シーズンも終盤になったリーガエスパニョーラ。だが、試合数の多いセグンダ・ディビシオン(2部)は熾烈な戦いが続いている。鈴木大輔が所属するナスティック・タラゴナも、降格を回避するための厳しい試合が続く。 柏レイソルからスペインに渡って2…

 シーズンも終盤になったリーガエスパニョーラ。だが、試合数の多いセグンダ・ディビシオン(2部)は熾烈な戦いが続いている。鈴木大輔が所属するナスティック・タラゴナも、降格を回避するための厳しい試合が続く。

 柏レイソルからスペインに渡って2シーズン目となる鈴木が、夏の近づきを感じさせる暖かい日差しのなか、セグンダのレベルやこれまでのスペインでの戦い、目指しているセンターバック(CB)像などについて話してくれた。



チームの守備の要として出場を続ける鈴木大輔(ナスティック・タラゴナ)――セグンダはどんなリーグですか。

「インテンシティが激しく、球際、局面の激しさがスペインではとても印象に残りました。そこが一番違うのかな、と」

――Jリーグとはどこが違います? もしタラゴナがJのチームとやったらどのレベルになるのでしょう。

「日本に行ったらわからないけど、Jリーグをこっちで開催していたらタラゴナは上に行くと思います。レベルの違いは感じていません。こっちのサッカーは激しくて攻撃的、ハイプレスの中でかわしていくチームが多い。セグンダだけど、蹴り合うサッカーはしていません。サッカーの違いがあるから、比べられないところはあるけど」

――セグンダとはいえレベルは高い?

「非常に高いと感じています。ほんと、こっち来て、やられることばっかりです。毎試合毎試合やられたな、と。その分、自分の引き出しは多くなっているとは思っています」

――攻めにしても、いろいろな角度から攻めてきますよね。

「あります。うまそうに見えなくても体の入れ方がしっかりしてるとか、ボールを失わないことに関しては体に染み付いているのかな、と。取れると思ったボールも、クルッとターンされてかわされたりすることが、最初からあった。

――例えば、ルイス・スアレス(バルセロナ)などは、CBとしては最もやりにくい相手なんでしょうね。

「そうですね。まず体をぶつけて、自分の間合いを作ってから、相手が来たタイミングでクルッと反転する。日本にも同じようなFWがいるとは思うけど、こっちはもっと慣れているというか、それを好む選手が多いですね」

――空間を支配するという感覚ですか。

「ボールが入る前に勝負がついているというか。だから、こっちもボールが入る前に勝負をつけにいかないといけない。それには自分の間合いを理解していないといけない。そのレベルになると、相手はDFを見ないで、感じてやってくる。そういうのはすごいなと思います」

――キック&ランのサッカーはあまりない?

「どことやっても、しっかりサッカーをしてくるのを感じます。組み立てにしてもそうだし、後ろで守備を固めるチームがあまりない。落ち着く時間はそんなにないけど、それでもサッカーをしようという意思をどのチームも持っている」

――守りづらいのは個人に当ててくるほうですか、パスを回してくるほうですか。

「タラゴナは前から行くのが好きなので、そのときは蹴ってくる相手の方がまだ対応しやすいです。ショートパスで剥がされると、ラインが高いので後ろにスペースがあり、後ろに広大なスペースを残して1対1の勝負になる。スペインは1対1に長けている選手が多い。ドリブルからシュートまで持っていくのがうまいので、そういった形になって苦労している試合は多いです」

――判断のスピードも求められますね。

「試合終わった後は、頭が疲れていますね。プレッシャーをかけにいって、その後、ポジショニングを取ってとか、やるべきことが多いので、CBですけど、試合の後は本当に疲れますね」

――日本代表入りを期待する声も多いと思います。

「今の自分の目標は、スペインでしっかりと自分のプレーを見せられるか、楽しんで挑戦できるか。もちろんサッカー選手として代表でプレーすることは目標だけど、今は余裕がなくて、どれだけこのチームで小さくならずに自分を出していけるかにフォーカスしています。期待されることは、自分がやってきたことに対してのものだから、嬉しいですが」

――海外のサッカーは日本にいたときから気になっていたんですか。

「選手として、自分はどんな立ち位置なんだろうというのを知りたかったのが大きいですね。自分の人生的に、海外でプレーする自分ってどんなものなんだろうというのを見たかった。どういう自分になるのか、新しい発見があるのか、そういった好奇心が大きかったんです」

――そんな好奇心を満たすだけの経験をしていますね。

「まだ1年弱とわずかな時間だけど、内なる闘争心というところはこっちで出すようになってきたと思います。日本だと、特別に主張しないでも実績からリスペクトされてプレーできていた自分がいた。こっちでは何の経験もなく、周りからのリスペクトを勝ち取りにいかないといけないところから始めました。闘争心を内に秘めながらも、出すときは出して、冷静になるときは冷静になって……というのをやってきた。そういう意味では、もともといた”自分”というのに、こっちに来たことで気づいたのかなと」

――日本での鈴木大輔とスペインでの鈴木大輔は違う、と。

「似ているけど違いますね。けど、その違いは自分の中にあったんだなと思います。こっちで出している自分も、昔から持っていたんだなと気づいた。きっかけがあれば、気づくものだと思います」

――毎試合、結果を求められていますが、そのプレッシャーは厳しいですか。

「CBなので、毎回、反省しています。もしミスが10あったら、それをゼロに近づけていけるように試合をして、自分の型を作っていく。CBというのは、やられないと始まんないなとも考えています。いろんなやられ方をして、いろいろな選手と対面して型を作っていくしかない。守備は経験のポジションだと言われますが、それも一理あるなと思っていて、いい試合をしてもまだまだ足りないなと常に反省をして、ミスをゼロに近づけていく感じです」

――理想とするのはどんなCB?

「セルヒオ・ラモス(レアル・マドリード)みたいに点も取れる存在感のあるCBというのはあるけど、チアゴ・シウバ(パリSG)のように、簡単そうにやっているんだけど、どしっと腰を据えている感じの選手になりたいですね。理想は内なる闘志を秘めて、どんと構えているタイプのCBです」

――スペインではCBのフィードがとても大事だと言われます。

「まだまだですけど、よくなっているとは思います。どう繋げばゴールに近くなるか、それは見えてきている。1人飛ばしてサイドを使ったり、ボランチに当てて、また動き出したやつに当てたりとか。簡単に回したり、ラインを越えたり、プレーの幅は増えているかなと。フィードに関しては練習から学んだものも大きいけど、もちろん、自分で試合の中から気づいたものもあります」

――スペインのサッカーは攻撃的と言われますが、前提にしっかりとした組織があります。

「組織的なところは細かいですね。彼らは自然に同じ絵を描けていますよね。その能力は自分も身につけたいです」

――スペインに来る前にしとけばよかったなと思うことはありますか。

「言葉は間違いないでしょうね。スペイン語をもう少しやっていたら、とは思います。触ってはいたんですけどね。それだけでも自分の中では違った。もし何にも手を付けないで来ていたらもっと大変だったと思います。ただ、言葉は枝葉の部分だと思う。もっと大事なのは覚悟だと思います。

 こっちに来て、何がしたいのか。その覚悟をして来ることが大事かなと。それがあれば、苦しくても割と楽しめると思う。逆にそれがないと、語学がちょっとできたとしても全然話にならないと思います。これは持論なんですけど、覚悟がある人は、きつくなったときに原点に立ち返ることができるから」

――鈴木選手も何回か原点に立ち返りましたか。

「オレはその都度、原点に戻っていますよ。海外にチャレンジするんだと、勢いでこっちに来たときのひとつひとつの目標を思い出すと、元気が出る。足を削られても、ちょっと試合に出られなくても、仲間にミスを自分のせいにされても、『まあ、頑張るか』と」

――鈴木選手を見に来る日本のファンも増えたのでは?

「最近、増えましたね。『柏から来ました』とか、すごく嬉しいですよ。モチベーションは間違いなく上がりますね」

――そして日本でも最近、セグンダの試合の一部がテレビで見られるようになりました。

「楽しみな半面、責任感は増しますね。ただ自分はこのスペインでのプレーを楽しんでいるし、挑戦している。それが一番だと思っています。だから日本で自分の試合を見られることも、楽しんでやろうと思っています」

――最後にCBをしている子どもたちにメッセージを送るとしたら?

「人にもよりますが、CBのポジションは落ち込むことが多いと思うんです。結構わかりやすくダメなところが評価されてしまうから。だからメンタルの部分を大事にしてほしい。やられた経験がCBを強くしてくれると思っているので、いいCBになるんだったら、いっぱいやられて失敗を糧(かて)にすることが大事。だから、やられたときには落ち込むのではなく、次の試合のためのものだと考えてほしいなと思います」