国内最高峰のモータースポーツ「スーパーGT」の2022シーズンがスタート。トヨタ・スープラ、ホンダNSX、日産フェアレディZ......それぞれ個性ある車両をベースとした3メーカーのマシンがしのぎを削るGT500クラスは、開幕戦から一歩も…

 国内最高峰のモータースポーツ「スーパーGT」の2022シーズンがスタート。トヨタ・スープラ、ホンダNSX、日産フェアレディZ......それぞれ個性ある車両をベースとした3メーカーのマシンがしのぎを削るGT500クラスは、開幕戦から一歩も引かぬバトルを演じた。

 スーパーGTは成績に応じてマシンに重りが搭載される「サクセスウェイトシステム」を導入している。ただし、シーズン幕開けとなる第1戦では当然、全車ウェイトは搭載されない。つまり、4月16日・17日に岡山国際サーキットで行なわれた初戦は"ガチンコ勝負"となる。



日産の新型Zが今季のスーパーGTで話題をさらっている

 3メーカーの実力が測られる第1戦を制したのはトヨタ勢。ナンバー14のENEOS X PRIME GR Supraが優勝を飾った。トヨタはここ数年、この岡山で圧倒的な強さを発揮しており、2020年にはトップ5、2021年はトップ4を独占するなど、今年で3年連続の開幕戦ウィンとなった。

 しかし、2番手以下を見てみると、昨年までとは随分と顔ぶれが違う。2位にはSTANLEY NSX-GT(ナンバー100)、3位にはMOTUL AUTECH Z(ナンバー23)と、ホンダ勢と日産勢が表彰台を奪い取った。

 開幕戦で各メーカー1台ずつが表彰台にのぼるのは、実に2010年以来のこと。シーズン前から関係者の間で噂されていた「3メーカー横一線」という勢力図は間違っていなかった。

 そのなかでも、第2戦以降に向けて期待を高めたのは日産陣営だろう。今年新たに導入した日産Zが予想を上回る走りを見せたからだ。

 昨年まで活躍していたGT-Rは、ライバルのマシンと比べて直線スピード勝負で劣る部分があった。だが、今年からZに変更する際、日産陣営はマシンの空力バランスを見直し、直線スピードの改善を図ってきたという。その進化ぶりはたちまち噂となり、シーズンオフのテストから「Zの直線スピードが速い」とライバルも警戒を強めていた。

開幕戦で見せた新型Zの底力

 ただその一方で、新型Zは低速コーナーの多いコースをあまり得意としていない印象もあった。3月に岡山国際サーキットで行なわれた公式テストでも、Zはトップタイムを記録できていなかったからだ。

 そして迎えた開幕戦予選。日産勢はリアライズコーポレーションADVAN Z(ナンバー24)が5番手につけたものの、エース的存在にある23号車は9番手でQ1敗退。さらにCRAFTSPORTS MOTUL Z(ナンバー3)も14番手に沈み、テクニカルなコース特性を持つ岡山で日産は劣勢かと思われた。

 ところが決勝になると、新型Zの底力が発揮される。

 進化した直線スピードを存分に生かしたレースを展開し、前半スティントでは3号車の追い上げがめざましく、徐々に順位を上げていく。また、各車がピットストップを終えた後半スティントに入ると、7番手スタートだったカルソニックIMPUL Z(ナンバー12)が2番手に浮上する快進撃を見せた。

 そして23号車は、残り20周を切ってからの接近戦で着実に順位を上げていき、最終的に3位でゴール。

「なかなか辛抱のレースで、決して楽な展開ではありませんでしたが、とにかくライバルのミスを逃さず着実に順位を上げることができたので、それが3位表彰台につながったのだと思います」(23号車の松田次生)

 後半にすばらしい追い上げを見せてサーキットを沸かせた松田の表彰台での笑顔から、新型Zがライバルのマシンと互角に戦える印象を受けた。

 松田の相棒ロニー・クインタレッリも、開幕戦の走りで確かな手応えを掴んだ様子だ。

「公式練習からクルマにポテンシャルを感じていましたが、Q1は僅差で突破することができませんでした。ただ(決勝は松田)次生選手のフィードバックのおかげもあって、僕のスティントではストレートでもパワーを感じ、クルマの戦闘力を感じられました」

 表彰台に立った23号車以外にも、3号車が5位、12号車は終盤にペースを落としたが7位でポイントを獲得。24号車はGT300クラスのマシンに追突されるという不運によって14位となったが、何事もなければトップ10圏内でフィニッシュできただろう。

王者トヨタの牙城を崩せるか

 GT-Rで臨んだ1年前の開幕戦、日産勢の最上位は7位だった。それを考えると、かなりの前進を果たしたと言える。予想以上の躍進に、今シーズンの期待は高まるばかりだ。

 そこで注目されるのは、5月3日・4日に行なわれる第2戦。約1.5kmのメインストレートを誇る富士スピードウェイが舞台となる。直線スピードを強化してきた新型Zの本領が存分に発揮されるサーキットだ。

 昨年までのGT500クラスでは、トヨタのGRスープラが直線スピードで優位に立っていた。しかし、開幕前テストでの走りを見ていると、GRスープラに匹敵するスピードを日産Zも記録している。トヨタのお膝元である富士で日産陣営がレースの主役に躍り出る可能性も十分にありそうだ。

 開幕戦では3メーカーほぼ横一線という結果となっただけに、次の第2戦が今シーズンの主導権争いのカギとなるかもしれない。ここ数年はトヨタとホンダの争いがメインだったが、今年はそこに日産が加わりそうだ。

「新型Zのデビューイヤーチャンピオン」実現に向けて、日産は悪くないスタートを切った。