アメリカに行っても、渋野日向子はやっぱりすごかった。何かやってくれそうな雰囲気を常に漂わせて、見ている者をワクワクさせてくれる。それが、大舞台となればなおさら。ふだん以上に輝きを増して、驚くようなプレーを連発し周囲を興奮させる。 今季メジ…

 アメリカに行っても、渋野日向子はやっぱりすごかった。何かやってくれそうな雰囲気を常に漂わせて、見ている者をワクワクさせてくれる。それが、大舞台となればなおさら。ふだん以上に輝きを増して、驚くようなプレーを連発し周囲を興奮させる。

 今季メジャー初戦のシェブロン選手権がそうだった。日本でもツアー本格参戦初年度に国内メジャーで初優勝を飾ったが、まるでそれを再現するかのように、米ツアーを主戦場とすることになった今季最初の大一番で随所に見せ場を作って躍動。通算10アンダー、4位タイという結果を残した。

「4日間(すべてで)いいゴルフはできなかったけど、そのうち3日間はいいスコアで上がることができた。(最終的に)上位にも食い込むことができた。昨年よりも成長できたのかな、と。それが、こうしてスコアや結果に表れると、がんばってきてよかったなと思う」



今季メジャー初戦のシェブロン選手権で4位と奮闘した渋野日向子

 ツアーメンバーとなって、初のアメリカ本土での試合となった先週のJTBCクラシックでは最終日に「80」の大叩き。72位タイという結果に終わって、渋野は「悔しい結果になって、すごく残念」と苦渋の表情を浮かべた。今季メジャー初戦に向けても「悪いイメージしかない。昨年は予選落ち。一昨年は予選を通ったけど、ぜんぜん手に負えなかった」と控えめなコメントを並べた。

 しかし、名門ミッションヒルズCC(カリフォルニア州)での開催が今年で最後という節目の一戦で、渋野はいきなり見せた。インスタートの18番で最初のバーディーを奪うと、後半2番パー5でイーグルを奪取。3アンダー、10位タイと好発進を決めた。

「(序盤は)とりあえずボギーは打たないように、と。出だしからいいバーディーチャンスをショートしてしまったし、(以降も)それをしがちではあったんですけど、だからといって、バチンと打たないようにしたいと思っていて。それで、なんとか耐えられた。

 そこは(一昨年、昨年からの)成長だと思います。3パットがないな、というゴルフをする回数が増えてきたので。また、ティーショットも飛んで、(セカンドで)昨年より短いクラブで打てていることを実感して、昨年とは変わったな、と。

 ドライバーもかなりフェアウェーキープが多かったので、セカンドでプレッシャーがかかる場面が少なかった。その分、しっかり攻めていけた。スイングもしっかり振れて、パー5で伸ばせた一日だった。パーオン率はちょっと低かったけど、自分のミスは少なくて、昨年よりもやべぇところに外すことが少なかった」

 2日目は一段とキレのあるプレーを披露した。7バーディー、1ボギーの「66」。通算9アンダーとして、単独トップに立った。圧巻のプレーぶりで、現地メディアのインタビューでも軽快なやりとりをしてみせた。

――今日はどんなプレーだった?

「1番と10番でお先の距離につけて、バーディーをとれてよかった。ウエッジがよかったです」

――3年前にここで初めてプレーした時はどう思った?

「ここでは戦えないと思いましたね(笑)」

――今はどう?

「その時よりは成長したなぁと思いますね」

――昔と今は違う人?

「ゴルフは変わったけど、人は変わっていない。今もお菓子を食べているし(笑)」

―ゴルフはどう変わった?

「大人になった!(笑)」

――このコースをどう攻略しているの?

「とりあえずティーショットは全力で、セカンドは頭を使って、ラフに入れたら腕力で(笑)」

――お菓子は何を食べているの?

「ささみチップス!」

――週末に向けて、何かしたいことはある?

「今までどおり練習して、ごはんを食べて寝たいです」

――何を食べるの?

「和食!」

 日本メディアでの囲み取材でも"シブコ節"が炸裂し、充実したラウンドをこなせていることが感じとれた。

「朝早くて、昨日の疲れも残っていたので、(練習では)昨日より飛んでいないなと思っていた。それでも、暖かくなってきたら、だんだん飛ぶようになって『ここでそんなに飛ぶ?』というところもあったりした。普通のライから8番アイアンで130ヤードくらいなのが、141ヤードも飛んだりして。やっぱり上位にいる分、アドってたんかな(笑)。

 昨年は予選落ちして、『ここでどうやってアンダーを出すんだ?』と思って回っていたけど、今年はこれだけ振れるようになって、マネジメントも馬鹿なりになんとかやって(笑)。パッティングもそれなりに上手、というか距離感を合わせられるようになって。

 そして、今日もいいアプローチが1個あった。ああいうのは、2年前、昨年にはできなかったこと。そうやって、ひとつずついろいろなことを覚えて、経験してきたからこそ、こうやってスコアが出たと思う。まあ、大人になった(笑)。以前より少し自信が芽生えたというのもあるので、明日、明後日も楽しんでやりたいと思うけど......、そんな余裕はない!」

 初日、2日目とは一転、3日目は大荒れのゴルフとなった。2バーディー、3ボギー、2ダブルボギーの「77」。5つスコアを落として、通算4アンダー、21位タイまで後退した。

「今日は(ショットが)特に曲がった一日。悔しい一日だった。パターも流れに乗れなくて、全体的にダメダメな......。練習の時から体がすごく動いていたんで、しっかり振りたいと思っていたのが、悪いほうに出てしまった。マン振りして、めちゃくちゃ左に曲げたり、右へミスしてしまったり。一個曲がると、やっぱり怖いっすね。なかなか(修正するのが)難しかった。

(優勝への欲?)欲というか、やっぱり上位に居続けたいという思いはあった。(順位の)一番上にいる時の厳しさは、何回味わっても無理だな、と。慣れないというか、(一昨年の)全米女子オープンの時もそうだったけど、ほんと......難しい」

 迎えた最終日、渋野は再び爆発した。2日目と同じく7バーディー、1ボギーの「66」。前日とは別人のようなゴルフを見せて、4位タイでフィニッシュした。

「(昨日のラウンドから)気持ちを切り替えるのには(時間が)かかりましたよ~。やけ食いしました(笑)。牛タンですぅ。何人前かわからんけど、20枚以上食べました。ごはんは大盛り!

 上との差がありすぎて、逆に結構集中してできたと思う。ショットはいいイメージじゃなかったのに、チャンスにつくことが多かった。しっかり同じ段に乗せることができたので、めちゃくちゃ曲がるラインのバーディーパットというのが少なかった。

 ティーショットも、昨日の悪いイメージがあったけど、なるべくトップまで丁寧に上げて、というのを意識してやった。あとは、しっかり振り抜くこと。ラウンド中、試行錯誤することはあったけど、(最後は)スイングについて自分でいろいろやってきたことを信じて、何とか耐えたかな、と。パッティングはまあ、置いておいて。ラフからのアプローチは確実に成長できているかなと感じられる4日間でした。

 何かしらやらかす日が一日はあるけど、シードをとるためには出ている試合で上位になることが大事。そのなかでも、メジャーでトップ10に入ることはすごくプラスになる。今季ひとつ目(のメジャー)で上位に食い込めたのは、すごくうれしい。ちょっとした安堵はある」

 アメリカに行っても、渋野の爆発力は健在。米ツアーで優勝を飾る日もそう遠くはないだろう。大舞台で強く、"ここぞ"というところで力を発揮できる渋野の場合、それがメジャーであっても何ら不思議ではない。