D.LEAGUE(Dリーグ)セカンドシーズンは去る21日、ラウンド9を終えた。チャンピオンシップ出場チーム決定まで残すところ3ラウンド、まさにデッドヒートの様相を呈してきた。今ラウンドは、ジャッジポイ…
D.LEAGUE(Dリーグ)セカンドシーズンは去る21日、ラウンド9を終えた。チャンピオンシップ出場チーム決定まで残すところ3ラウンド、まさにデッドヒートの様相を呈してきた。
今ラウンドは、ジャッジポイント70点以上が3チームのみという点数的には厳しいものになったが、レギュラージャッジのテリー伊藤氏からは「今までで一番楽しく見応えがあった」というコメントが飛び出した。事実、テリー氏は、エンターテイナージャッジの指標である、「エナジー、クリエイション、表現力、スタイル、完成度」の5項目全てが満点で最高点となる10点満点を4チームに与えている。
点数については、毎回、レギュラージャッジ以外にゲストジャッジが数人参加するため、時に、評価基準が定まらぬまま、他のジャッジの点数に比べて全体として低めの点をつけるゲストもいる。その影響を受け全体的に低得点となるラウンドもあり、今回もゲストジャッジのキンタロー。は辛めの点付けが多かったがゆえ、厳しめの結果になったという事実があった。
だが、そんな中でも、今ラウンドで優勝したSEGA SAMMY LUXはチーム獲得点で過去最高のジャッジポイント75.5点を叩き出し、また、オーディエンスジャッジでも最高の20点を獲得して圧巻の優勝を飾り3連覇を達成。なおかつ、総合ランキングでも前ラウンドまで玉座に君臨していたFULLCAST RAISERZから首位を奪還し、ますます安定した強さを見せつけるかたちとなった。
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■鍛錬に裏打ちれたストイックな美しさ
今ラウンドのLUXのテーマは「カンフー×LUX」。実は2020―21シーズンでも、LUXは一度、カンフーをテーマにしたナンバーで踊っている。だが、その時は思ったような点数が取れなかったこともあり、今回はそのリベンジのためのナンバーだという。そういえば、様々なカンフー映画のなかでも、“リベンジもの”は数多く、鉄板のテーマでもある。そんな背景も手伝ってか、気合満点のオープニングから観客の心を一気に掴んだLUXの演技は、まさに息をのみ目にも止まらぬ展開で、演技時間の2分15秒が、闘技シーンたっぷりのカンフー映画を一本見たかのような見応えに溢れていた。
カンフーの達人の動きは、時に「舞うがごとく」と形容されるような美しいものが多々あるが、一流の武道家と一流のダンサーには、やはり通底しているものがあるという真実が今回のLUXの“舞い”にもはっきりと表れていた。ダンサーにとって、インナーマッスルを鍛えて出来る限り無駄を削ぎ落したシャープな動きを追及することは必須の行為であり、また、身体の軸を細く強くした上でスピンを回ることも、クラシックバレエからヒップホップまで、全ダンサーが意識し磨き上げなくてはならない“道”のようなものである。
そして、この二種の身体の鍛錬は武道の上でも同様だろう。だから、プロダンサーである彼らが、目の覚めるような見事な回し蹴りを繰り出しても、考えてみれば納得のいく話ではあるが、ダンスの舞台で、音楽に乗ったその鋭く美しい回転と蹴りを舞として見たときに、カンフーを見ているときとはまた別の感銘が胸に広がった。一級のダンサーが本気でカンフーを舞うと、こんなにもストレートに美しく、武道家と同様のストイックな恰好良さが立ち現れるのだという証明の場面に立ち会えた瞬間でもあった。この感動を多くの人々がここで共有できたからこそ、LUXは見事、ジャッジとオーディエンスポイントで共に最高点を獲得し、文句無しの完全勝利を飾ったのだろう。
■鍛錬を重ね、進化し続けるDリーガー達
他にも、2位となったKOSE 8ROCKSはいつも通り、見る者をワクワクさせる熱量と技に溢れ、今回は「スペーストラベル」をテーマに、“重力を感じさせない踊り”を見せてくれた。2024年パリオリンピックで正式種目となるブレイキンの台風の目は、8ROCKSから生まれるかもしれないという予感をもたらす彼らのパワーはますます増すばかりだ。
また、毎回とびきりダンサブルで、元気が溢れ出てくるようなナンバーを届けてくれるavex ROYALBRATSは「みんなのヒーロー」をテーマとし、全員がバラバラの衣装ながら、違う個性が一つになって踊る愉しさが際立ち3位となった。
ラウンド終了後、ゲスト・エンターテイナージャッジを務めたTAKAHIRO氏は、「全チーム、本番前の登場の時間の使い方が上手くなり、確実に進化している。これからは、テーマとダンスをいかに深く融合していくかが課題となるだろう」と言及していた。また、優勝インタビューの場でLUXのリーダーであるCanDooは、「モチベーションを保って突き進みながら、毎回、超えるべき線というのが10個くらいあって、それをひとつひとつ超えたと思えるところまで踊りこんでゆくんですが、その線が見えるようになってきている」と語っている。
鍛錬を重ね続けるDリーガーの進化は止まることはないのだろう。セカンドシーズンのチャンピオンシップ進出決定まで、残すところ3ラウンド。さらに研ぎ澄まされてゆく彼らの美しき闘いに釘付けだ。
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著者プロフィール
Naomi Ogawa Ross●クリエイティブ・ディレクター、ライター
『CREA Traveller』『週刊文春』のファッション&ライフスタイル・ディレクター、『文學界』の文藝編集者など、長年多岐に亘る雑誌メディア業に従事。宮古島ハイビスカス産業や再生可能エネルギー業界のクリエイティブ・ディレクターとしても活躍中。齢3歳で、松竹で歌舞伎プロデューサーをしていた亡父の導きのもと尾上流家元に日舞を習い始めた時からサルサに嵌る現在まで、心の本業はダンサー。