活動するはつめはつめインタビュー後編ずっと叩かれ続けていた 現在、ゲーム実況などをライブ形式で配信するストリーマーとして活動するはつめ。これまで格闘ゲームのプロプレーヤーとしてさまざまな経験をし、そのなかで多くの問題…



現在はストリーマーとして活動するはつめ

はつめインタビュー後編

ずっと叩かれ続けていた

 現在、ゲーム実況などをライブ形式で配信するストリーマーとして活動するはつめ。これまで格闘ゲームのプロプレーヤーとしてさまざまな経験をし、そのなかで多くの問題にぶつかってきた。ゲーマーの健康問題はインタビューの前半で語ったとおりだが、プロプレーヤーや有名ストリーマーへの誹謗中傷もまた、大きな問題のひとつだ。「それは私が一番くらってきたんじゃないでしょうか」と語るはつめに、その現状を語ってもらった。

「格ゲーには、思想の流れのようなものがあるんです。(格ゲー界で)力を持っている人が、『この選手はダメ』というネガティブな発言をすると、みんながそう思ってしまうような風潮がありました。その面では結構陰湿だなと感じていました。その流れになってしまうと、名指しされた選手はずっと叩かれる人になってしまって、私もその叩かれる人に入るのが早かったので、ずっと叩かれ続けていました」

 その一方ではつめはこうも発言する。

「主要な大会で勝ち上がると、手のひらを返したように評価が変わることもありました」

 結果を出せば認められるが、一部の選手は誹謗中傷に合ってしまう。匿名性の高いネット上のコメントは、負の意見が増幅しがちだ。実力が認められることがあったとしても、プレーヤーがそれ以上に多くの精神的ダメージを受けてしまうのは想像に難くない。プレーヤー自身がオンラインでの発信や活動が多いこともあり、誹謗中傷のコメントを否応なく目にしてしまうという構造的な問題もある。

女性はなぜ少ないのか

 この誹謗中傷の余波は、eスポーツ界にひとつの問題を生んでいる。それが女性プロゲーマーの少なさだ。

「かつてすごく強い女性プレーヤーの方に、『なんでツイッターで私は(ゲーム上で)このIDでやっていると言わないの』と聞くと、『だって叩かれるし、別に顔も出したいと思わないし』という子がいました。彼女だけではなく、そう思っている子は結構多いですね。女性が叩かれがちなところに、わざわざ出ていかないですよね。普通の感性を持っていたら、そうなるんですよ」

 はつめが、誹謗中傷に対して自分なりの耐性を作り出すことができたのは、自身の性格が「相当プライドが高いし、完全に気持ちが吹っ切れているから」と分析するが、自分のIDを公表したくないと言う女性たちの思いもわかる。

 容姿を卑下するコメント、実力を疑うコメント、負けを嘲笑するコメントなどは、断じて許すべきものではない。彼女が感じた、誹謗中傷をする人の根底にあったのは、ほとんどが女性蔑視だったという。

「ゲームセンターのコミュニティーなど、ある種泥臭い男だけの世界が好きという人が一部いると思います。その人たちにとって、そのコミュニティーに女性がいることで、何かを壊されたと感じる人たちがいたのではないでしょうか。

 それから、単純に女性よりも弱いと認められない人たちが騒いでいる時もありました。本当に女性が弱かったら、何も言われないんですよ。多少強かったりすると、言われるんです。今になって思うと、8割は嫉妬だったんだなと思います」

 誹謗中傷の根源にある女性蔑視。eスポーツは老若男女、障がいのある人でも楽しめるスポーツとして今注目を集めているが、このような状況を踏まえると、誰にでも薦められ、心身ともに好影響をもたらす健全なスポーツだとは言い難い。

eスポーツの健全性

 ただ、そもそもeスポーツに健全性は必要なのだろうか。この質問を、はつめにぶつけてみた。

「本当に正直に言ってしまうと、eスポーツに健全性を求めると、成り立たなくなってしまう部分があると思います。サブカルチャー的で、アングラなところが好きだからゲームをやり始めた人が私の周りではすごくいっぱいいます。そこに健全性をぶつけたら、消滅しちゃうよねというのを、プロゲーマーの方と真剣に話をした記憶があります。そうなると寂しいなと思います」

 そして健全性を保てないひとつの要因として、収入面を挙げた。

「頑張れば、そこそこチャンスは落ちていると思いますが、貧富の差はすごくあります。競技だけでお金を稼げている人はまだ本当に少ないと思います。結局稼げないと、健全なメンタルも、健全な仕事もできないですから......。

 正直、私が今のeスポーツに望むのは、ある程度大会に出てお小遣いが稼げて、自分たちが持っているプラットフォームやSNSでお金が回って生活ができる。それ以上のことはないですね」

 2017年にプロゲーマーになってから今年で5年目。その間、濃密な時間を過ごし、さまざまな経験を積んだはつめは今、諦観にも似た気持ちを持っているが、そんななかでもeスポーツ界の変化については敏感に感じ取っている。

「この数年間、何も変化がなかったかというと、全然そんなことはありません。振り返ってみると、自分がプロになる前よりも、みんなお金が稼げているし、サポートする団体や携わる人も増えています。少しずついい方向に向かっているんだなとは感じます」

 厚生労働省の2019年の調査で10~29歳の平日1日あたりのゲーム時間が、男性は約2人に1人、女性は約5人に1人が2時間以上だったという結果が出ている。これら若年層がeスポーツのプレーヤーや視聴者となり、今後さらに拡大していくのは確実だ。

 はつめが実感したeスポーツの進化は、今後ますます加速することは間違いない。若年層のプレーヤーたちが、eスポーツ界をどんな未来にしたいのかを明確に持つことができれば、課題はひとつずつ解消され、一生涯に渡ってeスポーツを楽しめる未来に変わっていくのではないだろうか。

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■Profile
はつめ
1998年生まれ、千葉県出身。18歳でプロ契約し、格闘ゲーマーとして活躍。世界各地で開催されるCAPCOM Pro TourやEVOなどに参加。2018年にプロゲーミングチーム「父ノ背中」に加入。2020年夏にプロゲーマーからストリーマーに転身。2021年3月にチームを退団。現在はストリーマーとして活躍し、テレビ、新聞などにも出演している。