Bリーグ2016-2017 クライマックス(3)チャンピオンシップ展望 NBLとbjリーグ──ふたつのリーグが統合して発足した「Bリーグ」は昨年9月にスタートしたレギュラーシーズンを終え、いよいよ5月13日から初代王者を決めるBリーグ・…

Bリーグ2016-2017 クライマックス(3)
チャンピオンシップ展望

 NBLとbjリーグ──ふたつのリーグが統合して発足した「Bリーグ」は昨年9月にスタートしたレギュラーシーズンを終え、いよいよ5月13日から初代王者を決めるBリーグ・チャンピオンシップ2016-2017(以下:CS)が幕を開ける。はたして栄光を掴むのは、どのチームだ?



初代王者の栄冠を手にするべく、B1強豪8チームが激突する レギュラーシーズンの成績上位8チームで争われるCS。クォーターファイナル、セミファイナルは2戦先勝方式、ファイナルは1戦のみで勝者を決める。

 NBAのプレーオフのように4戦先勝方式ならば、実力上位のチームが勝ち上がる可能性はより高い。しかし、2戦先勝となると多少チーム力は劣っても、勢いに乗って押し切ることも十分にあるだろう。

 実際、今季のNBAプレーオフ・ファーストラウンドが2戦先勝方式だったならば、8カード中3カードで勝ち上がるチームが変わる。またそのうちふたつは、シード下位チームがセカンドラウンドに進出ということになっていた。田臥勇太(栃木ブレックス/PG)が「ここまできたらレギュラーシーズンの順位なんか関係ない」と語っているように、シード上位だからといって断然有利とは言い切れない。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。



チーム名の丸数字はトーナメント内のリーグ戦順位 では、1戦目に勝利したチームが有利になるかといえば、そうとも限らない。クォーターファイナルとセミファイナルは2試合を終えて1勝1敗となった場合、日を改めずに前後半5分ずつの「3試合目」を実施する。この場合、選手の調子やシュートタッチがよく、明らかに勢いがあるのは2試合目に勝利したチームとなるだろう。先勝したからといって、一瞬たりとも気は抜けないのだ。

 さらにファイナルは一発勝負。CSに出場するチームの力は拮抗しているため、クォーターファイナルやセミファイナルでの戦績がどうであれ、ファイナルにたどり着きさえすれば、どのチームにも優勝の可能性は十分にある。ちなみに、ファイナルだけ1戦なのは、開幕戦と同様に記念すべき試合を地上波テレビで生放送するための配慮と言われている。

 では、クォーターファイナル4カードの見どころを、それぞれチェックしておこう。

川崎ブレイブサンダース(中地区1位)
vs.
サンロッカーズ渋谷(ワイルドカード2位)

 NBL最後の王者である川崎ブレイブサンダースは、今季のレギュラーシーズンでリーグ最高勝率.817(49勝11敗)を記録した。チーム1試合平均84.3得点と、その破壊力はリーグナンバー1だ。爆発的な得点力の源(みなもと)となっているのは、1試合平均27.1得点でBリーグ初代得点王に輝いたニック・ファジーカス(C)。得点ランク2位のダバンテ・ガードナー(新潟アルビレックスBB/C)が平均21.9得点、3位のジュリアン・マブンガ(滋賀レイクスターズ/PF)が平均19.5得点であることからも、ファジーカスがいかに圧倒的な得点能力を持っているかがわかる。

 しかも、対戦チームがファジーカスをダブルチームで守ろうとすれば、リーグを代表するシューター辻直人(SG)の長距離砲の餌食になってしまう。そのため、ディフェンスする対戦チームは常に頭を悩ますことになるだろう。CSが混戦になることは間違いないが、川崎が優勝候補の最有力であることは変わらない。

 一方のサンロッカーズ渋谷は中地区3位(32勝28敗)となり、ワイルドカードでぎりぎりCSに滑り込んだ。しかし、メンツを眺めてみれば、「もっと勝ち星を増やせたのでは?」と思えてならない顔ぶれが揃っている。

 シーズン途中で加入した213cmのロバート・サクレ(C)はロサンゼルス・レイカーズでプレーした経歴を持ち、帰化選手のアイラ・ブラウン(SF/PF)はメジャーリーグのカンザスシティ・ロイヤルズからドラフト指名を受けた異色のバスケ選手で、リーグ最高峰の身体能力を誇っている。さらにキャプテンの広瀬健太(SF)は今季のスティール王(平均2.0本)だ。ディフェンスでプレッシャーをかけて川崎を浮き足立たせ、サクレの積極的なオフェンスでファジーカスをファウルトラブルに陥れることができれば、勝敗の行方は一気にわからなくなる。

アルバルク東京(東地区2位)
vs.
三遠ネオフェニックス(中地区2位)

 Bリーグ元年である今季、もっとも多くの観客を沸かせたのは、東地区2位(44勝16敗)アルバルク東京のディアンテ・ギャレット(SG)ではないだろうか。1月のオールスターに最多得票で選ばれたように、ユタ・ジャズなどでプレーした経験を持つギャレットは、その華麗なドリブルテクニックでまさに見るものを虜(とりこ)にした。

 ただ、対する中地区2位(33勝27敗)の三遠ネオフェニックスにも注目すべき外国人選手がいる。それはジョシュ・チルドレス(SF)だ。BリーグにNBA経験者は数多くいるが、そのなかでもっとも輝かしい経歴を持つのが彼だろう。2004年のNBAドラフト6位でアトランタ・ホークスに指名され、オールルーキーセカンドチームにも選出されている実力者である。センター以外のすべてのポジションをこなすマルチな才能はBリーグ随一だ。

 勝敗を占うなら、田中大貴(SG)や竹内譲次(PF)といった日本代表選手を抱える東京のほうが一枚上と言える。三遠が勝つためには、太田敦也(C)ら日本人プレーヤーの奮起が不可欠だ。

シーホース三河(西地区1位)
vs.
琉球ゴールデンキングス(西地区2位)

 日本代表のエースであるスラッシャー比江島慎(PG/SG)と、平均16.7得点で得点ランキング8位(日本人選手1位)に食い込んだシューター金丸晃輔(SG/SF)を軸とする西地区1位(46勝14敗)のシーホース三河は、リーグトップの日本人タレントを擁している。NBL時代からの常勝軍団は、プレーオフに照準を合わせた戦い方も心得ているだろう。また、2月末に故障して欠場の続いていた橋本竜馬(PG)がCSに間に合ったのも大きい。

 昨季のNBLファイナル、三河は2連勝から3連敗を喫して川崎に敗れ、「NBL最後の王者」となれなかった。比江島が「Bリーグ初代王者へのモチベーションは、僕たちがどのチームよりも高い」と語るように、虎視眈々と戴冠を狙っている。

 一方の琉球ゴールデンキングスは、レギュラーシーズンの最後まで西地区2位の座を大阪エヴェッサと争い、直接対決となった5月6日~7日の2試合を連勝(29勝31敗)してCS出場を決めた。ある意味、もっとも勢いのあるチームと言えるだろう。

 特に5月6日の一戦は、最大20点のリードを奪われるものの、そこから奇跡的な大逆転で勝利をもぎ取った。三河との今季レギュラーシーズン対戦成績は1勝5敗と分が悪いが、沖縄は熱狂的なファンを持つことで知られている。三河のホーム「ウィングアリーナ刈谷」で行なわれる試合には、沖縄からも多数のファンが詰めかけることは必至。琉球の風に吹かれ、ふたたびミラクルを起こす準備はできている。

栃木ブレックス(東地区1位)
vs.
千葉ジェッツ(ワイルドカード1位)

 これがファイナルだと言っても、違和感はまったくない。クォーターファイナルの目玉は、まさしくこのカードだ。

 東地区・中地区・西地区の3地区で、断トツでレベルが高かったのが東地区。千葉ジェッツは栃木ブレックス(46勝14敗)、東京に続く東地区3位(44勝16敗)となり、ワイルドカードでのCS出場となった。ただ、栃木とはレギュラーシーズンで4勝4敗と、成績はまったくの五分。さらに千葉はオールジャパン2017で栃木、三河、川崎と居並ぶ強豪たちを退けて優勝している。シード上位は栃木だが、実力は互角と言っていいだろう。

 注目すべきは、千葉・富樫勇樹と栃木・田臥勇太のタイプの異なるポイントガード対決だろう。富樫は1on1やピック&ロールを駆使し、スリーポイントシュート、フローターと多彩なシュートで自ら得点を量産する攻撃型PGだ。また、平均13.2得点と高い得点能力だけでなく、富樫を警戒してマークが集中すればノーマークの味方を見つけ出してパスをさばく。リーグ3位の1試合平均4.0本の成績が示すように、アシスト能力も高い。

 一方、田臥はバランス型のPGだ。自らの得点よりもチームオフェンスを重視し、インサイド、アウトサイドとパスを散らす。1試合平均3.4本のアシスト数は富樫に負けているものの、誰もが予想しないタイミングやスペースにピンポイントのパスを通す能力は今なおリーグナンバー1。なにより、リーグの顔的存在でありながらルーズボールに泥臭くダイブする姿は、チームを誰よりも鼓舞し続ける。どちらのPGがチームを勝利に導くか見逃せない。

 クォーターファイナルの勝者を予想することすら困難なCSで、優勝チームを当てるのは不可能に近い。それでも強引に予測するならば、川崎、三河、千葉、栃木の”四つ巴”の争いか。特に、優勝候補同士の激突となる栃木vs.千葉の勝者が勢いに乗るのは必至で、セミファイナル以降の中心的存在になることは間違いない。

 ファイナルは5月27日、国立代々木競技場・第一体育館。ティップオフは15時10分。そのとき、コートに立っている2チームは? そしてBリーグ初代王者の栄冠を手にするのは? その名を歴史に刻むための激戦が、いよいよ幕を開ける──。

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