メルボルンは3年ぶりのグランプリ開催に沸いている。 チケットは完売。街中のホテルやレンタカーもほぼ完売。木曜からサポートレースのセッションが行なわれ、ファンゾーンでは様々なサービスが始まり、大勢のファンが詰めかけて3年前とまったく同じかそ…

 メルボルンは3年ぶりのグランプリ開催に沸いている。

 チケットは完売。街中のホテルやレンタカーもほぼ完売。木曜からサポートレースのセッションが行なわれ、ファンゾーンでは様々なサービスが始まり、大勢のファンが詰めかけて3年前とまったく同じかそれ以上の熱気に包まれている。

 パドックの入り口に続く『メルボルンウォーク』では、待ち受けるファンにF1ドライバーたちが1人ひとりサインやツーショット撮影などのファンサービスを行ない、人気のドライバーがやってくればあちこちで歓声が上がる。

 メルボルンは完全に3年前の状態に戻った。"お祭り"としてのグランプリの復活だ。その瞬間を待ちわびていたオーストラリアの人々の期待感は非常に高い。



メルボルンウォークでファンと交流する角田裕毅

 角田裕毅にとっては、初めてのオーストラリアGPとなる。

 学生時代に修学旅行で来たことがあるとはいえ、メルボルンも初めてなら、アルバートパークを走るのも初めての体験となる。

 アルバートパークという公園の周遊路を使った半公道サーキットで、それゆえに通常のグランプリサーキットほど走行経験が豊富なドライバーは少ない。路面のグリップは低く、路面にはカマボコ状の傾斜がある。それをいかにうまく使うか、経験がモノをいうサーキットだ。

 今年はサーキットの各所が改修され、フラットでストップ&ゴー的な特性から、やや高速寄りのサーキットへと変化した。

「前までのレイアウトに比べるとかなり速くなって、全体的にハイスピードサーキットになったかなという印象です。4DRS(※)ゾーンというのも初めてですし(安全上の理由からグランプリ2日目からDRS区間は3箇所に変更)、予選でちゃんと開くのを忘れないようにしないといけないなと思っています(苦笑)」(角田)

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 最大の変化は、ターン9〜10というタイトシケインがカットされ、長いストレートが4本というレイアウトになった。そこにそれぞれDRS区間が設定され、激しいバトルが繰り広げられることになりそうだ。

グリップ不足に改善の糸口

 それだけでなく、タイトコーナーのイン側が大きく広げられて、緩やかな形状になった。

 これによってターン1は17km/hアップで183km/h、ターン6は7.5メートルも拡幅されて70km/hアップの219km/hで通過するコーナーになると予想されている。最後のストレートエンドであるターン11は、従来よりも奥まで行って深いターンアングルでタイトに曲がるコーナーになり、15メートル幅に広げることで複数のレーシングラインが可能になってバトルの可能性が広がっている。

 前戦サウジアラビアGPで角田は、予選・決勝ともにマシントラブルで走行することができなかった。だが、開幕戦バーレーンGPよりもマシンが進歩しているという手応えは掴んでいる。

「僕のフリー走行でのパフォーマンスも、予選・決勝でのピエール(ガスリー)のパフォーマンスも、ポジティブな兆候は見えました。ペースは間違いなくバーレーンの時よりもよくなっていましたし、FP1からコンペティティブでした。

 僕自身としても自信をビルドアップできていたので、そのあとにあんなことになってしまって残念です。でも、全体的にはポジティブな手応えを掴むことができましたし、オーストラリアGPに挑むのが楽しみです」

 開幕戦で感じていた高速コーナーでの全体的なグリップ不足、つまりダウンフォース不足は、サウジアラビアGPでは改善の糸口が見え始めていたという。

「やっぱり中速、高速コーナーでのダウンフォース量が、ほとんどのチームに少し劣っているかなというのは感じているので。裏の高速S字(ターン9〜10)とか、ターン1とかターン6では苦労するかも知れません。

 ただ、サウジアラビアではほとんどが高速コーナーというなかで割といいパフォーマンスが発揮できていたので、走ってみなければわからないです。(ダウンフォース不足で)スライドしていても、マシンバランスがよければそれなりに補えますから。今回もそんなに悪くなるとは思っていないですね」

FP1でガスリーを0.5秒上回る

 角田にとっては初体験のサーキットだが、本人に焦りはない。昨シーズン新人として多くの苦労をしてきた経験が、今年の冷静沈着な角田を形成しているからだ。

「また新しいサーキットでのレース週末なので、落ち着いて徐々にビルドアップしながら組み立てて、もちろんQ3進出とポイント獲得を目指して頑張りたいと思います。去年はいろんなサーキットが初めてで、うまくいったところもいかなかったところもありましたが、それを踏まえてどういうふうに組み立てていけばいいかはある程度わかっているので、それに従ってやっていきたいと思います」

 金曜のフリー走行は走り出しからまずまずのフィーリングを掴み、FP1ではマシンのナーバスさに苦戦するガスリーを尻目に0.5秒も上回ってみせた。しかし、FP2ではソフトタイヤのアタックランで思うようにタイムを詰められなかった。

「セットアップもまだまだだと思いますし、僕自身のドライビングとしてもまだまだインプルーブしなければならない箇所はあります。FP2の走り始めのハードでの走行もかなりよかったと思いますし、まだまだ改善できるところはあるので、Q3進出を目指してそのあたりを見直していきたいと思っています」

 その反省を踏まえ、土曜のFP3では10番手を記録。惜しくもQ3進出はできなかったが、期待のもてる土曜日となった。