第36節が終わり優勝争いではバルセロナとレアル・マドリードが同勝ち点で並んでおり、ヨーロッパリーグ(EL)出場権争いの方はビジャレアルとアスレティック・ビルバオ、レアル・ソシエダが同勝ち点で並ぶ可能性がある。これはつまり、同勝ち点チームの…


 第36節が終わり優勝争いではバルセロナとレアル・マドリードが同勝ち点で並んでおり、ヨーロッパリーグ(EL)出場権争いの方はビジャレアルとアスレティック・ビルバオ、レアル・ソシエダが同勝ち点で並ぶ可能性がある。これはつまり、同勝ち点チームの順位付けをどうするのかという、リーガの規定が決定的な意味を持つということである。

 このテーマは日本でも多いに語られているが、誤りや混乱もあるようだ。なぜなら、引用元であるべきスペインサッカー連盟の規定の日本語訳や解釈が間違っていたり、日本語の別の出典を孫引きして紹介しているケースがあるからだ。リーグのコンペティション規定が含まれるスペインサッカー連盟の『一般レギュレーション』は164ページもあり、私も監督ライセンス取得時に読まされたが、今回これを改めて読み直した。以下に紹介するのが、リーガの順位決定方式の「決定版」である。

 まず2チームが勝ち点で並んだ場合。

 同レギュレーションの第201条第2項にはこうある。

まず「当該2チーム同士の対戦の得失点差で決める」。それで差が付かない場合は「全試合通算しての得失点差で決める」。それでも引き分けの場合は「全試合通算して得点の多い方が上位」となる。

これをバルセロナとR・マドリードが同勝ち点で全試合を終了したと仮定して適用してみよう。

これは最初の規定であっさり片が付く。直接対決(1ー1、2ー3)の得失点差を見るとバルセロナが+1、R・マドリードが-1。よって、バルセロナの優勝である。つまり、ルイス・エンリケ監督のチームが残り2試合に全勝した場合、ジネディーヌ・ジダン監督のチームが優勝するためには残り3試合で2勝1分以上、2勝1敗ではダメというわけだ。

 よく誤解されているが、チャンピオンズリーグ(CL)やEL、コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)で考慮される「アウェーゴール」という概念はリーガにはない。仮にサンティアゴ・ベルナベウでの結果が2ー2だったとすると、CLならアウェーゴール差でバルセロナの勝ち抜きだが、リーガの場合は得失点差0で並ぶことになって次の規定「全試合通算しての得失点差で決める」へ行くだけである。

 では、3チーム以上が並んだ場合はどうなるのか?

 第201条3項にはこうある。

 まず「当該チーム同士の対戦の勝ち点数で決める」。それが同点の場合は「当該チーム同士の対戦の得失点差で決める」。それでも決まらなければ「全試合通算しての得失点差で決める。それも同点なら得点の多い方が上位」。さらに、最後の手段として「連盟の計算法によるフェアプレーポイントで決める」。以上の規定は「勝ち抜き方式」で適用される。これは一度勝ち上がった(あるいは脱落した)クラブはそれに続く計算から除外されるという意味である。

具体例を見てみよう。

 ビジャレアル、A・ビルバオ、R・ソシエダが並んだ場合に最初に適用される規定は「当該チーム同士の対戦で勝ち点数で決める」だ。ビジャレアルとA・ビルバオは1勝1敗、ビジャレアルとR・ソシエダはビジャレアルの1勝1分、A・ビルバオとR・ソシエダはA・ビルバオの2勝だった。それぞれの勝ち点は、A・ビルバオが3勝1敗で9、ビジャレアルが2勝1分1敗で7、R・ソシエダが1分3敗で1。つまりA・ビルバオの5位、ビジャレアルの6位、R・ソシエダの7位が確定する。直接対決で圧倒的に部が悪いR・ソシエダは、2チームが並んだ場合でも直接対決の得失点差で劣り、ビジャレアルと並んでもA・ビルバオと並んでも下になる。よってエウセビオ・サクリスタン監督のチームがEL出場権を確実にしたいなら、勝ち点で上回る必要がある。

 では、ビジャレアルとA・ビルバオが勝ち点で並んだ場合はどうだろう?

 その場合は「当該2チーム同士の対戦の得失点差で決める」が適用され、直接対決のスコア(1ー0、3ー1)によりビジャレアルが+1、A・ビルバオが-1となってビジャレアルが上回ることになる。

 つまり、3チームが並んだ場合にはA・ビルバオがビジャレアルの上になるが、2チームが並んだ場合はビジャレアルがA・ビルバオの上になる、という“ねじれ”が生じるのだ。

いかがだろう?

 各チームは以上のようなシミュレーションをしつつクライマックスを戦っているわけだ。みなさんも正しくレギュレーションを理解して正しくハラハラ、ドキドキしてください。

《文=木村浩嗣》