木村和久の「新・お気楽ゴルフ」連載◆第12回 先日、散歩がてらに国立競技場界隈を歩いていたら、明治神宮外苑のゴルフ練習場が再開していることを知りました。東京オリンピック開催の関係で、しばらく休業していたんですよね。 それで早速、覗いてみまし…

木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第12回

 先日、散歩がてらに国立競技場界隈を歩いていたら、明治神宮外苑のゴルフ練習場が再開していることを知りました。東京オリンピック開催の関係で、しばらく休業していたんですよね。

 それで早速、覗いてみました。その日は土曜日で西練習場の4階建て部分(グランド、1~2階。※3階はスクール使用)の打席は8割方埋まっていて、低い階の打席はウェイティングがかかっていました。100打席近くあるのにこれほどの人気って、やはりゴルフブーム再然なのでしょう。

 グルッと打席を見渡してみると、やたら若い人が多いのには驚きました。カップルもいれば、何人かのグループで来ている人たちも。加えて、ショップが新しくなって、お洒落ブティック化しているし......。なんか30年前のゴルフバブルを彷彿とさせられます。

 今から30数年前、私の事務所が千駄ヶ谷にあって、神宮外苑は庭みたいな存在でした。ゴルフ練習場も歩いていけるので、時々仕事の合間にも練習に行っていました。

 昨年の11月まで東京オリンピックの資材置き場などとして使われ、一時休業していた神宮外苑のゴルフ練習場。当初、同施設は神宮外苑再開発計画に組み込まれていて、将来的にはなくなる予定でした。

 ところが、神宮外苑再開発計画は、1000本弱の樹木を伐採するということで、各方面から反対意見が続出し、現在再検討中になっています。都の審議会は計画案を賛成多数で承認しましたが、今後どうなるかはまだわかりません。

 ただ、再開発計画がそのまま進めば、基本プランでは神宮球場はリニューアルされますが、ゴルフ練習場として利用されている第二球場はなくなる方向となっています。

 神宮外苑ゴルフ練習場は常設の東練習場もありますが、第二球場の空き時間を使った西練習場が人気です。本物の球場にボールを打ち込む爽快感がたまりませんからね。

 その第二球場は主に大学野球の会場としてメインに使われていて、その空き時間に、ゴルフ練習場として利用されています。日によって違いますが、例えば午後4時半から西練習場の開放となると、4時頃にはまだ野球をやっていて、最終回の攻防中となれば、応援団のものすごい歓声が聞こえたりします。

 その声援が最高潮に達すると、試合が終了。球場からどっと観客があふれ出てきます。その後、グラウンドの整備をして西練習場として再開されます。

 ゴルフボールって、野球のボールの倍ぐらい飛ぶので、アイアンでもフェンス越えのホームランを連発。それが、すごく気持ちいいです。

 都会に唯一残った大型ゴルフ練習場。消えてなくなる可能性もあるので、今のうちに訪ねておくのはありだと思いますよ。



マンモスのように...というわけではありませんが、都心の大型ゴルフ練習場は今や絶滅の危機。なくなる前に神宮外苑のゴルフ練習場に足を運んでみてはいかがでしょう。illustration by Hattori Motonobu

 そうそう、神宮外苑ゴルフ練習場の裏技的な使い方として、年間の貸しロッカーを利用する方法があります。年間2万円ほどで、今年の分はまだ空きがあるそうです。高級コースの平日1回ラウンド分と考えれば、お安いと思います。

 具体的にはどう活用するかですが、すでにある余分なクラブをキャディバッグに詰め込んで、ロッカーにぶち込みましょう。つまり、レンタル倉庫と思えばいいのです。

 そうすれば、いつでも手ぶらで神宮外苑を散策し練習場へ。夜は22時まで営業していますから、仕事帰りに立ち寄ってバカスカ打つのもいいでしょう。これが非常に気持ちいいですから、その日の鬱憤晴らしやストレス解消には最適なんじゃないですか。

 ゴルフの練習は自宅近くにある格安のところでやればいい、と思われる方も多いでしょう。けど、神宮外苑の練習場は別格な存在です。他とは違う雰囲気があって、なんとなくやる気が沸いてきます。例えて言うなら、地元の川沿いや公園ではなく、皇居でランニングをする感じでしょうか。

 みなさんが皇居を一周するランニングをどう捉えているかわかりませんが、実は皇居周辺で働いている人の利用は意外と少ないのです。以前、『皇居を走ろう』みたいな集まりに参加したことがあるのですが、参加者の多くが埼玉県あたりから遠征してきていました。

 要するに、皇居ランはランニングの晴れ舞台なようなもの。ですから、ゴルフ練習の晴れ舞台として、神宮外苑の練習場を利用するのもありなのではないかと。

 しかも、ロッカーを借りていれば、シューズやウエアやグローブなどもロッカーの中。思い立ったらすぐに手ぶらで行けますから、表参道あたりに住んでいるみたいで気分もいいんじゃないですか。

 さすれば、週末などには"打ちぱーデート"が容易にできるってこと。ふらりと訪ねて、「打ちっぱなし、やってみる?」なんて言えば、連れてきた彼女も大喜びです。

 その昔、私もブイブイやっていた頃、中古ショップで購入したレディースの7番アイアンを車のトランクに入れていました。不測の事態に備えて用意していたのです。突然「練習場に行こう」と、連れのお姉さんがのたまうケースもあったりするもので......。

 それを思えば、神宮外苑練習場のロッカーにレディースの7番アイアンを入れておくのも手です。練習場で待ち合わせて、軽くボールを打ったあと、青山界隈で食事をして帰るといったデートも成立するんじゃないですか。

 とまあ、神宮外苑のゴルフ練習場に頼まれたわけでもないのに、いろいろとその活用法などを記させていただきました。これもひとつの"妄想ゴルフ"ってやつです。

 思えば、都心にあった大型のゴルフ練習場は、バブル崩壊後、続々と姿を消していきました。有明、芝のプリンス、それ以前には赤坂のTBS、日本テレビの北新宿といった練習場もあったんですけどね。

 ゴルフ練習場は地価高騰ゆえ、採算的に都心で運営するのは厳しい状況です。広い土地を使うわりには、売上の限界がありますから。

 そうしたなか、秋葉原の『ヨドバシカメラマルチメディアAkiba』の屋上には、まあまあなゴルフ練習場があるんですよ。ゴルフ練習場なら「巨大ビルの屋上で十分じゃん」といった考えですね。

 何はともあれ、神宮外苑のゴルフ練習場は経営が宗教法人ですから、取り壊しはないと思っていました。お寺が幼稚園を経営するようなものですし。

 宗教法人がスポーツや教育事業を運営する場合、法外な利用料はとらないことになっています。だから、神宮外苑のゴルフ練習場は、都心の一等地というロケーションにありながら、お値頃な料金設定になっています。それだけに、非常に助かると思っていたのですが、再開発プロジェクトが持ち上がってしまった。このままなくなってしまうのは、少し惜しい気がします。

 そんなわけで、神宮外苑にふらりと行ったその日から、なぜかゴルフ練習に熱が入り始めました。今では、いろいろな練習場で打ちまくっています。

 やはり神宮外苑は、神がかったことが起きるパワースポットなんでしょうか。

 ノーベル賞候補でもある作家の村上春樹氏は昔、千駄ヶ谷でカフェ&ジャズバーを経営していました。暇な時間は野球観戦をしていたそうです。そして1978年4月1日、ヤクルトスワローズの試合を見ていた時、唐突に「そうだ、小説を書いてみよう」と思い立ったとか。その後、そのまま大作家になったのですから、たまげたものです。

 どうです? 神宮外苑という場所には何か"力"があるのでしょうか。妙にやる気が出る場所です。あなたも行けば、神様から何かしらの啓示を受けるかもしれませんよ。