電気自動車のF1とも言える「フォーミュラE世界選手権(FE)」のイタリアラウンドは、4月9日・10日の週末にダブルヘッダーとして開催された。第5戦は前戦と同じ、首都ローマの街中に作られたストリートコースで行われた。レースでは、「電費」の良い…

電気自動車のF1とも言える「フォーミュラE世界選手権(FE)」のイタリアラウンドは、4月9日・10日の週末にダブルヘッダーとして開催された。第5戦は前戦と同じ、首都ローマの街中に作られたストリートコースで行われた。

レースでは、「電費」の良い走りで第4戦を制したミッチ・エバンス(ニュージーランド)が再び戦略的な走りを披露。僅差で争われることの多いFEには珍しく、危なげない展開で2連勝を飾った。終盤までペースを抑えてエネルギー(バッテリー充電量)消費を抑えるとともに、モーターの最高出力を220kWから250kWにアップできる「アタックモード」も温存する頭を使った走りを見せた。

◆ワンメイクのバッテリーをいかに効率よく使うかが鍵
FEは、基本的に共通部品によるワンメイクのマシンで戦う。モーターに電気を供給するのはマクラーレン(アプライド・テクノロジー社)製のバッテリーで、まったく同じ仕様が全車両に搭載されている。45分 + 1周のレースをできるだけ速く、かつ、走りきるためにはエネルギーの使い方が鍵になる。

レース展開に応じて、パワー(電力)を使ったりセーブしたりするタイミングを戦略的に判断することが重要だ。また、市販のハイブリッドや電気自動車(EV)同様、減速時の回生も行われる。状況に応じた頭脳的な走りが結果を大きく左右するのがFEのレースなのだ。

3年前のメキシコでは、トップを快走していたパスカル・ウェーライン(ドイツ)がチェッカーフラッグ直前で「電欠」によりスローダウン、初優勝を逃したことがある。今年の開幕戦でも、中盤まで3位を走行していたポルシェのアンドレ・ロッテラー(ドイツ)が終盤にずるずると後退。13位で完走するのがやっとだった。

これは、セーフティカー(SC)先導走行中の「電費」計算をチームが誤り、中盤にエネルギーを使い過ぎたためと言われている。

◆「バッテリーに優しい」走りのエバンスが連勝
優勝したエバンス(ジャガーレーシング)は、第4戦同様に「バッテリーに優しい」走りを見せた。常にライバルたちよりも1~2%エネルギー(電気)を多く残しながら粘り強くトップ争いを演じた。前戦は予選の走りが振るわず9番グリッドスタートだったが、第5戦は4番手と好位置からのスタートだったのも快勝の要因だろう。

途中、アタックモードを使ったライバル達に抜かれるシーンもあったが、抜きづらいストリートコースの特性を活かしてロスを最小限に抑え、終盤の勝負に備えた。レース終了まで8分を残したところでアタックモードに入ると、難なくトップに立ち後続を少しずつ引き離していった。ライバルたちはすでにアタックモードを使い終わっており、成す術はなかった。

2位はポールポジションからスタートしたジャン=エリック・ベルニュ(フランス)、3位には前戦でも2位でゴールしたロビン・フラインスが入り2戦連続で表彰台を獲得した。

一時はトップに立ったアンドレ・ロッテラー(ドイツ)は終盤ペースが落ちて4位に終わった。2位が7回など速さは見せるものの、FE4年目でまだ勝ちに恵まれないロッテラー。彼にとっても、勝利の鍵はスピードとエネルギー効率のバランスではないだろうか。

このように、FEは伝統的なモータースポーツの魅力に加えEVならではの要素も含む、まさに次世代のレースと言えるのではないだろうか。また、レースのための高効率なパワートレイン開発は、市販の電気自動車に採用される技術の発展にも貢献するだろう。今後も、「電気のF1」については独自の視点からレポートしていきたい。