2022年のF1は、いまだかつてないほどに、面白い。 開幕戦バーレーンGPに続き、第2戦サウジアラビアGPもフェラーリ対レッドブル、シャルル・ルクレール対マックス・フェルスタッペンの激しい優勝争いとなった。 両者のラップタイムは拮抗し、周…

 2022年のF1は、いまだかつてないほどに、面白い。

 開幕戦バーレーンGPに続き、第2戦サウジアラビアGPもフェラーリ対レッドブル、シャルル・ルクレール対マックス・フェルスタッペンの激しい優勝争いとなった。

 両者のラップタイムは拮抗し、周回ごとにポジションを奪い合う激しいバトルが繰り広げられた。



限界ギリギリのブレーキングで勝負するフェラーリとレッドブル

「すごくタフだったけど、いいレースだったね。僕らはとてもハードなバトルを展開して、長い長い駆け引きだった。

 最終コーナーのDRS(※)に向けてチャールズ(シャルル・ルクレール)は頭脳戦を仕掛けてきて、彼らのディフェンスモードにもかなり強力なものを感じられた。こちらにトップスピードの優位があったものの、オーバーテイクするのはかなり難しかったよ」(フェルスタッペン)

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

 レース序盤をリードしたのは、予選で驚異的なアタックを決めたセルジオ・ペレスだった。高速S字でリスクを負って誰もが驚くような走りを見せ、フェルスタッペンより5km/hも速い速度で駆け抜けた。

 しかし、2位ルクレールのアンダーカットを阻止すべく、先にピットインしてルクレールの前を確保しようとしたところで、ニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)がクラッシュしてセーフティカー導入となってしまった。これでライバルたちはスロー走行中にピットインを済ませ、ペレスは4位まで後退して優勝争いから脱落してしまった。

「チェコ(ペレスの愛称)にとって、本当に可哀想なくらいガッカリなレースだった。予選であれだけすばらしいアタックラップを決めてポールポジションを獲得し、リードを守ってレースをコントロールしていたんだからね。

 我々はレース前に話し合って、決めていた周回に彼をピットインさせたんだ。そうしたら、その直後にセーフティカーが出てしまった。自分たちにとって有利になることもあれば不利になることもあるのがセーフティカーだから仕方がないが、彼にとっては非常に不運だったよ」(クリスチャン・ホーナー代表)

残り10周のスプリントレース

 代わってルクレールがトップに立ち、レース中盤を支配した。

 フェルスタッペンは無理な追い上げはせず、タイヤを温存しておいてレース終盤に猛攻を仕掛ける戦略を選んだ。もちろん、フェラーリ陣営もそれを察知して同じようにタイヤをいたわり、フェルスタッペンをわずかにDRS圏内に入らせない程度のギャップを維持して周回を重ねた。

「今週末のマックスとレッドブルは、ストレート速度に強みを持っていた。DRSを使われたら簡単に抜かれることはわかっていたから、メインストレートで彼のDRS圏内に入らせないように走っていたんだ。

 ハードタイヤでもフィーリングは常によかったし、マックスを後ろに抑えてある程度のマージンを持って走ることもできていた。でも、VSC(バーチャルセーフティカー)が入ったことで彼はあっという間にDRS圏内に追い着いてきて、そこから一気にトリッキーな展開になってしまった」

 37周目にダニエル・リカルド(マクラーレン)とフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)が相次いでコース上にストップし、VSCが出されて全車スロー走行となった。マシン回収が終わり、レースは41周目に再開。残り10周のスプリントレースとなった。

 ここでフェルスタッペンが猛スパートを掛け、セクター2、セクター3と最速タイムを刻んで、一気にルクレールとのギャップを1秒以内に縮めてみせた。つまり、ルクレールが恐れたDRSが使える圏内だ。

「タイヤがどうなるかはクエスチョンマークではあったけど、VSCの間に少しクールダウンできたとはいえ、リスタートからの数周ですごくいい走りができたんだ。マシンのフィーリングがよくて、高速コーナーでもタイヤがしっかりと持ちこたえてくれた」

 そして、42周目の最終コーナー。フェルスタッペンはルクレールに追い着いてインに飛び込み、首位に躍り出た。

 いや、正確に言えば、首位に出された。

 ルクレールは早めにブレーキを踏み、ターン27入り口にあるDRS検知ポイントをフェルスタッペンの背後で通過して、次のメインストレートでのDRS使用権を確保したのだ。そしてDRSを使い、悠々とフェルスタッペンを抜き返して首位を取り戻した。まさに1週間前のバーレーンGPと同じ駆け引きだった。

最終コーナーの絶妙な駆け引き

「最初に攻めてこられた時(41周目)には、絶対にメインストレートで自分がDRSを使えるようにしたかった。そのため、ターン27でかなり早めにブレーキングをして、DRSをゲットしてメインストレートで抜き返すことに成功した。でも2回目(42周目)は、マックスも僕がそうするだろうということがわかっていたから、ふたりともがかなり早くブレーキを踏むことになってしまったんだ」

 バーレーンでは3度にわたって抜ききれなかったフェルスタッペンだったが、今回は違った。2回目のトライでは自身もブレーキを踏んでルクレールを先に行かせ、DRSを確保した。しかし、それを見たルクレールは逆に再加速をしてギャップを広げたため、次のメインストレートでも防ぎきった。



開幕戦のリベンジを果たしたフェルスタッペン

 しかし46周目、3回目のトライでフェルスタッペンはDRSを確保しながらルクレールと並んで最終コーナーを抜け、メインストレートでついにオーバーテイクに成功した。

 ルクレールはあきらめることなくフェルスタッペンを追走し、DRSを確保して逆襲を仕掛けてくる。48周目には0.5秒差で最終コーナーを立ち上がり、いよいよフェルスタッペンを捕らえ返すかと思われた。その瞬間、ターン1で接触事故が起きて黄旗が振られ、DRSが使用不可になってしまった。

 これで、ルクレールは万事休す。フェルスタッペンは残り2周をしのぎきって、0.549秒差で今季初優勝を掴み獲った。

 レース後、ふたりはお互いの健闘を讃え合った。

「僕らは今までにやったとことがないくらいハードにプッシュした。市街地サーキットでリスクも負って、本当の限界ギリギリまで攻めたんだ。だからこそ、こんなレースを終えたあとにはお互いにリスペクトの気持ちを持つものだよ」(ルクレール)

 開幕戦は速さでも負け、戦略でも負け、そして信頼性でも負けた。しかし、第2戦サウジアラビアGPでフェルスタッペンは、そこから見事に立ち直ってみせた。

メルセデスAMGの反撃は?

「残り4周で首位に立ってからもチャールズは常にDRS圏内にいたし、最後まで本当にタフなレースだった。簡単なバトルではなかったけど、すごく楽しかった。やっと僕らもシーズンのスタートを切ることができて、とてもうれしいよ」

 ようやくレッドブルのシーズンが始まった。

 フェラーリとの激しいトップ争いは、これからも続いていくだろう。コーナーで優位に立つフェラーリの速さは、ジェッダのような特殊なサーキットよりも、あらゆるグランプリサーキットで脅威だ。

 そしてもちろん、メルセデスAMGもいずれはバウンシングの問題を解決してマシン本来のポテンシャルを引き出し、トップ争いに加わってくるだろう。これから先の勢力図がどうなるか、それはまったくの未知数だ。

 しかし、これだけはハッキリしている。2022年のF1は、面白い。