2022年の開幕戦は、フェラーリの圧勝だった。 シャルル・ルクレールとマックス・フェルスタッペンが好バトルを繰り広げたように見えたが、純粋なペースでも、タイヤマネージメントでも、ルクレールのほうが一枚も二枚も上手だった。圧倒的な速さで開幕…

 2022年の開幕戦は、フェラーリの圧勝だった。

 シャルル・ルクレールとマックス・フェルスタッペンが好バトルを繰り広げたように見えたが、純粋なペースでも、タイヤマネージメントでも、ルクレールのほうが一枚も二枚も上手だった。



圧倒的な速さで開幕戦を制したフェラーリのルクレール

 レース中盤まではフェルスタッペンの動きに合わせてピットインし、同じタイヤを選ぶ安全策のレース戦略で首位をキープ。そして最後に3ストップ作戦を仕掛けたフェルスタッペンに対し、ルクレールには2ストップ作戦で十分に逃げきれるだけのマージンがあった。セーフティカー後の圧倒的な速さを見れば、それまで本来の実力を披露していなかったことも明らかだった。

 17周目から3周にわたる激しい抜きつ抜かれつのバトルも、ルクレールはフェルスタッペンにインに飛び込ませ、自分はレコードライン上で早めにブレーキングをしてフェルスタッペンをわずか数メートルだけ前に行かせ、次のDRS(※)を獲得してターン4までに余裕を持って抜き返した。2度目はフェルスタッペンもターン4でレコードラインを死守しようとしたが、インから前に出たルクレールと並んでターン4に飛び込んで行くほどリスクは取らなかった。

※DRS=Drag Reduction Systemの略。追い抜きをしやすくなるドラッグ削減システム/ダウンフォース抑制システム。

「ワンツーフィニッシュができるなんて、本当に最高のシーズン開幕だ。できるかぎりクレバーに戦おうとした。ターン1では早めにブレーキングをして(ターン1の50メートル手前にある検知ポイントを)彼のすぐ後ろでDRSを取り、首位を取り戻したんだ。それが3回もうまくいったね」(ルクレール)

 一方のレッドブルは、予選Q2で最速タイムを刻んだものの、Q3ではタイヤをうまく使いこなせずに僅差の2位。そして決勝ではタイヤマネージメントで後れを取り、戦略ではどうすることもできないくらい差をつけられた。

レースを支配したフェラーリ

 結果、レッドブルはブレーキの過熱と、ピットストップ時のジャッキダウンによるトラックロッド湾曲で、ステアリングが不安定になる。それらトラブルを抱えた末、最後は2台ともに燃料システムのトラブルで、まさかのリタイアという衝撃的な結末となってしまった。

「とにかくポイントを取ることが重要なのだから、この結果にはガッカリだよ。スタート直後のターン1でのシャルル(・ルクレール)とのバトルでも、僕はそれほどリスクを取らず、何事もなくクリーンに走るように心がけていた。ここで(勝てなくても)2位になれれば、満足できる結果だったから。

 でも、こうしてチームとして多くのポイントを失ってしまった。シーズン終盤にタイトな争いになるかも知れないことを考えると、今回取れるはずだった2位と4位はとても重要なポイントだったんだからね」(フェルスタッペン)

 マシンにトップ争いをする速さがあったことはポジティブな要素だとしながらも、フェラーリの速さはレッドブルとフェルスタッペンにとってショッキングなものだったはずだ。前述のとおりギャップは僅差でも、内容に目を向ければフェラーリは余裕を持ってレースを支配していたからだ。

 最終的にエンジンに燃料が供給されず止まってしまったが、今季から導入されたE10燃料と燃料ポンプのマッチング不足に問題があったようで、その点は第2戦サウジアラビアGPまでの数日間で究明し対策を施したという。レッドブルは水曜夜の作業禁止規定時間を超えて作業を行ない、マシンの準備を整えている(今季1回目の例外適用であり、ペナルティはなし)。

 開幕戦のバーレーンでは、フェラーリ製パワーユニットのパワフルさが際だった。ただ、これがやや攻めたセッティングを選んだためなのか、それとも常用レベルでアドバンテージがあるのか。

 レッドブルが軽いリアウイングを装着し、最高速重視のセットアップを採った。そのために中高速コーナーで後れを取り、タイヤマネージメントでも負けたのか。

巧みな戦略合戦を制するのは?

 今週末はバルセロナ(開幕前テスト)ともバーレーン(第1戦)ともまったく特性の異なるジェッダ・コーニッシュ・サーキット(第2戦)で、再びその真価が問われることになる。

「長いストレートが多くて、とても高速なサーキットだ。去年は湿度が高くて厳しかったけど、今年は少しセクター1の視界を向上させるための改良も加えられたというし、どうなっているか興味深いね。今年はクルマが少し重たくなっているけど、どんなパフォーマンスを見せてくれるのか楽しみだ」(フェルスタッペン)

 ただし、フェラーリも余裕を持ってジェッダに臨むわけではない。

 開幕前テストから問題となってきたポーパシング(車体のバウンシング現象)は、「史上最速の市街地サーキット」と呼ばれるジェッダでは出やすくなると見られているからだ。

 ジェッダは実質的なストレートが多く、平均速度が250km/hを超えようかというレイアウトで、バウンシングが起きやすい速度域で走る時間が長い。それに加えて、市街地サーキットゆえに脚回りを硬くしづらいとなると、思いも寄らぬセットアップの妥協を強いられる可能性もあるからだ。

「バーレーンでは真っ直ぐなブレーキングばかりだからそれほど問題はなかったけど、今後もポーパシングが問題になるサーキットはあるだろうし、ジェッダでは僕が昨年クラッシュしたターン21など、かなりトリッキーな箇所もありそうだ。今後も改善努力が必要だろう。でも、バルセロナのテストから比べれば格段に改善されていることも事実だよ」(ルクレール)

 メルセデスAMGは現在のマシンが抱えている問題を今すぐに解決することは難しいと見られ、サウジアラビアGPも「レッドブル対フェラーリ」の2強対決になるだろう。

 バーレーンGPの展開を見るかぎり、両チームともそれぞれ2台のマシンを巧みに使って、2対2の戦略バトルを繰り広げていた。フェラーリはカルロス・サインツをピットインさせることで背後のセルジオ・ペレスもピットに呼び込み、ルクレールの壁になることを防いだ。逆にレッドブルもペレスをフェルスタッペンと同時にピットインさせることで、サインツをフェルスタッペンの壁にさせないよう動いていた。

 こうした白熱のバトルと戦略合戦は、サウジアラビアでも見ることができるはずだ。

角田裕毅に課せられた使命

 バーレーンでは思うように走り込めずマシンの速さ不足が露呈したアルファタウリの角田裕毅も、今週末は決してラクな戦いになるとは予想していない。そのなかで自分たちにできることをやりきることが、今の角田に課せられた使命ということになる。2年目の角田は、そのことをよく理解している。

「新しいタイプのサーキットで、僕は特にセクター1が好きです。しかしマシンパフォーマンス的には、今週もまた厳しい戦いになると思います。

 まずは、マシンの開発をできるだけ進められるようチームを助けることと、コンスタントに中団上位を走ることです。今のところ、今シーズンの目標であったそれを達成できるレベルにはありません。今週末はさらにマシンへの理解を深めて、もう一歩前に進められればと思います」

 まだ真の勢力図が見えたわけではない。まったく特性の異なるサーキットが続くシーズン序盤戦は、まだまだ各チームともに手探りの状態で、週末ごとに目まぐるしく勢力図が移り変わっていくはずだ。