バレーボールの世界クラブ女子選手権2017が9日、神戸グリーンアリーナで開幕した。 この大会は国際バレーボール連盟(FIVB)が、国際サッカー連盟(FIFA)が主催するクラブワールドカップのような大会を目指して、1991年から始められ…

 バレーボールの世界クラブ女子選手権2017が9日、神戸グリーンアリーナで開幕した。

 この大会は国際バレーボール連盟(FIVB)が、国際サッカー連盟(FIFA)が主催するクラブワールドカップのような大会を目指して、1991年から始められたもの。1992年、1994年に開催された後はしばらく途切れていたが、2010年に16年ぶりにドーハで開催され、以降は毎年行なわれている。



NECのエースとして世界クラブ選手権に臨む古賀 サッカーのクラブワールドカップ同様、クラブチームの世界一を争うこの大会は、各大陸枠と開催国枠、ワイルドカード出場枠を加えた計8チームが出場する。今大会で初めて日本での開催が実現したことで、日本からは開催国枠で選ばれた久光製薬スプリングスと、昨年のアジアクラブ選手権で王者になったNECレッドロケッツの2チームが参加することになった。

 その他、レクソナ(ブラジル・南米クラブ選手権優勝)とワクフバンク・イスタンブール(トルコ・ヨーロッパチャンピオンズリーグ優勝)、ワイルドカードで出場する、エジザジュバシュ・イスタンブール(トルコ)、ボレロ・チューリヒ(スイス)、ネスレ・オザスコ(ブラジル)、ディナモ・モスクワ(ロシア)が、まずは2グループに分かれて予選ラウンドを戦う。

 各国代表選手が名を連ねる「世界選抜」とも言うべきクラブが集まっているため、大会のレベルは非常に高い。その中でも優勝の大本命は、昨夏のリオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得した中国のエース、シュテイが所属し、ヨーロッパチャンピオンズリーグを勝ち抜いたワクフバンクになるだろう。

 他にも、スイスのボレロ・チューリヒは開催国枠でこの大会に3度出場した経験があり、国内では2012年1月から185連勝中の強豪だ。また、ブラジルのレクソナにも注目したい。このクラブの監督は、「世界最強」のブラジル男女代表を長年率いてきた、ベルナルド・レゼンデ氏。昨夏に代表監督を引退しているため、新たにこの大会にかける思いもひとしおだろう。

 ボレロ・チューリヒ同様、過去3度の出場経験がある久光製薬は、今年度から全日本の監督となった中田久美前監督のもと、この大会を「世界戦略のひとつ」と位置づけてきた。中田前監督は、「私たちの目標は世界クラブで勝つこと」と目標を掲げ、V・プレミアリーグもその過程であるとした。そのため、黒鷲旗(くろわしき)大会と日程がかぶった2014年には、世界クラブ選手権を優先して黒鷲旗大会を欠場している。

 それほど重要視して臨んだ過去3度の大会では、組分けの不利もあって、強豪クラブに金星を挙げながらも表彰台に上ることはなかった。そのチームで活躍が期待されるのが、今年度、3年ぶりに全日本に選出されたウィングスパイカーの新鍋理沙(しんなべ りさ・26歳)だ。

 日本のバレー選手の中でも173cmと小柄な新鍋にとって、世界クラブ選手権で戦う相手は軒並み自分より長身な選手ばかり。代表の試合よりもその差は顕著と言えるかもしれない。9日のレクソナとの開幕戦も、本領が発揮できぬまま1-3で敗れた。



攻守で活躍が期待される久光製薬の新鍋 しかし新鍋は、「自分たちのやってきたバレーは世界に通用すると思っています。久光の『ワンフレームバレー』で、世界に挑みたい。ディグ(スパイクレシーブ)や、つなぎで相手を上回りたいです。今日の個人的な出来は散々でしたが、チームとしてはいい場面もあったので、明日からは修正していきたい」と意気込む。

 新鍋は背は低いものの、「うまさ」には定評がある。ロンドン五輪で銅メダルを獲得した際には、攻守両面で活躍し、雄叫びを上げながらスパイクを打ち込む姿が印象的だった。これからの試合で、気迫のこもったプレーを見せてくれるだろう。

 もうひとり、初めて世界クラブ選手権に出場するNECの古賀紗理那(20歳)にも注目したい。古賀は、熊本信愛高校時代から「次世代の全日本を背負う人材」として脚光を浴び、NEC入団後、約1カ月でデビューを果たした。2014-15シーズンの久光製薬とのVリーグ決勝では、新人とは思えないめざましい活躍を見せ、「久光製薬が圧倒的有利」という下馬評を覆してチームに10年ぶりの優勝をもたらしている。

 全日本では、サーブレシーブを担うアタッカーとして、2015年夏のワールドカップで活躍。リオ五輪でも主力となることが期待されたが、五輪の世界最終予選と、その後に行なわれたワールドグランプリで思うようなプレーができず、代表メンバーから漏れた古賀は夏場を日本で過ごすことになった。

 傷心の古賀を、NECのチームメイトたちは「お帰り」と迎え入れた。その恩返しと、「こんなに温かいチームでよかった。このチームで勝ちたい」と再起を誓い、今年度はMVPを獲得するなどチームのリーグ優勝に大きく貢献した。

 世界相手にも通用するところを見せたいNECだが、Vリーグファイナルステージのファイナル6と決勝で古賀と共に得点源となった、助っ人外国人選手のエミリヤ・ニコロバはいない。純日本人の戦力で挑んだオザスコとの開幕戦は0-3で完敗したものの、古賀は前を向いていた。

「『表彰台に上ろう! 上れるんだ!』と声をかけ合いながら、この大会に向けて準備を進めてきました。初戦ということで硬さがあったのは否めないですね。今日は高いブロックを相手に、ブロックを利用して打とうと思っていたのですが、相手にノンストレスでいかれてしまった。明日以降は相手をイライラさせるような攻撃を心がけ、NECらしい泥臭いバレーを展開していきたいです」

 大会は、順位決定戦を含めて14日まで行なわれる。2日目となる10日、NECはボレロ・チューリヒに、久光製薬はディナモ・モスクワにそれぞれ敗れて5位-8位の順位決定戦に回ることになった。それでも長年、女子バレー界のエースとして活躍した、木村沙織の抜けた代表チームの未来を占う意味でも、新鍋、古賀には世界を驚かせるプレーを期待したい。