カナダ・プリンスジョージで行なわれたカーリング女子世界選手権(出場13カ国)は、スイスが全勝優勝。大会3連覇を遂げて幕を閉じた。 日本代表の中部電力は、チーム内で新型コロナウイルスの感染者が出るなどして大会を途中棄権。最終的には7位という…

 カナダ・プリンスジョージで行なわれたカーリング女子世界選手権(出場13カ国)は、スイスが全勝優勝。大会3連覇を遂げて幕を閉じた。

 日本代表の中部電力は、チーム内で新型コロナウイルスの感染者が出るなどして大会を途中棄権。最終的には7位という成績に終わった。



世界選手権に挑んだ中部電力。左から北澤育恵、中嶋星奈、鈴木みのり、石郷岡葉純、松村千秋。photo by (c)JCA

 それでも、北澤育恵をスキップに固定した中部電力は、フィフスの松村千秋をセカンドとサードで出場させるローテーションを組んで、複数パターンのメンバー構成で世界の強豪に挑み、トータル6勝(うち不戦勝が1)を挙げた。最後まで4人で戦うことができなかったものの、世界と対等以上に戦えるポテンシャルを存分に示した。

 大会後、JCA(日本カーリング協会)を通じてコメントを発表した選手たちも、一定の手応えを得たようだった。北澤が「平常心でプレーできれば、自分たちのカーリングが世界で通用することを再確認しました」と言えば、リードとセカンドを担った鈴木みのりも「初めての世界選手権でしたが、落ちついてプレーすることができました」と語った。

 そういう意味では、舞台経験を含めて収穫が多かったのは確かだが、単純な投げミスも出てしまい、ジャッジやコールにおける齟齬(そご)も散見された。国内ではつけ込まれないギャップを突かれて、難しい局面を迎えてしまうことも、一度や二度ではなかった。アイスリーディング(氷の読み)においても、変化があってから対応することが多く、変化の予兆を感じて早めにチーム内で共有することが今後の課題に挙げられる。

 加えて、試合前に先攻か後攻かを決めるために実施するラストストーンドロー(LSD)の改善も必要だろう。今大会で中部電力は全体の11位。棄権した最後の韓国戦は最大値を充てられてしまったが、それでも下位であることに変わりはないだろう。

 もちろん、相手もアイスも試合ごとに違うため、今回だけ悪かったという見方もできるが、昨年の日本選手権でも出場7チーム中5位という成績だった。中部電力にとって、大きな改善点であることは明らかだ。

 どんな大会であろうとも、LSDの重要度は変わらない。有利とされる後攻をしっかりと得てゲームのイニシアチブを握ることが、いかにポジティブなことか。LSDの強化はチームとして真摯に向き合うべきだろう。

 中部電力としては今後、これら露呈した課題をこれからどう修正していくかがポイントになるが、解決策のひとつとして、早期のポジションの固定が挙げられる。

 松村、鈴木、中嶋星奈はこれまでのキャリアで、リード、セカンド、サード、スキップあるいはフォースとすべてのポジションを経験してきたポリバレントなタレントだ。今大会でもそうだったが、3人とも器用ゆえ、与えられたポジションで最低限の仕事をこなすことができる。

 無論、国内で上位争いを演じて、世界でも中位レベルでそこそこ戦えればいい、というのであれば、そのままでいい。

 だが、さらに上、世界でも上位を狙っていくのであれば、それぞれの役割を明確にさせて、各選手が定まったポジションにおいて、最低限のレベルではなく、最大の力を発揮することが不可欠ではないか。そのためにも、各ポジションでのストロングポイントに特化して強化を進めていくべきだろう。

 世界選手権を振り返れば、4人でプレーすることができた最後の試合、ノルウェー戦の第10エンドでは、リードの石郷岡葉純が相手のガードをウィック(相手の石をアウトにならないように動かすこと)でいなしつつ、カマー(相手の石の後ろに隠れるショット)で強い石を作った。その後、鈴木、松村が完璧なクリアニングで北澤につないで、北澤がきっちりと仕留めて4点を奪うビッグエンドをモノにして勝利した。

 相手のミスもあったとはいえ、あのようなエンドを構成できるポテンシャルを秘めているのが中部電力である。結果が出るまでに時間がかかるかもしれないが、さらなる上を目指して"リスタート"を図る価値があるチームだ。

 中部電力は大会を棄権したあと、現地保険当局の指示を受けながら、PCR検査の結果を待ってそれぞれ帰国の途につく予定。そして帰国後、松村は4月23日からスイス・ジュネーブで開幕する世界ミックスダブルス選手権へ向けての最終調整に入る。

 また、5月下旬には今季最終戦となる日本選手権が北海道北見市常呂町で開催される。来季以降の松村のスケジュールにもよるが、チームは今季の戦いや今後の各選手の意向を踏まえたうえで、長・中期的な視野に立ってメンバーを構成し、日本選手権に臨むことになるだろう。

 はたして、選手、チームはどんな決断を下して大会に挑むのか、注目される。