角田裕毅にとって、エミリア・ロマーニャGPは"地元"レースとなる。 昨年中盤にイタリアへ引っ越して以来、イモラにほど近いアルファタウリの本拠地ファエンツァに居を構えてきた。今年のエミリア・ロマーニャGPは、自宅から通う初めてのレースという…

 角田裕毅にとって、エミリア・ロマーニャGPは"地元"レースとなる。

 昨年中盤にイタリアへ引っ越して以来、イモラにほど近いアルファタウリの本拠地ファエンツァに居を構えてきた。今年のエミリア・ロマーニャGPは、自宅から通う初めてのレースということになる。

 もともと、サーキットを一歩出ればオンオフを切り換えるタイプだという角田にとっては「それほど大きな違いはない」と笑いながらも、やはり自宅ではリラックスすることができる。



角田裕毅は多くの経験を経てイモラに帰ってきた

「まぁ、サーキットに入っちゃえばそんなに違わないんですけど、サーキットを出て家に帰るとなると落ち着きますね。僕はサーキットを出た瞬間にオフになる。ホテルに帰ったとしてもオフなので。

 そこは変わらないんですけど、自分の家が汚いんで(苦笑)。いつもならホテルの人が綺麗にしてくれるから、どっちもどっちですね(笑)。ただ、いつもよりはリラックスできますね」

 前戦オーストラリアGPでは予選・決勝で思わぬ失速を強いられた。だが、コースオフの際に負ったフロアのダメージ、そしてセットアップ面の不備も見つかった。つまり、同じ問題の再発はないということだ。

 それよりも、角田としては気になるのは信頼性のほうだ。

「問題は信頼性ですね。毎週末、何かしらのトラブルが出てしまっているので、それが大きな問題です。早くそれが解決できることを願っています。

 パフォーマンス面でも、期待していたレベルには少し届いていないので、今週末に投入するアップグレードが機能してくれることを期待しています。今年初めてのスプリントレース週末がこんな(ウエット)コンディションでの開催なので、かなりチャレンジングですけど準備はできています」

 F1はヨーロッパラウンドの開幕を迎え、本格的な開発競争が始まる。ほぼすべてのチームがアップデートを持ち込むのが例年のことだが、今年は完全刷新のマシンだけに、この開発競争こそが例年以上にシーズンの趨勢を握ることになる。

角田は攻めの姿勢を貫けるか

 シーズン序盤戦でダウンフォース不足に直面したアルファタウリにとっては、ここで投入するフロアやフロントブレーキダクトのアップデートが効果を発揮するか否かが、大きな注目ポイントとなる。これがうまくいけば、開幕前テストから直面した空力性能不足を解決するべく進めてきた開発の方向性が正しかったと実証されるからだ。

 逆に言えば、失敗に終わればそれは今回のロスだけでなく、すでに進められている今後に向けた開発まで見直しを迫られることになってしまう。

 エミリア・ロマーニャGPは土曜日にスプリントレースが導入され、金曜日はたった1時間のフリー走行1回のみで予選に臨まなければならない。つまり、予選に向けたセットアップ作業を進めながら同時進行でアップデートを評価しなければならず、フェラーリのようにレース週末の運営を優先してアップデートを控えるチームもあるほどだ。

 しかし、中団グループのなかでもマシンパッケージで後れを取っているアルファタウリとしては、攻めの姿勢を採らざるを得ない。

「こういう(ウエット)コンディションなので、真の効果はわかりにくいかもしれません。予選である程度いい順位にいれば、アップデートがちゃんと機能したということになると思います。予選になってみないとわかりませんけど、今の状況だとちょっと雨が降りすぎですね。機能することを願っています」

 フリー走行は徐々に路面の水量が減り、ウエットタイヤからインターミディエイトタイヤへと変わっていくコンディション。

 しかし、2時間半後の予選は予想外の苦戦を強いられ、水量が減ってきたセッション終盤にうまくタイムを伸ばせず、16位でQ1敗退となってしまった。

「今回はアップデートを投入して、それによって中団上位争いに加われることを期待していたんですが、あまりいいパフォーマンスを発揮することはできませんでした。期待どおりのパフォーマンス向上とはいっていないのは確かです」

初体験の18インチウエットタイヤ

 その背景には、バルセロナ合同テストの最終日に散水車を使ったウエットテストが行なわれたが、アルファタウリはここで1周も走行できなかったというハンディがあった。そのため、今回が18インチウエットタイヤの初体験であり、使いこなすのに苦労したというわけだ。

 しかし、土曜には25周のスプリントレースが待ち受け、その結果で決勝レースのスターティンググリッドが決まる。角田には乗り越えなければならない難関が、まだまだ待ち構えている。

「どんな天候になるかわかりませんけど、まだレースは終わったとは思っていませんし、レースでのバトルに自信を持って臨みたいと思います。今日、何がよくなかったのかしっかり分析して、明日に向けてインプルーブしたいと思います」

 昨年はここイモラの予選Q1でクラッシュを喫し、自分の自信が過信であることに気づかされた。そこからは自信を失い、攻めることができなくなって速さを失い、さらに自信を失う......という負のスパイラルに陥ってしまった。

 そんな苦い記憶のあるイモラだが、昨年1年を通してそれを乗り越えてきた角田のなかでは、すでにいい記憶へと消化済みだ。

「その負のスパイラルがいろんなことを教えてくれて、ドライバーとしてすごく成長させてくれたので、僕はポジティブに捉えて、ドライバーとして成長させてくれたいいサーキットだと思っています」

 今週末はその地元イモラで、2年目の成長をしっかりと見せてくれるはずだ。